2008年01月21日

当たり前のことほど

相手の気持ちになるというのは、口で言うのは簡単でも、実際にするのは難しいですね。

それはコミュニケーションということでも言えると思いますが、
単純に立場が変わるという話で考えると仕事でも重要なことだと思うんです。

カウンセラーやセラピストの多くは、自分自身が苦しんだ経験を持っているようですが、
だからクライアントの気持ちが分かるというわけでもないと思います。
ただ、クライアントの立場を知っているという部分はあるはずです。

とはいえ、自分自身の悩みを克服するという経験が一番大事かと聞かれると
それもまた、ある一部分のような気もします。


例えばラーメン屋になる人のことを考えると、こんな感じです。

最初はラーメンが好きだという状態でしょう。
それで食べ歩きをする。
色々な店で自分好みのラーメンを味わって、ああだこうだと評論する。

で、自分の満足するラーメンに出会って、そこに弟子入りしたり、
あるいは自分の満足するラーメンに出会えず独学で試行錯誤したりして、
自分の作りたいラーメンを作り始める。

もちろん、経営という意味では他にも考えるべきところがあるでしょうが、
単純にラーメンをどうやって作り上げていくかという視点では、そんな流れでしょう。

ここで重要なのが、ラーメン屋をいつ目指したかということです。

ラーメン好きの視点でラーメンの食べ歩きをしていたときと
ラーメン屋になろうと思ってラーメン屋に行くときでは
随分と違いがあるだろうということです。

もちろん、ラーメン屋になってから他の店に行くこともあるでしょう。
それを偵察と言えばそうかもしれませんが、大切な部分もあると思います。

それは「客の立場を知る」ということです。

完全に偵察目的で行ったのでは客になれないかもしれませんが
ラーメン屋として、お客様の立場を忘れないという目的の場合もあるでしょうね。


つまり、お客様であったり、クライアントであったり、
そういった職業上で関わっていく相手の立場を意識するのが大事だろうということです。

カウンセラーやセラピストであるならば、自分自身が苦しみを乗り越えた経験によって
共感性をもってクライアントに接するということも大事でしょうが、
一方でクライアントの気持ちを考えられることも大切だと思うんです。

まぁ、お医者さんが患者の立場を体験することは多くないのかもしれませんが・・・。


顧客満足と言ってしまえば、それまでです。
でも顧客の立場になってみないで顧客満足が考えられるだろうか、とも思うわけです。


ただ、僕が勘違いしないように心がけていることもあります。

それは自分が感じるクライアントや顧客の立場は自分だけのものだということです。

自分が何かの悩みを克服したとします。
でも、その悩みも、克服の仕方も、自分だけのものなんです。

自分がウツを克服したから、ウツの人の気持ちが分かるなんてことはないんです。
ウツの状態の感じは近いものとして分かるかもしれません。
でも自分以外のウツの気持ちは分かるはずがないんです。
周囲の状況も人生経験も全てが違うからです。

僕は理系でずっとやってきて、仕事として研究をやっていました。
だから理系の学生にありがちなことや、研究職にありがちなことは知っています。
でも、それはあくまでも理系一般や研究職一般の情報です。

理系とは言っても、学校によっても、分野によっても全然違うでしょう。
研究だって色々あります。

状況は全て違うんです。
その中で培ってきたものから活かせるものを考えるのと
自分の経験を当てはめるのは全く別物です。

そして自分が培ってきたものを活かすという視点で見れば、
過去の全ての経験は活用できる可能性があるという意味において同等なはずです。

ウツを経験したことがなくたって、ウツの人を力づけることはできるわけです。
離婚を経験したことがなくたって、夫婦面談はできるわけです。

離婚暦が20回の人がする夫婦面談と、
結婚生活30年、夫婦円満の人がする夫婦面談と、
どちらがいいでしょうか?

僕はどちらも大差ないと思います。
問題はそこではない。
いかに相手の立場に近づくことができるか、ではないかと思います。

自分にも同じような経験があるといって自分の経験を押し付けたところで
そんなことには意味がないと思うんです。


自分自身がクライアントや顧客の立場を体験しておく意味の中には
自分と相手が違うということを別の視点で感じることもあるんじゃないでしょうか。

自分自身が100%満足させてもらえることはないでしょう。
きっと少なからず不満はあるでしょう。

僕がセミナーに出ても、セラピーを受けてもそうです。
不満を探せば見つかります。
ラーメンだって100%満足できるものには出会えていません。

それは当然なんです。
自分と相手は違うんですから。

自分が満足できた部分と不満だった部分。
そこに自分自身の価値観があるはずです。

そこが仕事上で大切にしたいことなんでしょうね。


そしてクライアントや顧客の立場を体験するとき、難しいこともあります。

それは当たり前のことを新鮮に感じるということです。
初めての体験でなら当たり前に感じられることを、改めて感じる。
これは難しいと思います。

慣れるほど「そんなもんだ」と思ってしまうことは沢山あると思います。
それは多くの経験を積むほど起きやすいのかもしれません。

一人のクライアントやお客様は、大勢いる全体の中の一人なのでしょう。
でもクライアントなり、お客様なりの立場からしたら、
それは他の誰でも関係ない、たった一人の自分自身なんです。


ラーメンを食べに行く人は、美味しいラーメンを食べたいと思っているわけです。
だからラーメン屋は美味しいラーメンを作る努力をするのでしょう。
行列に並んででも美味しいラーメンを食べたいと思って店に来るわけです。

 一番の目的は美味しいラーメンを食べること。
 だから店側は美味しいラーメンを作るのが仕事。
 接客は美味しいラーメンをより美味しく感じてもらうための心遣い。

でも肝心なことが抜けています。

初めて店に来るお客様は、美味しいことを期待してやってきています。
美味しいかどうか確かめたい。
美味しいと評判のラーメンを自分も食べてみたい。

「食べてみたい」んです。
食べられなかったら意味がないんです。

もしかしたら遠くから食べに来ている人もいたかもしれません。
なのに材料切れで店を閉めるところがある。
食べられないんです。

美味しいかどうかの前の問題だと思います。


ある医者の話です。

自分の子供がヘルニアの治療で入院したときのこと。

息子を安心させようと病気のこと、治療法のこと、
色々と説明をしてあげたそうです。

ところが、その子は麻酔からさめると、お父さんに言いました。

「お父さんは、痛いってことを言い忘れていたじゃないか」


初めての立場なら当たり前のこと。
いつも意識していたいと思います。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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