2009年05月22日

歪みが強調するもの

先日、電車に乗っていたら、旅行会社の企画でルーブル美術館のフロアを
時間貸しでタップリと見させてくれるという話がありました。

個人的には非常に魅力的な企画だと感じていたんですが、
今回のテーマは、その広告にあった『モナ・リザ』の絵。

写真のようにリアルに見える気もするし、その一方で
現実にはあり得ない印象も受ける不思議な感じ。

とはいえ、人物の描き方は非常に精密なようです。

一般人でもモデルを見ながら描けば、ある程度は精密な人物画を描けるかもしれませんが、
モデルを見ないで人間の姿を正確に描写するのは、かなり難しい作業じゃないでしょうか。

そもそも詳細な部分を思い出して、それを絵にするのは通常、大変なわけです。

誰か特定の人物を見ないで絵を描く時というのは、
心の中にある「人間」というイメージを描くことになると推測されます。

モデルを見ながらなら詳細に人物画を描けるのに、
思いだして描こうとすると難しいということになれば
それは心の中にあるイメージが詳細なものとして鮮明に見られないということでしょう。

そして、その心の中に絵が描かれるイメージは必ずしも現実通りではありません。
むしろ典型的なパターンを反映するというか、象徴的なイメージだというか、
その対象に対して自分が持っている印象がイメージに反映されるようです。

そのことは小さい子供の描く絵を思い浮かべてみると理解しやすいと思います。

子供が描く絵は、決まって頭が大きく、目が大きく、体や手足が小さくて細い。
家を描けば建物の形は不正確で、ドアが目立つように描かれます。
地図を描いても、自分の家を大きく描くことが多いようです。

これは、まさに心の中に描かれている印象を反映していると考えられます。

小さい子供にとっては、家といえば自分の住んでいる家が最も大切で、
家の機能として大切なのは、外の世界と囲われた世界との境目としてのドアであって、
人間に対しては良く目を向けている顔と目が印象の大部分だ、ということと推測できます。

もちろん、こうした子供の持つ印象にも他の要因が関係している可能性もあります。
たとえば、小さな子どもとはいえ絵本を読んでもらったり、アニメを見たりするでしょう。
また、子ども自身の体型が、頭が大きく、目が大きい特徴を含んでいます。
そうしたことが刷り込みとして影響を与えている部分もあるかもしれません。

ただ、子供の描く地図の歪みまで考慮すれば、
本人にとって重要な部分が強調される傾向は少なからずあると考えていいはずです。

「サザエさん」のように、服をどうやって着るんだかわからないようなデフォルメは
自然と顔に注意を向けさせ、登場人物のキャラクターという重要な部分を
見る側に強く印象付ける効果があるとも言えるわけです。

まぁ、一般的に頭が大きく、目が大きいという特徴は自然と子供を想起させ
「可愛らしさ」という印象を与えることが多いようですから、
いわゆるデフォルメには、その辺りの愛着を生む効果もあるとは思いますが。


マンガということに目を向けると、たとえば
心情を表現していくようなドラマ仕立ての内容であれば、
顔の表情や目が強調されて描かれることが多いようです。
カット割りとしても顔がアップで描かれたりする。

また、少年マンガにあるようなアクション物の場合には、
登場人物の動きを捉えられるような広い視野で描かれた場面や、
人物自体の特徴も体型や筋肉などで表現されることが多いように見受けられます。

描きたい特徴が強調されるように表現されているということです。

そして、こうした特徴の歪みは人間の心の中でも自然と行われているらしく、
心の中で印象や特徴を整理するための情報に
歪みの要素を利用することは少なくありません。

日本人の場合、心の中で持っている印象の特徴を映像的に
常日頃から捉えている人は少ないようなので、
それはまさに無意識の領域と言っていいでしょう。

無意識の範囲で、映像の歪みを特徴づけの要素として使っているわけです。

たとえば、尊敬する人の中の憧れる特徴が強調されてイメージされる人がいます。
テキパキしたところが好きなのであれば、動画の中で動きが過度にテキパキしていたり。
また、嫌いな人は表情が実物以上に不愉快な顔になっていたり。

人は無意識のうちに特徴を歪ませながら印象付けをしているところがあるという話です。


大人の場合、客観性が増してきて、現実に見ているものを事実として捉え、
正確に情報を受け取っていこうとする傾向が強まってきますから、
絵を描くときにも自然と見たままに近いものを描こうとするようです。
外にあるものを正しく描こうとするわけです。

ところが、子供はそうした客観性が身についていませんから
自分の印象の中にある歪みをそのまま絵に表現するんでしょう。

その意味では、子供は無意識的に特徴づけている印象に忠実な絵を描いていて、
心の中にあるイメージを絵に表現していると言っても良さそうです。

マンガで表現されるデフォルメもまた、無意識の印象に近いものがあります。
しかも、それが多くの人に共通する可能性があるんじゃないでしょうか。
だから、なんとなく読者に表現したい内容が伝わっている。

浮世絵やマンガといった日本文化としての表現技術は
現実世界の正確な描写とは違った、心の中の印象を描写する技術として
全世界の人の心に響いているのかもしれません。

cozyharada at 23:47│Comments(0)TrackBack(0)clip!NLP | 全般

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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