2008年05月29日

アピールする人

皆、何かの願望や欲求を持っていますね。

それが自分1人でどうにかなることなら、全て自分のこととして受け止めやすいはずです。
叶わなければ「自分はまだまだだなぁ…」と思って反省してみたり、
「運が悪かった。また今度、頑張ろう」と気持ちを切り替えたり。

ところが、それが他人に対する願望や欲求だと、不明瞭になりやすいようです。

 「自分のことを〜して欲しい」
 「〜のように扱ってもらいたい」

多くの場合、そこでは承認や愛情を求めているわけです。
でも、そのことには気づきにくい。


自分が本心で求めていることに気づかないで要望を表現するやり方は歪んでいます。
正しいか間違っているかではなく、歪んでいるんです。

日本文化には、ストレートに表現せず曖昧に気持ちを伝えることがあるようですが、
それを意識的にするのと、気づかずに無意識でやるのでは意味が違うわけです。

「本当は相手にこうしてもらいたい」という気持ちがあっても
それを直接伝えるのは言いにくい雰囲気がある、
だから少し違った言い方をしてみよう。
…というのは自分で意識的に選択をしているわけです。

だから、その結果として上手く伝わらなかったときに別の対応ができます。
「じゃあ、もっと率直に言うか」と考えて言い方を変えることもできるし、
「まぁ、この人では仕方ないか」と諦めることもできるということです。

そうではなくて、歪んだやり方というのは1つに固執しやすいわけです。

自分の本当の要望を正直に表現しないで、相手の出方を待つ。
その結果、相手がどういう対応をするかで、自分の気持ちが変わってくる。
相手が自分の望んだ対応をしてくれたら、「あの人は分かってくれる」と喜び、
自分が予想した対応じゃないときには嫌な気持ちになる。

相手に期待しているんです。

多くの場合、自分の要望にすら気づけていませんから、
自分が相手に何かを期待しているとは思っていません。

例えば、自分が仕事で上手くいかなかったとき、
八つ当たりをしたり、皆の前で過度に落ち込みを表現したり、泣いたり、すねたり、
上手くいかなかったことを多くの人に話したり、不満を歩き方などの態度で表したり…。

それは周りの人に慰めてもらいたいのかもしれませんし、
「お前はよくやっていたよ」と、ねぎらってもらいたいのかもしれません。

一緒に仕事をしていた仲間のミスが原因のときに、そんな行動を取っていたとしたら
それはミスをした人に謝ってもらいたいとか、
自分の努力が無駄になってしまったことを慰めてもらいたいとか、
そういった期待があるかもしれません。

僕が会社にいたときにも、忙しさ自慢をする人がいました。
「オレが若いころは寝る間も惜しんで仕事をしていたものだけどなぁ」
「いやぁ、昨日も2時間しか寝てないよ」
とか。

どういう言い方をしているかが重要です。
寝てないことを苦しそうに言うのであれば、それは心配してもらいたいのでしょう。
得意気に言うのであれば、それは「スゴイですね!」と言われたいのでしょう。

いずれにしてもアピールなわけです。

大人のすることではありません。
小さい頃に身につけた、歪んだ気持ちの伝え方を今も引きずっているんです。

欲しいオモチャがあったけど、お母さんが買ってくれない。
そこで駄々をこねるか、泣くか、すねて口をきかなくなるか。

それによってお母さんの対応も変わってきます。
お母さんがオモチャを買ってくれたら、上手くいったその方法を学習してしまいます。
逆にお母さんが「そんな子は知りません!置いて行くわよ」と言ったら
ワガママを言わずに我慢する方法を学習してしまうでしょう。

いい子に過ごしていたら、ある日にオモチャを買ってくれたとしたら
「いい子にしてれば欲しいものが手に入る」ということを学ぶと予想されます。

そういった体験の繰り返しの中で、歪んだやり方を身につけていくわけです。
パターンが出来てしまうんです。

それが仕方の無いことです。
だから親の責任が重要だというのではありません。
親自身も、その両親によって植え付けられてきたパターンを使っているんですから。

自分がその歪んだパターンに気づき、それを止めるように努力する。
それが大人としての成長だということです。


自分で自分の要望に気づけていれば、自分の行動に責任が持てます。
意図的に曖昧な表現をして、それが伝わらなくても自分の責任なわけです。
嫌な気持ちは沸きません。

相手の対応に対して嫌な気持ちが沸いてきたら、
それは相手に期待をしていて、自分で責任をとっていないということです。

ただ、自分の隠れた要望に気づくのは難しいことだと思います。
ついつい、気づかずにやってしまいがちなんです。

そして、これが酷くなってくると、状況は悪くなってきます。

分かってくれないと感じたときには、さらに歪んだやり方が続きます。
相手を非難しながら、自分の要望を暗に表現し続けるわけです。

通常、そんなことをされたら相手のほうも不快になるものです。
その不快さを解消するために、相手も反発し始めます。
そうやって悪循環が起きていくんです。

こういう悪循環が起きているコミュニケーションのことを
交流分析では『ゲーム』と呼びます。

周りを巻き込んでいく不快なパターンです。


そうした自分の歪んだ表現で伝えたことでも、分かってくれる人というのがいます。

それは、その人が本当にコミュニケーション能力が高いという可能性もあります。
しかし、普通に育ってきたら必ず歪んだパターンを身につけてしまうものですから
多くの場合、分かってくれる人というのは
偶然にそのパターンを持っているのだろうと思われます。

家族の中にそのパターンで要望を表現する人がいて、
それを受け取って満足させることが関係を成立させる方法だったと想像できます。

当然、その歪んだパターンを満足させる方法も歪んでいます。

例えば、上手くいかないと泣いて許してもらうパターンの人からすれば、
「いいよ、いいよ。大丈夫だから。仕方ないよ。泣かないでね」と
慰めてくれる人に対して、「分かってくれた」と受け取るわけですが、
それも相手のパターンに巻き込まれた歪んだ状態です。

大人ではない要望の表現に対して、大人として扱っていないわけです。

本人は嬉しいかもしれませんが、それではずっとそのパターンが続くだけです。

一方、泣いて逃げようとする方法を認めずに、気持ちだけケアする方法もあります。
「泣くほどの想いで取り組んできたんですね。
 その努力は素晴らしいことですから、次に活かしましょうね。」
といったところでしょうか。


要望を歪んで表現してしまうことは多々あるはずです。
それをどう対応していくかは難しいテーマだと思います。

自分の要望に気づいたとき、それをストレートに伝えてみるのは1つの方法でしょう。

ただ、なかなか「仕事に失敗して落ち込んでいるから慰めて」とは言いいにくい気もします。
それで慰めてもらっても嬉しくないかもしれません。

であれば、あえて曖昧な表現や、落ち込みを態度でアピールするもの手かもしれません。

ただ、そういう受け取りにくい方法を意識してするのと、
自分で気づかずにするのとでは全く別物です。
伝わらなかったときの不満の度合いが違うんです。

どうやっても他人からは満たされなければ仕方ありません。
それは自分の責任です。

その気持ちをケアできるのは自分だけです。
その気持ちを分かっているのが自分だけだからです。

結局、誰も自分のことは分かってくれないでしょう。
相手に求めずに、自分で自分を満たせるようになること。

突き詰めると、そこに行き着いてしまうものかもしれません。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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