2008年08月06日

内向型と外向型

血液型のようなタイプ分けとは違う考え方ですが、
人の特性を両極に分類して見ると特徴をつかみやすいところがあります。

例えば、情熱的と冷静というような特性は相反するところでしょうから、
同じ軸上の両極にあると見れば、その人の熱意を判断しやすくなるということです。

「冷静と情熱のあいだ」という小説が映画化されたこともあるようですが、
冷静100%の人というのは存在せず、情熱100%の人もいないわけなので
誰もが「冷静と情熱のあいだ」にいるのは間違いありません。
…まぁ、小説のタイトルが意味するところは別の内容でしょうが。

で、そういう特性の中には本人の意志で変えることが比較的容易なものと、
物凄く困難なものとがあるようです。

NLPでは、そういった個人の特性をメタプログラムと呼んで分類していますが、
どうやら膨大な数の分類ができてきているようです。
変えるのが容易なものも、困難なものも混ざっている印象を受けます。

プロファイリングのための個性の示し方として使うのであれば
そうやって分類して人のことを理解したつもりになるのも構わないでしょう。
ただ、よくよく内容を吟味してみると、
要素とは言えないような複雑な内容のものも混ざっているように感じます。

そうした特性は遺伝的な要因で決まるところもあるでしょうし、
生育過程で自然と身につけてきたところもあるでしょう。
魂が違うとかいう見方をする人もいるかもしれませんが、
どのような説明の仕方をするかよりも違いを受け止めることのほうが重要だと思います。

そして、そのような特性を自分で選択しながら、時として柔軟に変えていくこと、
これが大切なことではないかと思うわけです。

多くの特性は本人が意識できるものですから
知識として知っていれば状況に応じて逆方向の特性を発揮しようと
選択することも可能になってくるということです。


ところが、中には本当に無意識的な特性というのもあります。
極めて気づきずらい特性です。

その特性があることで生み出される表面的な傾向を
その人の特性だと思い込んでしまうこともあるぐらいに。
しかし、それは結果なんです。

もちろん、その結果として現れる特性でもって人を見ることも役立ちます。
が、それが根柢の特性だと判断するのは正確ではないだろうと思うんです。

そのような例に、意識の内向傾向と外向傾向の違いがあると考えられます。
誰かが言っていた理論というよりは実感として感じるものですから
何か別の呼び方をしている人もいるかもしれません。

メタプログラムにも「内向型」と「外向型」を分類するための
「関係性」という分類項目があって、似たところがあります。
これは「相手の非言語メッセージに注意が払えるか(外交型)、
自分に内側に気持ちを向けたままか(内向型)」という分類です。

その定義であれば意識の内向傾向と外向傾向と似ているわけですが、
メタプログラムとしてNLPで扱う時には過剰な情報が入ってきているのを感じます。

メタプログラムの内向型は「情報の内容にのみ反応し、感情を表に表さない。
他人の非言語メッセージに気づかない」というもの。
外向型は「他人の非言語メッセージに自然と反応し、うなずきが自然に出る」というもの。

そこまで詳しく説明されてしまうと、
僕には複数の要素が絡み合っている印象が感じられてくるんです。

つまり、「他人の非言語メッセージに自然と反応する」という特徴は
元の定義の「相手の非言語メッセージに注意が払えるか」という内容とは
一致していないように感じるということです。

このメタプログラムの説明には世間一般で言われる
「内向的な性格」「外向的な性格」という表現が混同されているように思います。
外向的な人は他人との関わりが得意だから相手の非言語メッセージにも
注意を払うことができるだろう、という発想が混ざっている気がするんです。

僕の考えでは、「他人の非言語メッセージに自然と反応する」人には、
「相手の非言語メッセージに注意を払った(外向)」結果として反応する人もいれば、
「自分の内側に気持ちを向けた(内向)」結果として反応する人もいる、となります。

「他人の非言語メッセージに自然と反応する」=「外向的」という結論は短絡的です。


意識の方向が外的になりやすいという傾向は、他人の言動に敏感だということです。
その傾向を活かして他人と積極的に関わり、
コミュニケーションを円滑に進めるタイプの人もいるでしょう。
世間一般で言う「外向的な人」というヤツです。

逆に、意識を自分の外に向け、他人の言動に敏感になった結果、
人の顔色を伺ってばかりで上手くコミュニケーションが取れない人もいるはずです。


その一方、意識の方向が内的になりやすく、
自分の内側に沸き起こる気持ちや身体反応に敏感な人は
自分の外側に意識を向けることが少なくなります。

そういう人が他人との関わりの少ない環境で生きてきたら、
コミュニケーションの際の緊張感や不安を感じ過ぎて苦手意識を持つでしょう。
世間一般で言う「内向的な人」というヤツですね。

逆に自分の内側に沸き起こるものに敏感な人が、他人との関わりの経験が多ければ
自分の気持ちを大切にしながら、他人を気にせず、あっけらかんとした
積極的なコミュニケーションをとるかもしれません。
世間一般では「明るい、活発、積極的、外向的」と言われるでしょう。


つまり、意識の方向と、コミュニケーションにおける特性は直結しないわけです。

本当の意味で「他人の非言語のメッセージに自然と反応する」人というのは
むしろ意識の方向が自分の内側を向いている「内向型」の人のはずです。

意識の方向が「内向型」の人が他人とラポールを形成し、ペースが合ってくると、
自分の内側にある身体反応を敏感に察知して、自然と相手に反応し始めます。

意識の方向が内側を向いているということは、目や耳で受け取る相手のメッセージは
無意識に処理されているわけです。
そこでペースが合っていると、相手のメッセージが自分の身体反応に現れてきます。
「内向型」の人は、それを敏感に察知できるわけです。

例えば、相手が悲しみに浸っているとします。
そのとき、意識が自分の外を向く「外向型」の人であれば、
「おや、どうもこの人は悲しそうな表情をしているぞ」と受け取ることになります。
反対に、意識が自分の内側に向く「内向型」の人であれば、
「この人を見ていたら、なんだか悲しくなってきた」となるわけです。

ただし、「内向型」の人が相手の気持ちを自分の身体を通じて感じるのは
相手とラポールが形成されているときに限ります。
ラポールができていなければ、悲しんでいる人を見て
「泣いている人の近くにいると困ってソワソワした感じが沸いてくる」となります。


そして、「外向型」の人が相手の非言語のメッセージを受け取ったとしても、
その結果をどのようにコミュニケーションに反映させるかは別です。
「悲しそうだ」と思って心配する人もいれば、自分には関係ないと思う人もいるわけです。

「内向型」の人は、相手とのペース合わせが上手く、ラポール形成に長けていれば、
相手の気持ちを自分の身体を通じて察し、自然な対応をします。
ペース合わせに慣れていなければ、自分の内側に籠りっぱなしになります。

いわゆる外向的な性格とされる、
他人とのコミュニケーションが積極的で他人の気持ちを察知できる、
という特性は、意識の内向・外向とは直接に結び付かないということです。

意識が内向しやすいか、外向しやすいかによって、
相手の気持ちを察してコミュニケーションするための方法が違うわけです。

なのに、そこを混同してしまいやすいのは、
それだけ意識が内向しやすいか、外向しやすいかという特性を
普段はあまり気にかけていないということを意味しているでしょう。


この特性を理解すると、コミュニケーション能力の磨き方にも違いが出てきます。
もちろん両方向で伸ばせれば、それに越したことはないでしょうが、
持ち味を活かすほうが早く上達しやすいわけです。

意識が外向しやすい人は、相手の表情や声から気持ちを察知するトレーニングをする。
意識が内向しやすい人は、ペース合わせの練習をして、
自分の身体を通じて相手の気持ちを察知するトレーニングをする。

その違いを理解しておくと便利ですね。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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