2009年08月30日

「快」を感じるとき

NLPだとか成功法則だとかコーチングだとか、そういったものの中で
「脳は『快』の状態を求める」ということを耳にすることが少なくありません。

僕には少し疑問があります。

そもそも人間は生まれる前、母親の胎内で文字通りの一体感を感じているはずです。
ただ、その状態しか知らない胎児にとっては、それが当たり前の状態でしょう。

また、厳密にいえば、母子は身体的に繋がりを持っているわけですから
母親の受けたストレスが胎児にも影響している可能性は考えられます。
もしかすると胎児の状態から学習が始まっているかもしれませんが、
五感の機能的な発達を考慮すれば、その期間は決して長くないと思われます。

何より、誕生の瞬間に感じるであろう胎内とのギャップに比べると
そのインパクトは小さいのではないかと思います。
生まれたときに、母親と一体の状態から切り離されるわけです。

人の一生は分離から始まります。

そして、徐々に自分の身体の範囲を識別し、身体の使い方を学習していく。
脳の働きが明確になっていく時期でしょう。

そこには、乳幼児の時期だとはいえ、思い通りにならない場面が多々あるはずです。
生理的な不快感をベースにアピールをする。
もう、この時点で不快な状態がベースにあると言えます。

もっといえば、母親の胎内で感じていた一体となった状態が得られない不満は
常に感じられているのかもしれません。

胎内の安心できる感じとしての自覚よりも、
それが当たり前の状態から、それが得られない状態へ移り変わったときに
安心感や一体感とは対極にある「切り離された」感じとして、
不快な状態が自覚されるほうが一般的なのではないかと考えられます。

安心の状態が当たり前になっているから
安心ではない状態が自覚される。
だから、そこを避けて、元の状態を求めようとする。

安心を求めるといっても、不安を避けるといっても
どちらも同じものを指していると思えますが、
自覚されやすいのは、当たり前の状態からのギャップの部分としての
不満足な状態のほうでしょう。

根源的に求めているものは、当たり前に得られていたはずの一体感や安心感だとしても、
それが自覚されるタイミングは不快や不満足を通じてになるということです。


これは、いわゆる「快」の状態に対しても同様です。

分かりやすい例でいえば、人は空腹を満たしたときに「快」の状態になります。
満腹の状態で何かを食べても、そこに「快」は少ないわけです。

なお、「甘いものは別腹」という意見もありますが、
糖類が直接的にエネルギー源になるという意味では
エネルギー不足を避けるために、甘いものは多くの状況で「快」を感じさせるように
身体的な仕組みができていると考えればいいでしょう。

甘いものだって、本当に満腹の状態になったり、
ケーキの食べ放題などに行ったりしたら、多くの人は
あるタイミングから、食べたときの喜びが得られにくくなってくるはずです。

つまり、食べることで得られる「快」の状態は
空腹(エネルギー不足)という不満足な状態を回避することで得られているわけです。

食べ物を手に入れるために行動を起こそうとするモチベーションは
未来に起こるであろう空腹という不満足な状態を回避するために
「不快」な状態を感じる前から行動させるためのものだと考えることもできます。

ビジネスでお金を稼ごうとするモチベーションも、
未来にお金がなくなって生活に困る状態を避けるためであったり、
未来にお金がなくなって自分の思い通りにできなくなるのを避けるためであったり、
お金を稼ぐことで他人からの賞賛を得て
未来に人から認められない不安を感じるのを避けるためであったりするかもしれません。

「快」の状態は、「不快」を知っているからこそ、
「不快」を避けられたときに感じられるようになっているのではないでしょうか。

表面的に「快」の状態に向かってモチベーションを高めているように見える人は、
「不快」の状態に近づく前に早々と行動を始めることができて、
予測を元に日々を送ることができていると言えるかもしれません。

一方、表面的に「不快」の状態を避ける方向に行動するように見える人は、
「不快」の状態が身近に感じられ始めてきたタイミングで行動を始める。
「不快」の状態を避け始める時期が遅いのかもしれません。

「不快」として感じられる状態が同程度だったとして、
それに現状が、近づいてくるのを察知して行動を始めるわけですが、
その「不快」な状態に対して、どの程度近づくと行動を始めるかというレベルが
人それぞれ違っていると考えられます。

「不快」な感じが目の前に迫ったときに避け始める人は回避的に見えて、
かなり「不快」から離れた時点から避け始める行動ができる人は目的志向に見える。
ただ、それだけの違いのように思います。

その意味で、モチベーションと呼ばれるものが生まれるタイミングは
人によって違っているはずなんです。

病気になれば、すぐに体調を回復しようとする。
体に痛みがあれば、すぐに治療をしようとする。
それは、現状が「不快」のレベルになってしまっている意味で、
そこを避けようとするモチベーションは最も強くなると考えられます。

現時点で体に何も「不快」なものがない人が
将来やってくるかもしれない身体的な「不快」を避けようとして、
健康のためにモチベーションを上げて運動をするというような場合は、
避けたい「不快」が近くに感じられない分、ヤル気が起きないほうが普通なわけです。

むしろ、「病的な人とは関わりたくない」って言われる場面を想像して
それを避けるようにモチベーションを上げていくほうが強いエネルギーを生むでしょう。

悪習慣を断ち切る人の多くは、強烈な後悔を感じたときや、
将来に起こると予測される受け入れがたい状況を想像したときに、
強いモチベーションを働かせて、やめる決意をするようです。

思い返せば、僕の母親は「そんなことしていると皆に嫌われるわよ」
という強烈な一言で僕に社会性を躾してくれていたものです。

強い「不快」を避けようとするモチベーションは
決して明るさや楽しさを伴ったものではないかもしれませんが、
行動を起こさせるという意味において強烈ではあります。


そのとき、「不快」に近づいてから行動を始めると、
気持ちとして感じられる身体反応としては、すでに嫌な感じを自覚し始めていたりします。
順調な感じは少ないかもしれません。

「不快」が離れている段階から行動を始められると、
気分としては明るく、良い感じとして自覚できる状態でいられるようです。

一般的に、モチベーションが高く、何かに向かって進んでいくような人のほうが
明るくて楽しそうに見えるのは、「不快」を離していられるからだと考えられるでしょう。

また、動物的に考えれば、「不快」を先に予測して行動していられるほうが
より生命を維持するのに有利だったかもしれません。

「不快」から離れたところでモチベーションを高めているほうが
前向きで明るくて良いことのように思えるのも仕方がない気がします。


しかし、どちらも本質的な部分において、
同じ類の「不快」を避けようとしているという意味では違いがないはずなんです。

表面的に「快」を目指しているように見えても、
その「快」の前提には「不快」を避ける部分が含まれているんです。

自分自身の存在の危機という「不快」を避けようとする部分があるんです。

目標を設定して、それに向かって日々を過ごしていれば
間接的に「不快」を遠ざけた状態で日々を過ごせますから、
明るくて楽しそうな状態を維持できていると感じられることでしょう。
それは日々を満足して過ごす上で役に立ちます。

ただ、人間には何故か、理由がなく「快」を感じられるものがあるようです。

それは人によって違います。
芸術などは、その典型でしょう。

そのように「不快」が基準ではない「快」を生み出すものを見つけられると
人はとても幸せだろうと思います。

目標に向かって進んでいくことよりも、
そんな無条件の「快」の対象を見つけることのほうが
はるかに重要なことではないでしょうか。

cozyharada at 23:31│Comments(0)TrackBack(0)clip!全般 | NLP

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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