2008年11月24日

タネ明かし

11月の勉強会は『ラポール』をテーマに扱いました。

ラポールについて詳しく説明されているものは多くないので
それを僕なりに現象と理論に整合性のある形でまとめてみたわけですが、
相当に理解の難しい内容になったようです。

自分で読み返してみても難解な印象でしたから。

それだけラポールというものが曖昧で、不思議で、説明しにくいものだということです。
安易に説明すれば、「信頼関係」とか「安心感」とか言い換えることもできるでしょうが、
その角度で説明をしてしまうとラポールを実感するのが難しくなると判断しました。

単なる仲の良さや打ち解けた間柄をラポールだと思ってしまうと、
ラポールができているのに気づけない事態になりかねないんです。

ラポールを自らの体験で実感しておくことによって、
ラポールが深く成立している関係を理解出来るようになる。
違いに気づけるようになっておくのが重要だということです。


個人的な印象としては、ラポールと「一体感」は、割りと近いと思いますが、
皆で盛り上がってワイワイやっているような一体感とも違うことがあるので
一概に、ラポールと一体感を同じものとして捉えるわけにはいきません。

どちらかというと静かな状態のほうが、違いに気づきやすいと思います。
黙っているのに、一緒にいることに一体感を感じる。
周りから切り離された、そこだけの空間という感じでしょうか。

それは身体感覚として感じる、何とも言えない居心地の良さなんです。

その状態をしっかりと体験しておき、その状態にある人間関係を見ておくと、
ラポールが成立しているかどうかを見てとったり、感じ取れたりするようになるわけです。

僕は、その感覚的違いをもって、セミナー中の受講生同士のやり取りや、
セミナー会場全体の関係性、話し手と聴衆の関係性などに対して
ラポールが上手くできているかどうかを捉えています。

それは僕の中で1つの指標として利用できている実感があります。
勉強会でも、NLPのトレーナーをしているときでも、面談をしているときでも、
ラポールという状態を身体感覚として感じ取っているようです。
その場にいながら客観的に見ているときでもラポールの度合いを受け取っています。

なので、その指標を持っていない人と比べて
評価の結果が異なってくることもあるわけです。

僕からすると上手くいっているように判断されることが
他の人からすると「イマイチ盛り上がりに欠ける」と思われていたり、
他の人が「楽しくて、良い雰囲気」と捉えている状態が
僕には表面的に打ち解けた関係として判断されたりする。
そんな経験がよくあります。

ラポールというのは曖昧で、言葉にしにくいものですから
それを実感できるレベルで理解するためには工夫も必要だと考えます。

特に体感するという部分がカギになるはずです。
日常的に感じる「話しやすさ」とか「仲の良い関係」とか「楽しい関係」とか、
そういったものとは違う角度で理解する必要があると思うからです。


そのための1つの工夫が概念的な説明です。

今までとは違う知識体系の上に、新たな概念として「ラポール」という理解を作る。
そして、頭で理解しようとしたその概念に実体験を結び付ける。

こうすることで、今までの人間関係で理解してきたものとは別個に
「ラポール」という状態を理解するベースが出来上がるわけです。

ラポールを理解するためのパートを作る、と言ってもいいでしょう。

実体験として、深いラポールを主観的にも客観的にも感じてもらう。
それ以降は、その感じを評価基準としてラポールの度合いを意識しながら
深いラポールを目指したコミュニケーションを目指せばいい、という考え方です。

凄く美味しいものを食べたことがないと、
美味しいかどうかの判断がしにくいのと同じようなものです。

プロの料理人は有名店で修業をしたり、食べ歩いたりして、
最高峰の基準を自分の中に体験として蓄積しておくものです。
その基準に照らし合わせて自分の料理を作り上げていく。

ラポールに関しても、深いラポールというものを実感しておくのが大切だということです。

目指すべき地点が見えることで、方向性という軸が見えてきます。
軸の上に乗っているものと、乗っていないものも分かるようになるんです。
その意味で、「楽しい」「話しやすい」などは、軸の上からはズレているわけです。


ということで、11月の勉強会ではラポールの実感を最優先に組み立てました。

しかしながら、ラポールを実感するのは難しいものなんです。
技術的に深いラポールを作り出すのもそうですし、
それを体感的に実感するのも簡単なことではありません。

そこで工夫として、理論的な理解のために負荷をかけました。
難しい説明、概念的な話、難解な図。
「理解しよう」という姿勢になってもらうための工夫でもあり、
疲れてもらうための工夫でもあり、混乱してもらうための工夫でもありました。

抽象度の高い説明を提示されると、具体的な事象と結びつけるために
意識的な努力をする必要が出てくるわけです。

図というのは、それ自体が抽象化された表現ですが、
その絵柄の中に意味合いを持たせることをすると抽象度は更に上がります。
受け取り手によって解釈の幅が生まれる。

そして抽象度の高い概念同士を組み合わせた説明に対しても
具体的な内容と照らし合わせて納得をしたくなるはずなんです。

特に、自分の体験を思い起こしながら理解する方向で考え始めておくと、
いわゆる「ツァイガルニック効果」と同様に無意識は答えを求め続けます。

自然と実体験に対するモチベーションが上がるだろう、という見立てです。
体験的に納得したい方向に無意識を向ける工夫だということです。

また、内容の理解に混乱し、頭がボーっとなるような状態も好都合と言えます。
意識的な学習が放棄され始めているからです。

普段と違う感覚を研ぎ澄まし、自分の体験している状態を
今までの分類とは違うものとして感じ取るために、
無意識的な体験学習に方向づけをしておきたかったんです。

そうして「ラポール」という状態を皆さんがボンヤリ感じる。

高度な実習だったにも関わらず、全員が真剣に取り組んで下さり、
深いレベルのラポールを作り出すことができていた。
同時に、その状態を感じ取れていたように見えました。

それ以降は、多くの方が勝手に色々なことに気づかれていたようです。

以前に別の方々を対象に同様のワークをやったときは
ラポールとしての実感が薄かったようでしたので、一安心でした。


まぁ、1日の勉強会で扱う内容としては厳しかったかもしれませんが…。
もっと時間をかけてトレーニングを繰り返せると良いかもしれません。

ちなみに個人的な印象としては、
質問の仕方を磨くよりも、ラポールのためのペーシングの技術を磨くほうが、
はるかに中心的で効果的な部分にコミュニケーションが取れるように感じます。

ラポールのない状態での質問は、相手を不快にさせるものだと僕は思いますから。

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この記事へのコメント

1. Posted by 田中maδ   2008年11月25日 22:03
昨日はお疲れ様でした!
ラポールの何ともいえない感じ体感覚で
受け取る相手の無意識を体験できたような気がしました。

来月も都合がつけば必ず参加させていただきますm(_ _)m
2. Posted by 原田幸治   2008年11月30日 00:47
田中さん

先日はありがとうございました。
積極的にご参加下さり、皆様の気づきのキッカケも作って下さったように思います。

ラポールは身体的に納得できていると、大きなメリットがあるはずです。
ご活用いただければ幸いです。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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