2009年02月28日

名前の覚え方

セミナーをしていると新しい出会いが頻繁にあります。
大勢の人と知り合いになるわけです。

何百人も相手にする一方通行のセミナーであれば
受講している方の顔も名前も意識することが難しいでしょうが、
僕の場合は最大でも数十人なので、一人一人の個性が見えるんです。

2日間ぐらいのものであれば、20人ぐらいの名前は覚えるようにしています。
NLPの資格取得コースも長期間にわたりますので、名前を覚えるように努力をします。

もちろん、時間が経過して会わない期間が長くなれば
自然と思いだせなくなっていってしまいますが、一度は必ず覚えるんです。

いわゆる忘却曲線というのにマッチするように、
思い出さない期間が長くなると記憶が薄れていきやすいですし、
短期間に集中して会うと忘れにくくなるのも感じます。

偶然どこかで出会うかもしれないので覚えていたいと思っていますが、
なかなか難しいものです。


僕が人の顔と名前を覚えるときは、英単語を覚えるときのような感じに近いようです。
流石に紙に書いたり、単語帳のような名簿を作ったりはしませんが
意識的に覚えるプロセスを踏んでいるんです。

セミナー会場を歩きまわりながら、名札を見つつ名前を覚えていく。
「この人は、えーっと…」なんて思いながら、顔を見て名前がすぐに出るように
繰り返しチェックをしています。

単語帳の日本語を見て、英単語を書くという覚え方とソックリです。

よくテレビドラマやマンガなどで、学校の先生が生徒の名前を覚えるために
顔写真と名前と席順とを見比べているシーンがありますが、
僕の場合、そこまで苦労しなくても覚えられる気がします。

やっている作業は同じような印象ですが、内面で起きていることが違うんでしょう。

覚えにくい人の中には映像的な記憶の度合の強い人がいるようです。
名札の文字の形と文字の内容、顔や髪型、座っていた場所など、
見た目に関する情報の組み合わせで覚える意識が強い方法。

こういう人は、テレビで芸能人が違う役柄を演じたりすると混乱しやすいみたいです。
セミナーの場で言えば、座席が変わると途端に分からなくなってしまう。

一方、僕の知り合いで名前を覚えるのが得意な人は
音の印象を捉えている様子があります。

名前の響きやリズム、強弱、イントネーション…。
そうした音の印象を利用している。
名前を思いだせないときも音の雰囲気だけは思い出せるというケースです。

例えば、お笑い芸人で「エレキコミック」が思い出せないでいるときに
「えーっと、誰だっけ?…『あばれヌンチャク』じゃないしなぁ」
という感じで似たような音の名前が浮かぶわけです。
 (ちなみに『あばれヌンチャク』は『桜塚やっくん』がやっていたコンビですね)

音程とかアクセントの変化を捉えていることが自分でも分かります。

僕の発音の癖として、アクセントの置かれていない母音は弱く音を出す、
というのがあるようですので、母音がア段かエ段かの重要度は低いみたいです。

全ての母音をハッキリ発音するタイプは関西語圏の人に多いそうで、
「ネクタイ」の「ク」の音に「ウ」の母音が強く表れるような傾向のことです。
僕の場合は「ク」の部分で音を詰まらせるようにするだけで母音が弱いんです。

というわけで、文字数や音程、アクセントの位置が重要なんだと思います。

その観点から言うと、「すがわら、みやざわ、ふじわら、やまざわ…」といった名前は
「タラララ」という音が単調気味で似ているので、
僕にとっては割りと覚えにくい部類に入る印象があります。

「やまだ、たなか、すずき…」なども「タララ」というイントネーションが共通しますが
メジャーな名前なので比較的覚えやすい感じがします。

珍しい名前は一度覚えてしまえば忘れにくい特徴がある一方、
最初は覚えにくいというのも、音をベースにしているからだと考えられます。
響きは分かるけど、正確な発音が出てくるようになるまで時間がかかる。

お笑い芸人のコンビ名なども同様ですね。
音の特徴は覚えていても、変わった名前が多いので記憶までには少し時間がかかります。


イントネーションや音程の次ぐらいにくるのは母音の特徴よりも、子音の特徴です。

多くの人が間違えやすい名前に「岡本」と「岡村」があるみたいですが、
これも「タラララ」というイントネーションとリズム、音程が似ています。

「モト」と「ムラ」は結構違う母音なのに間違えやすいのは
1つにアクセントが「オカ」の「カ」にアクセントがあって尻つぼみになるからでしょう。

もう1つは「M」の子音としての発音だと思います。
「マ行」の唇を閉じて、音を飲み込み気味に発声する体の感覚の特徴。

それがアクセントの置かれている「カ」の後にくる。
「カ」自体も「K」の発音に一度息を止めてから強く吐き出す発声法がありますから
「oKAM」までに相当な特色が出ていると考えられます。

それをクリアすると、残りの部分に特徴を感じずらくなって
「オカモト」と「オカムラ」が一緒になってしまうんじゃないでしょうか。

「エレキコミック」と「あばれヌンチャク」の場合も、
僕の体の感じとしては「ッ」と「ン」の詰まる感じに似たものがあるようです。

子音で違いを感じやすいのは有声音か無声音か、という部分もある気がします。
「ザ行」や「ダ行」は有声音、「カ行」や「タ行」は無声音。

日本語は基本的に全ての50音に母音が含まれますから
有声音だとノドの奥のあたりで音を出す感じが長く継続されます。
「やまざわ」なんていう名前は発音中にずっと喉の響きの感覚が残るものです。

そういう喉の感覚が続きやすいのが日本語の特徴ですから
途中で「カ行」や「タ行」の無声音が入ると違いが生まれます。
なので「ナカダ」と「ナカタ」、「タマガワ」と「タマカワ」は全くの別物になります。

むしろ、他と差別化する意味でも、無声音の入っている名前のほうが覚えやすい。


それから、アクセントが置かれた母音の違いも影響があるように思えます。

「さとう、きよた、うつみ、えじり、こやま…」という名前は
一文字目にアクセントが置かれています。
こうした場合には母音の違いも気にしている印象があります。

(ちなみに「オ段」で一文字目にアクセントがある名前は少ないようで
 僕の中では度忘れしてしまいやすい部類に入ります)

一文字目の母音が「ア」と「オ」の場合と比べると
「イ」と「エ」は強く発声しながら、声が顔の上のほうで響く感じが出ます。
「ア」や「オ」は口の上あたりまでしか上がってきませんから違いが大きいんです。

「ウ」はまた、少し毛色が違います。
響きとしては飲み込む感じがありながら、強く押し出すような感じが必要です。

この辺の発音の仕方もポイントでしょう。


どうも僕の中では、まず
 ●音の響き、イントネーションやリズム、音程、アクセントなど
 ●子音や、アクセントの置かれた母音の発音に伴う体の感覚
の両方が名前を覚えるのに利用されているようです。

イントネーションや音程、アクセントのあたりは聞いている印象ですが、
発音したときの口や喉、声帯の使い方と、音の響く位置などの体の感覚も
同時に意識しているような気がします。

文字で書かれた名前があると覚えやすいですが、
それは文字の形を映像的にイメージするという意味合いよりも
文字を読み上げながら心の中で音を聞き、
発音したときの体の感覚を想像する意味が大きいように思えます。

正確な発音を思い出すためのキッカケとして利用するわけです。

ただし、文字の形や字面が強く印象に残るケースもあります。
その場合は特色を強める目的かもしれません。


これまでの部分は名前そのものを覚えるための内容ですが、
実際には名前を顔と一致させる必要があるわけです。

人数が多くなると覚えにくくなるのは、顔を覚えるのにも時間がかかるためでしょう。
実際、初対面で似た印象の人が複数いると混乱しやすいところがあります。

僕の中では、音の響きと発音の感じがセットになったものとして
「名前」という機能があるようですから、あとは
それと顔を一致させるように努力をする段階が必要になります。

ここが英単語を覚えるときの、日本語と英語の変換のような結びつけに近い。
顔を中心とする人間的特徴を「名前」という名称でラベルするプロセス。
ここが肝であって、意識的な関連付けを必要とする部分です。

これは勉強をしていて、新しい概念や考えを取り込んでいくときも同様です。
NLPでは英語がそのままのような言葉が沢山ありますが、
そうしたものを覚える時も体験に基づく意味に、名称でラベルをつける意識があります。

概念の内容と、名称というラベルは、同じ次元ではない印象があるんです。

「サブモダリティとは、五感に基づく〜」という具合に
文字情報同士で組み合わせて定義を理解することはしません。

体験的に意味を捉えた情報に対して、
音の響きと発音の体感覚で作られる名前のラベルを貼り付ける。
そんな感じです。

人の名前も同じなんでしょう。

人も僕にとっては体験です。
その人と関わった体験の量です。

顔の特徴。
声の特徴。
雰囲気。
人柄。
行動内容。
イベント。

その人に関連して僕が持っている体験情報量が多いほど特徴がハッキリしやすい。
そして、その特徴に対して「○○さん」というラベルを結びつけるわけです。

「顔と名前が一致しない」という言い方がありますが、
それは正確な言い回しではないように思います。

「相手に関連した体験と、その相手の名前が一致しない」が正確でしょう。

相手に関連した体験が顔しかなければ、それを覚えるのは大変だと思います。
写真にしてしまったら、なおさら情報量は減ります。
顔は動きのあるものですが、写真では特定の表情しか見れません。

僕は顔を見る場合でも、その人の表情を始めとして筋肉の動きを見ています。
そこには内面が反映されるからです。

初対面でも写真だけでも、よく使っている筋肉は表情に定着します。
その人らしさは顔の一面的な情報からも得られるわけです。

服装も歩き方も座り方も些細な振る舞いも全てはその人の特徴を表しています。
内面的特徴までも表しているものです。

そうした全ての特徴に対して、名前を当てはめて覚える。
どうやら僕の名前の覚え方は、そんな感じのようです。

共有する時間が長くなれば体験の量が増えますから、名前も覚えやすくなります。
人数が少ないほうが、同じ時間でも一人当たりの体験量が増えます。
多人数で短時間となると名前が覚えにくいのも当然でしょう。

名前を文字で見たときには誰のことか思い出せなかったのに、
逆に、顔を見た途端に名前が浮かんでくることもあります。
顔から、その人のまつわる体験が思い出され、
その体験の中で呼んでいた名前を思い出すというわけです。

名前が体験に対してラベル化されていることが実感できる場面です。


相手に対する情報が少ないと名前も覚えにくいんじゃないかと思います。
具体的な記憶をしておくのが苦手な人は、名前も覚えにくいかもしれません。

逆に詳細な情報ばかりを記憶し過ぎていて、
その人に関係する体験という分類をしないでいると
名前を覚えるのも大変かもしれません。

いずれにしろ、相手にまつわる体験を整理して記憶しておくから、
その人に対して名前というラベルを貼ることがしやすいんじゃないでしょうか。

時間が長くなれば名前は自然と覚えるものです。
体験の量が増えていきますから。

「なぜ、そんなに覚える必要があるんですか?」と聞かれたときに
自分の中では明確な答えがありませんでした。

「覚えたほうが良い」とも「覚えるのが普通だ」とも考えていません。

そういう意味では、特定の信念に基づいて
「名前を覚える」という行動をしているのではないわけです。
(こういうことがあるから『信念が行動を生み出す』という考えが嫌いなんですが…)

ただ、こうやって色々と整理をしてみていたら、1つの発想が浮かんできました。

僕は、出会った人を特定の個人として、一人だけの人間として、
一人一人見ていきたい気持ちがあるようです。

目の前のその人に対する興味・関心が、名前を覚えさせようとしているのかもしれません。

頑張って名前を覚えようと努力をするのは、
その人を大勢の普通の人から、特定の個人へと、
自分の認識を早く変えたいからのような気がします。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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