2008年05月17日

型稽古

日本の伝統芸能や武道には「型」があることが多いようです。

日本以外でも、格闘技の場合には様々な型を身につけると考えられそうです。
例えば、ボクシングでフックやアッパーの練習をするのも型ですし、
ディフェンスの仕方などは典型的な型の練習と言えるでしょう。

空手では昇段試験のような場面で型を評価する演舞も行うようですから
それだけ型の重要性を意識しているのではないかと思います。

では、実際に空手の試合でどれだけ型が使われるかというと
テレビで放送される試合などを見る限り、演舞とは随分違う印象を受けますから
試合中に型がそのまま使われることは少ないのかもしれません。

極真空手は素手で防具もつけずに殴ったり蹴ったりする流派ですから
素人の僕から見ると試合の様子は、痛みを我慢しながら相手を殴ったり蹴ったりを
ずっと繰り返しているようにすら受け取れてしまいます。

しかし、そこにはおそらく、空手の型が影響を及ぼしているのでしょう。

エレガントな受けや攻撃が見られる場面が少ないだけで、
選手たちの動きには繰り返し蓄積されてきた型が反映されていると思えるんです。

空手であれば、目的は強くなることであったり、試合に勝つことであったりするでしょう。
その目的のために、徹底的な型稽古を行う。
直接的には目的に沿わないように感じられる型稽古が
これだけ伝統的に続けられてきたということは、重要な役割があるんだろうと思うわけです。

試合などの実践の場面でどれだけ型通りの動きをするかと言われれば、
それは型を外れたものが多いのでしょうが、
無意識に蓄積された型の動きが自然と効果を発揮している可能性が考えられます。

型は無意識に蓄積され、自然と出てくるようになるまで
繰り返し稽古していくことが大切なのかもしれません。


落語も能も狂言も歌舞伎も、師匠から型稽古をつけられると聞きます。
徹底的に型を身につけることに専念するということです。

ところが、いくら頑張って型どおりにやろうとしても
どうしても現れてしまうその人の個性というのがあるものです。

その型には、はまりきらない部分を個性と呼ぶのでしょう。

個性を活かした教育というような言い方もされますが
それは「ゆとり」とは対極の型稽古を徹底したときに
型に収まらない部分として現れてくるものと考えることもできるんじゃないでしょうか。

「型破り」という言葉がありますが、歌舞伎の市川猿之介氏は
「型があるから『型破り』」だと説明していると言います。

まずは型を身につけることが大事だという話でしょう。


そして、NLPというのは、まさにこの「型」そのものだと思えるんです。

エリクソンのやり方、パールズのやり方、サティアのやり方。
これらは具体的な手法です。
彼ら独自の個性的なものです。

その個性的なやり方から抜き出された型がNLPだということです。

空手で言えば、戦闘スタイルも筋力も違う3人から
やり方を「型」として学び取った感じ。

3人の具体的なやり方。個性。
そういったものから「型」だけを抽出したのがNLPであると見たとき、
NLPには具体的な利用法というのが存在しないと考えることもできます。

例えば、会社の部下に対してヤル気を引き出したいとしましょう。
そのときに効果的な言葉がけを具体的に学んだとしたら、
それは誰かが使って有効だった実績のある言葉を真似してみることになります。

同じ言葉が別の人に対して効果を発揮するかどうかは分からないわけです。

多くの場合、自分の上司だった人とか、近くの人とか、尊敬する人とか、
そういった別の人達のやり方を真似して取り入れてみて、
それを自分なりに試していく過程を通るはずです。

そのプロセスで自分なりのやり方を身につけるんです。
つまり、自分の「型」を自分で作るということです。

でもNLPは違います。
それ自体が型なんです。

だから型稽古をして、自分なりに実践すればいいわけです。


NLPに限ったことではありませんが、何かを学び、
「どうやって使えばいいんだろう?」という疑問が湧いてくるとしたら、
それは実際に使っていきたいという気持ちの表れと捉えて良いはずです。
意欲的だということです。

その意欲を結果に向けなければ、状況は随分と変わるのではないかと思います。

まずは型稽古として数をこなすことに意欲を向けるということです。
日常の中で型を使えそうな場面を探し、少しでも型を練習してみる。

そうしているうちに型が身についていきます。
型は無意識に刻まれていきます。

これが型稽古のメリットです。

型が無意識に刻まれていくと、具体的な状況に応じて
自然と型が使えるようになっていくんです。

映画「ベストキッド」で主人公が空手のトレーニングをするシーンが象徴的です。

車のワックスがけを徹底的に繰り返すことで、
ワックスがけの時の動きが型として無意識に刻まれていきます。

主人公の実践場面、彼はそのワックスがけの動きを思い出すだけで
勝手に相手の攻撃を受け流すことができるようになっていました。

相手がこう打ち込んできたら、こうやって受ける…という風に
一つ一つの状況を学んでいくとバリエーションが多すぎるんです。

型を身につけると対応の幅が広がるわけです。
ワックスがけの型だけで、多くの攻撃をさばけたように。


もちろん実戦経験も重要です。
組み手とか乱取りとか言われる練習も大事です。

日常で実戦として、成果まで出そうとするのは
空手の型を習ってすぐにケンカで勝とうとするようなものでしょう。

コミュニケーションのトレーニングの面白いのは
人と人が関わったときには必ずコミュニケーションが生まれるという特性とも関係します。

型稽古のつもりで練習をするだけで、そこにコミュニケーションが生まれるため
実践的な意味合いも含まれてくるからです。
練習の過程で、同時に実践的な側面も学べているんです。

「型」を学んでいる過程で、「どうやって使ったらいいか分からない」と感じるのは
当然のように起きてくる状態かもしれません。

それはもしかすると「型稽古を続けよう」というメッセージかもしれません。

型を繰り返し、型が自分自身の実感として感じられるまでに身についてくると
型の持つ意味が体感できるようになってくるものです。

型の持つ意味、型の効果が実感できてくれば、
自然と型を使うべきタイミングも分かってきます。

それは型と体の反応を結び付けていくからです。
型と状況を結びつけるのは型の効果を下げてしまいます。

『体の反応…型』という結びつきを作るのが優先。
『状況…体の反応』は日常、無意識に起こっていることです。

だから、『体の反応…型』という結びつきを作れば
何かの状況で、『状況…体の反応…型』という具合に、
勝手に体が適切な型を選び出してくれるわけです。

どんな状況でも、体の反応として適切な場面であれば型が生きてきます。
初めての状況でも体の反応が教えてくれるということです。

それを、型が身につく前にすぐに実践して活用しようと焦ってしまうと
『状況…型』という具合に体の反応を省略した結びつきが出来てしまいます。

すると、特定の状況でしか型が利用できない羽目になってしまうんです。

型は型として練習をして、それが実感として、
体の反応に結びつくまで練習を続けるのが大事なように思います。

型の意味が納得できて、体の反応と結びついてくれば
「この型はどういう場面で使えばいいんだろう?」という疑問が出なくなるはずです。

納得できるまで型稽古。
地味なようですが、型という先人の知恵を活用するには
成果を焦り過ぎないで先人達を信じぬく謙虚さも大事なのかもしれません。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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