2009年05月20日

売り込み

僕には商売っ気というのが少ないようです。
自覚しているところでもあり、他の人から指摘されるところでもあります。

別に、「お金なんて要りませんよ。ボランティアでいいんです」
というわけではありません。

仕事に誇りを持っているつもりです。
ただ、優先順位の問題だろうと思います。


で、僕が特に好きでないのがアピールをする部分。

自分がすることを説明するだけなら、まぁ許容範囲ですが
それを広告宣伝の形にしていくのが好きではないんだろうと思います。

それには僕が理系で研究職をしてきた視点が影響している気がします。

僕自身が何かの商品を選ぶとき、情報を鵜呑みにしない傾向があるんです。

この傾向は商品選びに限らず、本を読むときであれ、セミナーを受けるときであれ、
テレビ番組を見るときであれ、様々な情報に対して発揮されます。
情報を吟味し、根拠や論理展開を意識するんです。

実験結果、つまりデータ自体には嘘は少ないものです。
ポイントは、結果の解釈の仕方。

特に、サイエンスの視点から言えば、因果関係には注意を払っています。
サイエンス・ライターの竹内薫氏の著書ではありませんが、
まさに「99%は仮説」というスタンスです。

相関があるのと因果関係は別物だということです。

とかく人間の習性として因果関係を見出したくなる傾向があるようですが、
その多くは証明しきれているとは言えないんです。

例えば、沖縄が長寿の地域だというのは調査結果として言えることでしょう。
食生活を調べれば、そこから傾向を見出すこともできるでしょう。

仮に、沖縄の人が豚肉を沢山食べているというデータがあったとしても、
「沖縄の人が長寿なのは豚肉を食べているからだ」
という結論には絶対に導けないはずなんです。

「沖縄の人は長寿で、そして、よく豚肉を食べている」というのが正確です。

なぜなら他にも要因があるかもしれないからです。
もしかしたらゴーヤのせいかもしれないし、
泡盛に何か長寿の秘密が隠れているかもしれないし、
平均気温が高いことが秘密かもしれません。

実際には、複数の要因が絡み合っていると考えるのが妥当でしょう。

さらには、全く逆の結論が導かれるようなヒドイ実験だって見逃される可能性があります。

極端な例で言えば、
「コップに入れた1リットルの水を、気温30℃のところと
 気温25℃のところに3時間放置して、あとから重さを計る」
という実験をすると考えます。

普通に理科の知識を思い出せば、温度が高いほうが早く蒸発して
重さが軽くなるように考えるでしょう。

これはサイエンスの視点でいえば、何も記述されていない部分は
当然のように条件が揃っていると判断されるわけです。

ですから、気温30℃のところが熱帯のジャングルで、
気温25℃のところがオフィスの中ということは想定しません。

でも、世の中の宣伝で示される情報の中には
僕からすると、こんなレベルであり得ない比較をしているものが沢山あるんです。

そして、実験結果を決めるのは1つの要因だけではないというのも見逃せません。

仮に、コップの水が5℃だったとしましょう。
そして気温30℃、25℃ともに湿度が90%の部屋だったとしましょう。

そうすると蒸発が起きるよりも、むしろ冷たいコップの周りに結露して
空気中の水分がコップに付着する可能性が考えられます。

それで重さを計ったら、コップは重くなるかもしれないわけです。
でも、そこから「水は放置しておくと自然に増えて、重さが増える」
という結論には誰も導かないでしょう。

それは結露によって水滴が付いたら、重くなるということを想像するからです。

起きていることを説明するには、複数の要因を関連付けて
筋の通った、整合性のとれた論理展開をする必要があるんです。


ところが、商品の魅力というのは、必ずしも論理的に説明できるものとは限りません。
それがセミナーなどの情報になれば尚更だと思います。

一方で、世の中の宣伝広告は、一見すると説得力がありそうな雰囲気を出して
論理的に根拠が説明しきれていない情報を材料に売り込みをする傾向があります。

もちろん、そうした客観的なデータっぽい情報が全てではなく、
むしろ主観的とも言える熱意や商品への愛情を感じ取って
商品が選ばれていくこともあるはずです。

僕が引っかかるのは、一見すると説得力がありそうに思える
客観的データっぽい情報のほうみたいです。

「その情報では、その結論には辿りつけないだろう」と考えてしまう。

僕が一時期、年収の8割ぐらいをセミナーに使っていたとしても、
だからといって、沢山の知識とスキルを持っている人だという証明にはならない。

現役時代に200勝したピッチャーだからといって、
投手コーチとしてピッチングを上手に指導できるという証明にはならない。

20回の離婚経験を持っていたからといって、
離婚問題のスペシャリストという証明にはならない。

そうした根拠とは言い切れないような情報で
納得できる人も世の中には沢山いるんだろうと思います。
だから、そういう情報で宣伝がなされるんでしょう。

そのこと自体は大切なことだと思うんです。
それによって経済が成り立ち、多くの人が商品を知ることになる。

でも僕は、そこにある根拠が気になってしまうんです。
何も言えない気持ちになってしまうんです。

それが売り込みを好きになれない1つの理由かもしれません。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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