2008年05月03日

介入というスタイル

コミュニケーションや心理ということを学んでいくと
ロジャース派を核とするカウンセリングの手法に出会うことが多いはずです。

受容、共感、傾聴。

どれも口で言うのは簡単ですし、とても大切そうなことに思えます。

傾聴という言葉は技法としての単語のようにも受け取れますので
その意味では相手の訴えをしっかりと聞いていくことと考えられそうです。
ただ、それを「話を聞いて相手を理解すること」などと解釈すると
途端にハードルが上がっていきます。

自分自身を100%受容することができないで、相手を受容するのは無理でしょう。
本質的には相手を受容することと自分を受容することは繋がっているはずです。

共感するというのも口で言う以上に大変なプロセスです。
相手が感じていることを他人である自分が同じように感じるわけですから
厳密に共感するのは不可能と言ってもいいぐらいではないかと思います。

いずれにしても、日常的なコミュニケーションでやってしまいがちな
『自分の考えを相手に押し付けて、相手の話を聞こうともしない』という
スタイルに対する意識付けとして、分かりやすいキーワードになってはいます。
世間一般でこういった言葉が使われやすい理由はこちらでしょう。

しかし、どれも本質的で非常に奥の深い言葉だと感じます。
習ったこと、意識すること、できること。
全ての段階において自分自身を振り返る必要がある項目だと考えます。


さて、一方ではそのような便利なキーワードとは違うレベルで
実践的に大きく名を残している人というのもいます。

NLPはそういった達人たちのやり方から学んで生まれてきたものとされますが、
実践の中では必ずしも傾聴というスタイルでないこともあるわけです。

というよりもむしろ、優れた実践家の洗練されたスタイルの中には
傾聴をしないことで、よりエレガントに問題解決を進める部分もあるんです。

それは傾聴の大切さを徹底的に学んできた人達にとっては衝撃的なことかもしれません。

時には相手に対して「介入」していくんです。

もちろん、それは相手にとって厳しいやり方です。
受け付け難い印象を受ける人もいるかもしれません。

ただ、そこには非常に明確なスタンスがあるわけです。

 「問題を解決したい」という要望に応える。

相手が困っていて、何とかしたいと本気で思っているのなら、
一秒でも早く苦しみから抜け出るための手助けをするということです。

それは徹底した目的思考の優しさと言えると思います。

「大変だったね」と優しい言葉をかけるのも大切です。
しかし、いくら優しい言葉をかけてもらって気持ちが軽くなっても、
元の場所に戻ったら問題は相変わらずなわけです。

本当に問題を解決したいのであれば、問題解決の時間を短縮することこそ
相手のためになっている行為だという考え方でしょう。

ただし、ここには重要な注意点があります。
誰もが本当に解決を望んでいないということです。

変化はストレスでもあります。
人によっては「大変だったね」と優しい声をかけてもらうことが目的の場合もあります。

本当に変わることを決心できた人には、変化こそが最大の目的となるわけです。
そこに対するお手伝いとしては、表面的な優しさだけが全てではない。
優れた実践家たちは実際にそういう一面を見せているんです。

本当に聞くべき内容を聞く。
無駄を排除する。
相手にプレッシャーをかける。

逃げ場がなくなったときにこそ、解決のために力を発揮できるという側面もあるわけです。

その前提には「だって、あなたは解決したいんでしょ?」という
責任の提示があるように思えます。

そこには絶妙なバランス感覚が感じられるんです。

 あくまで解決するのは、あなた自身です。
 解決したいあなた自身が頑張るんです。
 あなたが頑張るんであれば、私はできる限りの全てを尽くします。
 でも、あなたが頑張りたくなければ、それでもいいです。

…そんな感じでしょうか。

一秒でも早く苦しみから解放するために頑張る。
でも、それを頑張る主役は本人だということです。

ともすると突き放した印象を与えかねない方法です。
相手の問題の本質にだけ迫っていこうとするわけですから。

だからこそ、『ねぎらい』が重要なんでしょう。

「効率的に問題解決をするために、こうやっていきましょう」というスタイルを
時にはプレッシャーをかけながらやっていく。
その結果に対しては最大限の賞賛と『ねぎらい』をかける。

会話のプロセス自体が問題解決のための学習になっているわけです。
「そうではなくって、こうしましょう。そうです。素晴らしい。」
そんな感じを非言語のメッセージで伝えているように見えます。


積極的に介入するというスタンスは、ベースとして関わる側の自信が必要です。
相手への責任感も必要です。
的確に介入するには、徹底した自己吟味が前提にあるわけです。

同時に、相手と自分の関係性として、専門家としての立場が要求されます。
プロの言うことだから、と思うから素直に聞ける部分があるということです。

そのためにもプロフェッショナルとしてのスタンスが必要だと思うんです。

楽なのは聞いているだけです。
日常のコミュニケーションであれば、むしろ聞いているだけのほうが大切かもしれません。

援助関係として、プロとして、相手の問題解決をお手伝いする場合には
本当に相手が望むことを考えた上で、
時には相手の本質に切り込んでいく鋭さも重要なことのようです。


患部を切り込めるのはメスを使えるプロだけです。
そして切られたら痛いんです。
そのためには、切られた事に気づかない程の鋭さか、
痛みを抑える何かが必要です。

受容、共感、傾聴。
それらは痛み止めのようなものかもしれません。
よく効く薬もあれば、効かないのもある。
抗生物質のように治療効果のある薬もあれば、モルヒネのように麻痺させるものもあるんです。

だとすると、介入はメスのようなものでしょうか。
それは徹底した技術です。
悪くないところを切り開くかもしれないし、
切ってはいけない部位を切れば大変なことになってしまいます。
しかし腕があれば、その効果も大きいはずです。

専門家として磨くべきは、やっぱり両方なんだろうと思います。

cozyharada at 23:08 │Comments(0)TrackBack(0)clip!NLP  | コミュニケーション

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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