2009年06月16日

振動を感じる人

何度か書いていますが、僕が本を読むときは多少の雑音があるほうが集中できるんです。
なので、コーヒーを飲みながらとか、外食した後などに本を読むことが多いです。

図書館は静かすぎて、逆に意識が拡散しやすかったりします。

で、先日、食後にコーヒーを飲みながら本を読んでいたときのこと。
2つ離れた席に座った一人の女性が不思議な行動を始めました。

席につき、注文をするなり、足を組みます。
そして、上に組んだほうの足をテーブルの支柱に当てて、
小刻みに動かし始めたんです。

その女性が履いていた靴はスニーカーのようなタイプで、
側面にゴムというか、ビニールというか、
ある程度すべりの悪い材質で模様がついていました。

ちょうど、その部分をテーブルの脚の部分に当てているわけです。
そして足首を小刻みに、一定のリズムで動かす。

貧乏ゆすりとは違います。
もっとゆっくりと、靴の模様部分をテーブルの脚に擦りつけるように動かすんです。

キュッ、キュッ…。

小さな音が鳴ります。
足首を動かすたびに、往復でキュッ、キュッと。

それが注文後から、ずっと続きました。
食事が運ばれてきて、食べている間もずっと。

決して大きな音量ではありません。
だが、うるさい。
周りが静かなのと、僕の席に近いことで、耳に入ってきます。

聴かないようにするのが難しいのは想像できなくもないと思います。

本を読もうとすると、キュッ、キュッ、という音が鳴り続けている状況。
とてもじゃないですが、本に集中はできませんでした。

「よくもまぁ、食事をしながら常に一定のリズムで音を鳴らせているなぁ」と
感心するほどに器用な足首の動き。


僕も本を読みたい気持ちが強かったですから
なんとかならないものかと工夫を始めました。

まずは真似をしてみました。
ミラーリングです。

その女性と同じように、僕も自分の靴をテーブルの脚に擦りつけてみました。
キュッ、キュッと音を鳴らしながら。

なるべくその人と同じリズムになるように、同調させながら足首を動かす。

面白いもので、自分から音を鳴らすように意識すると、
その音が聞こえてくるのは意識的に予測がついているとでもいうか、
音がすることを当然のように捉えている雰囲気が出てくるんです。

その人と同じように靴を擦りつけ、自分の出す音を聞き、
そのまま本を読んでみると、これが意外と読めるわけです。

他人の出す音を聞かされていると気が散ってしまいますが、
自分が出している音を聞く分には、比較的気にならないのでしょうか。

喩えて言うと、車の運転をしているときには自分が揺れを予測できているから
車酔いをしにくいけれど、他人の運転する車に乗っていると
予測していない揺れに体をコントロールされるために気分が悪くなってくる、
そんな感じに似ているかもしれません。

もちろん、音が鳴っていないほうが良いのは言うまでもありませんが、
その人と同じように自分も靴で音を出してみると、
さほど悪い気持ちはしないものでした。


結局その人は、食事を食べ終わり、食器を下げてもらうまでの間ずっと
足でキュッ、キュッと音を出し続けていました。

そして食器が下げられると、組んでいた足を戻し、
椅子のせもたれに寄りかかって姿勢を変えたんです。

そこからキュッ、キュッという音はしなくなりました。

でも、その女性は別の行動を始めたんです。
左手の人差し指の爪で、ポリポリと右手の肘の外側を掻いています。

これは音がしませんから、僕にしてみれば気にならないことのはずですが、
そもそも音を鳴らす人として気になってしまっていたので、
靴でキュッ、キュッを止めて、指でポリポリに変えた理由を知りたくなりました。

そこで再びミラーリング。

自分でも姿勢を真似て、ポリポリとやってみたんです。
すると、意識に上がってくるのは振動の感じ。

これで靴をテーブルの脚に擦りつけていた理由も繋がりました。

振動がカギだったんでしょう。

キュッ、キュッと靴を擦りつけたときも、音の振動が足に伝わります。
肘をポリポリやるときも、ザラついた肘の外側の皮膚表面を擦れる振動が感じられます。

そして、音よりも振動に強く意識を向けながら足首をリズムよく動かし、
テーブルの支柱に擦りつけてみると、自分の中に1つの印象が得られました。

殻の内側に籠っている感じ。
周りの世界と関係を断ち、自分だけの世界に入り込んでいる感じです。

それは、音が迷惑かどうかなんて考えないだろうと、妙に納得できました。


後日、同じように本を読んでいたとき、近くのテーブルで
大きな声で会話をしている集団と遭遇したときのこと。

やっぱりこれも、うるさいんです。
僕の場合、ハッキリと内容が聞き取れる話し声が耳に入ってしまうと、
その内容を意識して理解しようとし始めてしまう傾向が強いようなんです。

ですから、隣のテーブルの話し声がうるさいと本に集中できません。

そこで、アレをやってみたわけです。
足首を動かして靴をテーブルの支柱にキュッ、キュッ。

そうしたら大分マシになりました。
本の内容に意識を集中しやすくなったんです。

特に、足首の動きがスムーズになって、自然かつリズミカルに
キュッ、キュッと鳴らせるようになると、本への集中力が随分と増えた気がします。

音を出す作業を無意識的にできるようになるほどに、
意識を本だけに集中できるようになっていく感じだったんです。

外の話し声に気が散ってしまうときには、
別の音や体感覚に注意を向ける要素を混ぜ込むと
話し声に意識を引っ張られてしまう度合いが減るのかもしれません。

以前には不快だった他人の癖も、意図的に自分が取り入れていくと
そのメリットを利用することができる。
そんなことを実感できた体験でした。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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