2009年06月26日

疑ってみるということ

朝、駅に向かって歩いていたとき、反対側から親子が歩いてきました。
雨が降りそうな朝、小さい女の子は傘を持っています。

体にしては随分と大きな傘に見えました。
普通に柄の部分を持ったら、長さからして地面に当たってしまうぐらい。

女の子は傘を引きずりながら歩いていました。

すると、お母さんが「傘を引きずらない!先がダメになるでしょ!」と、お叱りの一言。

女の子はビクッと驚いたような様子を見せた後、
何も言わずに傘を後ろ側を持ち上げるように力を入れ直したようでした。

体格や筋力のことを考えると、引きずるほうが楽だったように思えます。
ガリガリと引きずる音が楽しかったのかもしれません。
何があったかは分かりませんが、女の子には
「傘を引きずってはいけない」という発想が無かったのではないでしょうか。

そのお母さんの叱り方は、自分のルールから来るものだと思われます。
叱った理由を聞けば、「傘がもったいない」とか「迷惑になる」とか
もっともらしい説明をするでしょうが、感情的なメッセージを考慮すれば
あまり考えることなく自分のして欲しくないことを注意したと判断するのが妥当でしょう。


当たり前といわれること。
常識と呼ばれること。
暗黙のルールとされていること。
しつけ・道徳として教育されてきたこと。

人の中には自分が当然だと思ってやっていることが沢山あるものです。

ただ、それを自分で疑ってみることをする人は少ないようです。
思い込みを疑ってみることは大切なことだと思います。
まぁ、思い込みに気づける人も少ないのでしょうが。

例えば、「赤信号では横断歩道を渡ってはいけない」ということに関しても
それはルールとして大切なことである一方で、
自分自身の状況判断を奪う行為でもあるわけです。

赤信号では原則的に道を渡らない。
横断歩道が赤信号のときには、車道側が青信号になっていて
車がどのくらいのスピードで、どこから来るか分からないから。

しかしながら、その道が見通しが良く、車が出てくるような横道もなく、
渡り切るのに時間のかからないような細い道幅であれば、
赤信号でも、車が全く見えないときに横断するのは悪くないかもしれません。

自分が自分の責任で赤信号の道を横断した時に、
他者に対して全く影響がない範囲の場合には、それは悪いことではないかもしれません。

その横断歩道で、小さい子供が信号待ちをしている前であれば、
自分が安全だと判断したという理由だけで
赤信号を横断するのは良くない可能性があります。

それを見た判断力の乏しい時期の小さい子供が
周囲を良く見ないままに信号無視をして事故に繋がるリスクが否定できないからです。

逆に、「青信号は渡る、赤信号は止まる」というルールを無条件に守っていたら、
青信号だからという理由だけで周囲に注意を向けずに道を横断して、
信号無視の車と接触事故を起こす危険性も出てきてしまいます。

ルールや常識の多くは、全員がそれを守ることで上手くいきやすくなる
過去から積み上げられてきた知恵だと考えられます。

原則的に、それらを守ることは大切だと思います。

ただし、その中には自己判断ができるかどうかの前提があると思うんです。
誰でも判断ミスを犯すことがあるから、ルールにしたほうが安全。
判断力や思考力の乏しい時期の子供を危険にさらさないためにも
全員が共通して守るルールを作っておいたほうが安全。

思考や判断が的確にできる範囲であれば、
本人の選択の余地もあるのかもしれません。


自分の振る舞いに対して注意を向け、それがもたらす影響を十分に考えられたとき、
自分がすることを自分の意思で選択できるようになるはずです。

「電車の中で騒ぐのは良くない」という考えを持っている人は多いでしょうが、
その理由を「周りの人の迷惑になるから」という程度までで
考察を止めてしまうのは不十分なように思います。

「他人に迷惑をかけてはいけない」という思考も、本人の思い込みです。
しつけで言われてきたのかもしれません。

迷惑をかけても良いと言っているわけではありません。
迷惑をかけてはいけない理由を自分で考えて、
「迷惑をかけたくない」という自分の意志に変える必要があるということです。

誰かに言われたから、それを守るのではなく、
自分が考えた結果として自分で選択して、ルールとされている行動を取る。

自分の中の思い込みに従って生きることは
必要以上に状況判断へ労力を使ったり、考えることに時間を使ったりしなくなるため
効率的に生きる上では非常に有効な方法です。
だから誰もが自然とそれをするわけです。

でも、僕はそれを自由だとは思いません。

 ルールに従わないのが自由なのではない。
 ルールを守る自由が与えられている。

自分の中で当たり前になっている決まりごとを疑い、
その当たり前で守っている自分の気持ちに気づくのが大切だと思うんです。
そう思い込むことで守っている自分の気持ちがあるんです。

ルールで他人を裁き、自分を縛りつける。
それよりは、ワガママなくらいの自分の気持ちに気づくほうが
よほど自由なことでしょう。

その気持ちを感じた上で、自分が何をするかを選択すれば良い気がします。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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