2008年02月10日

質問力について

聞き上手は好かれると言われますね。
聴く技術も本で沢山見かけます。
質問の重要性もビジネス関連では頻繁に取り上げられるテーマのようです。

相手の話を聞いていく中には、ただ相づちを打つだけではなく
話を広げたり、引き出したりしていく過程で質問する状況も出てくるわけです。

ですから「傾聴が大事ですよ」と言っても、相づちを打ってオウム返しをしているだけでは
話す側も負担が大きくなってくることさえあります。
 「・・・という感じなんです。」
 「なるほど、・・・という感じなんですね。」
 「はい。・・・あの、それで困っていて・・・」
 「そうですね。それで困っているんですね。」
 「はぁ、えっと・・・何を話せばいいんでしょうか?」
 「あぁ、今、何を話したらいいか、分からないんですね。」
これじゃあ、ラチがあきません。

一生懸命、丁寧に言葉を受け止めるように聴いていくのも大事ですが、
まぁ、自然に考えれば、質問によって話を展開していくことで流れが生まれるわけですね。

そうなってくると『何を質問するのか』というのが重要になってきます。
だから質問力なんていうことが取り上げられるんでしょう。

で、質問という観点から見ると、
質問を活用してクライアントの目標達成をサポートする
というのがコーチングとも言えると思います。

コーチングを勉強されている方は様々な質問のパターンを持っていますね。
それを使って相手から色々なことを引き出そうとするようです。
コーチの方が書いた質問の技術に関する本も沢山あります。


コーチング以外でも、ビジネスの場で質問力が求められることは多いと思います。
面談であれ、会議であれ、営業であれ・・・、様々な状況で質問が必要です。
そんな時、5W1Hを使って質問しましょう、なんていう手法もあるはずです。

NLPでは質問の技術として『メタモデル』というパターンを学びます。
これはヴァージニア・サティアとフリッツ・パールズという
2人の心理療法家の言語パターンを分析して作られたものだということです。

有効な質問の仕方というのは沢山あると思います。
ただ、そういった質問技法を学んだ方が体験する難しさというのがあるんです。

それは、その質問をどういう時に使うか、ということです。

実際にどうやって使ったらいいかが分からないわけです。

当たり前です。
それは教えていないんですから。

こういう発言には、こういう質問をしましょう、とか、
こういうことを意識させるためには、こういう質問をしましょう、とか
そういうのは習うんです。
 「私には出来ません。」 −「もし出来たとしたら、どうなりますか?」
  と、可能性を拡げましょう。
 「・・・と、なりたいんです。」 −「そのためには何をする必要がありますか?」
  と、選択肢を考えさせましょう。
などですね。


どういう時に使うか、という重要な視点が抜けているんです。
何のために質問をするか、という視点とも言えます。

個別の質問そのものの目的という意味ではありません。
質問単体の目的は分かりやすいんです。
可能性を拡げるとか、選択肢を考えさせるとか、思い込みを取り除くとか。

どういう流れの中で、いつ、どのような目的で、どんな質問をするか。
これが難しいわけです。
質問は習った。でも何を聞けばいいんだろう・・・?となってしまいやすいんです。

要するに、何を質問すればいいかは、質問する本人に任せているということです。

それは難しいでしょう。
知らないことを学びに来ているのに、やり方は本人のスタイルで、ってことですから。

となれば、必然的に自己流になります。
質問のパターンは似ているのに、コミュニケーションの結果は
関わる相手によって全く違うものになってくるわけです。

カウンセラーが変わったら、クライアントの悩みが変わってしまうっていうことです。

これは大変です。
喩えるなら、
料理教室に行って、包丁の持ち方、材料の切り方、フライパンの扱い方などを習い、
材料を渡されて「これで料理を作ってください」と言われるようなもんです。

材料の扱い方も、火の通し方も、味付けも、組み合わせも、何も習わずに
基本的な技術だけを活用して自分のセンスで料理を作れ、と。

自己流でやってみたものを味見して、美味しいものができるように試行錯誤する、と。

自分で味見しながら料理を続けていたり、
どこか美味しいレストランに食べに行って味を盗もうとしたり、
そういう人は自己流でも料理の腕は上がっていくでしょうね。

でも、中には自分で味見すらせずに他人に食べさせて、
相手が不味そうな顔をしていることにすら気づかないで料理を続ける人もいるようです。
それで自分の店を持ったりしたら、お客さんが可哀想ですね。
お客さんは食べてみるまで味は分からないですし、
その料理を初めて食べるお客さんなら不味いかどうかも判別できないかもしれません。

でも、料理教室では料理の心を教えてくれるんですね。
「料理は愛情!」
「食べる人の気持ちを考えて作りましょう」
「素材を大切に扱うのが大切です」

そればっかりやっていると作れる料理がないままの時期が長くなるので
お手軽な料理を何品か教えてくれるところもありますね。


コーチングとか解決志向ブリーフセラピーなどは型にしやすいんです。
団体によるでしょうが、コーチングでは一連のセッションの目的も明確にされるようですし、
GROWモデルなどの型も学びます。

それを知っている上で、実際に熟練したコーチから自分もコーチングを受けたりすると
色々な工夫の仕方を学んでいけるんでしょう。
そういう意味では職人芸の伝達に近い要素も含んでいると僕は考えます。

コーチングをやっている人は言葉遣いで分かることが多いほど
その質問のパターンというのが工夫されているんだと思いますが、
コーチによって、それらの質問の選び方が違ってくることは起きているはずです。


質問をしている状況には、コミュニケーションとして何らかの明確な目的があります。
その目的のために集めていくべき情報があるわけです。

本来はそのために質問がなされるはずなんです。
コーチでもカウンセラーでも介護職でも、
一流の人達は体験的に、目的のために集めていくべき情報を知っているんでしょう。

その時によって不要と判断する要素などが違っているために
必要最少限の情報の内容は変わってくるはずですが、
十分な情報として得ようとすれば、ある決まった内容を質問していると推測されます。

質問によって集めていくべき情報のセットがあるんです。
ある種の枠組みとして、自覚されないままに持っているはずなんです。

質問の順番が変わっても、言い回しが変わっても、影響は出ないでしょう。
把握すべき情報が先に決まっているわけですから。

情報を集めて、整理して、把握できたと判断する状態が
質問する側の中に決まった枠組みとして出来上がっていると
自分のセンスに任せて聞きたいことを聞いていけば済むわけです。

その時に使っていた質問のパターンを誰かが分析して体系立てても
把握すべき枠組みを持っていなければ、使い方が分からなくなってしまうんです。


質問で大切なのは質問のパターンではありません。
何を把握すべきかを明確にしておくことです。

把握すべき詳細は仕事内容や状況によって変わってきます。
コーチと心理療法家では把握すべき情報は違います。

それでも、全体的な枠組みは共通していると思うんです。
全体の枠組みの中から、状況によって求められる内側の枠が出来てくるということです。

僕はこの把握すべき全体の枠組みを多次元のイメージで持っています。
2次元の紙の上に現すのは多少困難ですが、これも表現してみたいですね。

近いうちにワークショップとして扱ってみようと思います。
・・・固まってきた感じがしたら、すぐに秘密にしちゃうかもしれませんが。

それぐらい重要なポイントだということなんです。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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