2009年02月22日

新しいこと

人は自分の知らないことを認識することさえできない。
このことは重要で本質的なことだと思います。
自分は何かを分かっているつもりでも、分かっていないことが多いはずです。

何かを勉強するにしても、誰かのことを理解しようとするにしても、
自分がそのことを分かれる部分は、自分が知っている部分だけなんです。

自分が知らないことには気づくことさえできません。

本の中に素晴らしいことが書いてあっても、
誰かが非常に大切なことを言っていても、
相手が心をこめた配慮をしてくれていても、
自分が知らないことには気づけないんです。

こういうことは久しぶりに本を読んだりすると意識できると思います。
「あぁ、この本にもこんなことが書いてあったんだ」
と、読みなおすたびに違う学びが得られたりする。

中には、自分が気づいた考えやアイデアを喜んでいるときに
数年前に読んだ本を読み返したら、同じことが書いてあったりすることもあります。

これが、本から学んでいたから意識に上がったのか、
時間をかけて同じ場所に行きついたのかは分かりませんが、
少なくとも数年前に読んだときには理解できていなかったというのは確実でしょう。

自分の知らないことを表している人ほど、自分にとって重要な存在だろうということです。


知らないことには気づけない。
とはいえ、新しく何かを学ぶというケースがあるわけです。
新しく何かを伝える仕事というのも世の中には沢山あります。

そこで考えられる方法は大きく2つ。

本人が知っている情報と関連付けて理解する、という方法。
新しい学びを体験した後に、それを意識的に整理する、という方法。

体験と意識的整理を組み合わせる場合でも、
本人の中の関連情報と結びつければ理解の幅が広がり、応用力もつくでしょう。

世の中の多くの勉強や授業は、聴き手が知っている情報と関連付けながら
学ぶべき内容を伝えていく形式を取っています。
前にならった内容に付け加えて進むような印象。

ところが、この形式は地味なんです。
学校の授業や塾を連想させます。
ですが、上手く本人の知っていることと関連付けられれば
理解は順調に進んでいくと考えられます。

一方、多くのセミナーや講演は、それと少し違った形をとるようです。

会社の研修などでやってくる実直な講演だったりすると
聞き手が知っている情報を関連付ける形の地味な内容もあったりしますが、
こういうのは聞いている側からすると面白味が少ないわけです。

なんとなく分かっているようなつもりの話が進んでいきますし、
「言われればそうだけど、整理の仕方を変えただけ」のような印象が出てきます。

しかし、人気のあるセミナーや講演は面白いんです。

その面白さにも色々あると思いますが、一般的に言えば
聞いていて面白い話というのは「心を揺さぶられる」話です。
具体的なエピソードの面白さに酔うんです。

内容は一般的で、聴き手の誰もが共感できる形であっても
話の熱の入れ方や余談の使い分けなどで面白さを出す人もいるでしょうが、
人気のある人は内容レベルで心を揺さぶるケースが多いように思います。

新しく学ぶべき話の内容を伝えるために、エピソードを使うんです。
具体的で、感情を伴ったエピソード。
聞き手の誰もが想像力をかき立てられ、その世界に入り込んでしまうような内容です。
ドラマチックなんです。

実例の範囲を超えないで話される内容ながら、インパクトが大きいエピソードを話す。
有名な物語や、偉人・有名人の逸話を使って結論を補足する。

伝えている内容に関連する具体的な話が興味深いわけです。

日常的ではなく、ドラマチックで、感動的な話。
予想外の展開などあれば、なお心が動かされます。

こういう話をすると人気が出るようです。

それも当然でしょう。
退屈しないし、名作映画を見たような感動さえ得られます。
「良い話を聞いたなぁ」と思えます。

こうした心の動きの大きさは、人に影響を及ぼします。
深く印象に残るんです。

ドラマチックなエピソードを語る場合、聴き手側はその内容を想像しながら
映画の世界に入り込むように仮想体験をすることになります。

自分が今まで経験したことがなかった体験を、
想像力を利用して仮想的に体験しているんです。
そこに感動のような心の動きがあれば、なおさら体験としての意味合いが強まります。

そして、その体験から得られる意味を、話し手が結論として伝える。
すると聞き手は新しい考えを自分の中に生み出せるわけです。

これは言ってみれば、新しい体験をしてもらってから
そこに意識で整理をしていく方法に近い部分がある、ということになります。


ただ、弱点もあるように思えます。

それは、仮想体験があまりにドラマチック過ぎて、
自分の実生活と関連づけるのが難しい、という問題です。

せっかく素晴らしいことを学んだのに、日常生活という場面に戻った途端に
そのことが使えなくなってしまう可能性があるんです。

学んだことを日常で実践しようと頑張る人には効果もあるでしょう。

日常の全ての場面で
「これは、前に教わった考え方をすると、こういうことだな」
と意識できれば、学んだ内容を自らの生活に落とし込めます。

もっとも、現実的には全ての時間で意識することはできないので、
自分が気づいたタイミングで学びの内容を活かそうとするわけです。

実は、ここにも落とし穴があります。

自然と気づいたタイミングで学びを活かせるのであれば、
それは学んでいた時点から関連付けられていた状況だったに過ぎないんです。

良い話を聞いたときに、頭の中で自分の置かれている状況と照らし合わせる。
「今の話は、会社のあの人との関係にも当てはまるなぁ」
というような発想を知らず知らずのうちにやっていたはずです。
だから、その場面で学んだことが頭に浮かぶ。

浮かんでこない状況でも、学びが活かせる可能性はあるのに
普通に生活をしていたら意識をしなくなってしまうんです。

どんなに良い話を聞いても、それを活かせる場面が限られてしまうということです。

場合によっては、そもそも学んだことを意識して生活しようとしない人もいます。
そういうときには、ただ「良い話を聞いた」ということしか残りません。
「あの映画は名作だね」と言っているのと同じです。

映画を見るのが好きな人がいるように、良い話を聞くのが好きな人もいるでしょう。
僕自身もそういうところがありますから、良い話を読むのも聞くのも楽しんでいます。
それは「好きだから」ということです。

聞いたことを自分に活かすには、自分の置かれている状況と関連づけて
学びを積極的に意識する必要があるはずです。


自分が知らなかったことを学んでいくためには
自分が積極的に体験を重ねるのが大切なように思います。

説明のためのエピソードや具体的な事例がドラマチックだと
話の内容に対して印象が残りやすいものです。

新しい考えを具体例と結びつけて理解しやすいんです。

だから多くの人は「分かりやすい説明だ」と感じます。

しかし、それは違うと思います。

「分かりやすかった」のは、その考えを、事例と結びつけるのが簡単だったに過ぎません。
聞き手自身の日常生活に結びつけることは簡単ではないんです。

役立つ形にしたければ、自分で日常の事例に結びつける必要があると思います。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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