2009年09月23日

短期集中特訓

普段の土日や休日は、たいていの場合、セミナーが入っていますが
このシルバーウィークと呼ばれた5連休は、自分の勉強のために費やすことができました。

最初の3日間は8人だけの宿泊でのワークショップ形式。
あとの2日間は120人の講座形式。

どちらも『面接』というコミュニケーション技術を学ぶための場ですが、
扱う内容の質が違います。

一方は、クライアントの自己決定をベースに進めていき、
クライアント自身が変化していくために行う内容。
クライアントの行動や能力が変わることで、問題を解消していく流れになります。

もう一方もクライアントの自己決定を尊重しますが、
専門職としてクライアントの置かれている状況を調整していくことが目的のため、
サポートの体制を整えるための情報提供も大きな位置を占めます。

後のほうは福祉の面接ですから、場合によっては
クライアントの自主的な変化を期待するのが難しいこともあるわけです。


そうなると面接を通じて聞きだす情報の種類が違ってくるんです。
当然、質問の仕方も変わってきます。

中核となる部分に切り込んで、そこから全体の解決に導くやり方と、
問題状況の全体を把握しながら中核を見つけて、全体の調整をするやり方。

真逆のアプローチにも見えます。

もちろん、その中にも共通点があり、
どちらの方法で面接技術を磨いていっても役に立つことは間違いないでしょう。

ただ、両方知っていると圧倒的に対応の幅が広くなると思います。

というのは、両方の極化した技術の方向性が、
クライアントの質によるところがあるからです。

クライアントに力があって、自ら問題を解決していくことができる場合、
それに必要なサポートとしての面接技術は、クライアントの問題を絞り込み、
取り組みべきポイントへの気付きをもたらすことを狙うことになります。

逆に、クライアントが置かれている苦しい状況の中で、力を失い、
自らの力だけでは解決できないような状態になっている場合には、
面接を通じて状況を詳しく理解して、問題を整理して、
クライアントの気持ちを把握しながら解決の方向性を探っていくことになるでしょう。

どちらも共同作業ではあるけれども、
クライアントと面接者の頑張る部分の量と質が違うわけです。

クライアントに力がある場合には、面接者側が頑張る量は減っていきます。
クライアント自身が頑張るわけです。
そのかわり、面接者は相手の気付きを促進するための技術という
質の部分で最大限の努力をすることになります。

一方、クライアントが力を失ってしまっている場合には、
面接者が量としてサポートをしていく必要が出てきます。
積極的な力添えと、情報の把握を、面接者側が大量に努力するということです。

実際には、面接中に、心の痛みに対するケアを行うこともありますから、
その点においては両者の違いはありません。

クライアントが抱えている本質的な痛みをコミュニケーションを通じて手当てする。

これは、問題の中核を見出し、その部分に語りかける技術ですから、
中核となる部分を見つけるという意味では内容に差はありません。
…そこに至るプロセスには違いがありますが。


このようにクライアントの力によって、努力する方向が質と量で違ってくるわけです。

技術として、量を減らして質を追求するタイプの面接方法を学ぶと、
クライアントの力がある場合には的確なサポートが可能になるでしょう。
逆に、量でサポートするタイプの面接方法を学ぶと
力を失っている相手をサポートすることができるようになるはずです。

その意味で両極からのスタートだと思うんです。

ただ、「スタート」と言っているのは、どちらにも共通している部分があり、
一方の技術を磨けば、情報収集の質と量のバランスを調整するだけで
どちらにも対応できるようになっていくと考えられるからです。

実際、力を失ったクライアントを前提にした福祉系の面接技術においても、
クライアントに力がある場合への対応というのも学びます。
その時には、クライアントが頑張って自分の望む形に問題を解決していきますから
面接者が情報収集の量で努力する必要性が減っていくようです。

そして、福祉系の面接で量としても情報を集めていくとしても、
技術が高まるほどに必要とする情報の量が減っていくようにも見えます。
少ない質問で中心的な情報を集めることができるようになるわけです。

ですから、どのような方向で技術を磨いていっても
洗練された技術が辿りつく形は限りなく近いものになりそうに思えます。

福祉の面接技術を学ぶ場面で、講師の関西大学の教授が
「カウンセラーは福祉の相談援助者には必ずしもなれないけど、
 福祉の相談援助者は必ずカウンセラーにはなれる」と話していましたが、
僕には、どちらも同じことのように感じられます。

どの方向でも面接技術を磨けば、できることは広がっていくでしょう。


ちなみに、僕自身の課題としては、質を追求する流れに向いている感じがしていて、
そのためには、どうしても少人数制のワークショップが効率的に思えてきます。

福祉のグループスーパービジョンも、色々な規模で行われるようですから、
少人数制で技術的なトレーニングを交えながら研修がなされていくことを期待しています。

福祉の相談援助の仕事は、その厳しさに対して
成果が分かりにくいというのが残念だと奥川幸子先生が話していました。
それにお金を払う人も少ない、と。

ただその一方で、相談援助の仕事には
「知的な喜び」と「情緒的な喜び」がある、とも。

この喜びは、他では得られない。

素敵なコメントだと感じました。

僕は、情緒的な喜びのほうに偏りがちな福祉の世界で
堂々と「知的な喜び」と言葉を発してくれるスタンスが好きだったりするんです。

声の出し方が似ていると、考え方のスタンスも近かったりするんでしょうか。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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