2009年10月24日

風味を再現する人たち

最近発売された『ペプシあずき』を飲みました。

あずき

























僕は結構、「あずき」が好きなんです。
「こしあん」よりも「つぶあん」が好き。

パンを買うときは「あんぱん」の比率が高いと思います。
饅頭なども好きな部類。
「あずき」の豆自体の風味が強く残っているものに惹かれます。

で、この『ペプシあずき』ですが、それなりに「あずき」っぽさが出ています。
和風かと言われると感じ方は人それぞれでしょうが、「あずき」の感じはあります。

全体的な味の構成は「ドクターペッパー」に似た印象。
それに「あずき」アイスを溶かしこんだような味だと想像すると良いかもしれません。


ただ、原材料名のところを見ても、「小豆」の文字は一切見当たらないので、
完全に香料を添加する配分だけで「あずき」風味を出していると想像されます。

こういう風味の再現の作業は、きっと地道な試行錯誤の上にあるんでしょう。

なぜなら、人間の嗅覚は非常に繊細で、ホンの少しの量があるだけで
敏感に検出できるものがあるからです。

人間が匂いを感じるのは、空気中に蒸発してきた分子が
鼻の粘膜の中にある受容体細胞と結びついたときに神経が活性化されるため。
匂いは、その物質の分子がセンサーにくっついたときに感じられるわけです。

ですから、揮発性の高いものほど、一般的に匂いやすいと考えられますが、
空気中にありふれていて無害なものには、匂いを感じないものもあります。
それはセンサーがないということ。

逆に、匂いがなくても有害なものもありますし、
好ましい匂いと判断されやすい物質もあります。

そして、少ない量でも匂いを強く感じるものもあります。
有機酸の類は揮発性もありますが、微量でも非常に臭く感じられます。

お酢のツーンとする匂いは強烈。
有機酸の匂いは腐敗と関わっているせいでしょうか、
人間はかなり敏感に感じられるようです。

そして、化学薬品として、その匂いの強さで知られているのが『酪酸(butyric acid)』。
試薬瓶は、とても厳重に梱包されて、匂いが漏れないように工夫されています。
銀杏の匂いは酪酸が主成分だそうです。

これもやっぱり人間には有害。
犬は人間の1000分の1の量でも感じ取れるとか。
犬の嗅覚は人間の1000倍というのは、こういう意味です。

ちなみに犬は、足の裏の匂いに含まれる
こうした微量な酸の匂いを嗅ぎ分けていると言います。

人間も犬ほどではないにせよ、かなり鋭敏に感じられる匂い成分があるということです。

ということは、成分として含まれる量によってのみで
匂いの強さが決まるわけではないと考えられます。

「あずき」の風味を再現しようとしたら、
「あずき」を溶かした液の成分を分析して、
沢山含まれるものだけを混ぜれば良いということではないはずです。

少量でも匂いの中心になるものがあるかもしれない。

液体中に含まれる物質の濃度を測定する装置として HPLC が一般的に使われますが、
その感度は決して高いものではありません。

少なくとも、僕が実験で使っていたころはそうでした。
分析装置のキャッチコピーに「人の嗅覚並みの高感度!」などと書かれるぐらい
人間の嗅覚が持つセンサーの感度は高いんです。

そして、測定装置で測れる濃度の基準は、人間の嗅覚とは無関係ですから、
人間にとっては微量でも重要な匂い成分が、
装置の測定方法では調べにくいということもあるでしょう。


なので、「ペプシあずき」の「あずき」風味を再現するときには
「あずき」に含まれる成分を全て測定して、
その成分を、そのままの量で配分すれば良いという単純な話ではないはずなんです。

機械では分かりにくいのに、実際の匂いとしては重要な成分を見つけなければいけない。

有名な話としては、加齢臭の主成分として知られる『ノネナール』が
装置で測定しても特定しにくかったところを、
資生堂の一人の研究員が「この匂いは多分、これだろう」と当たりをつけて
『ノネナール』の存在を特定したということもあります。

達人の嗅覚は、機械で測れる範囲を遥かに上回っているんです。
人間の能力は文字通り「計り知れない」わけです。

きっと「あずき」風味も、開発に関わった人たちが
「ああでもない」「こうでもない」と香料を混ぜ合わせ、
試行錯誤の末に「この組み合わせが一番あずきっぽいでしょう」と
結論付けて製品化に至ったんだろうと思います。

そんなプロセスを想像すると、
美味しいかどうかという消費者にとって最もシンプルで本質的な基準だけで、
味の評価をしてしまうことに少し抵抗が出てきたりもします。

なので、僕は『ペプシあずき』を飲んだ時の最初の感想が、
「あぁ、良くできているなぁ」だったんでしょう。

それは別に無愛想なわけでも、素直さに欠けているわけでもない気がします。

裏側にある開発のドラマを想像するのも、1つの楽しみ方かもしれません。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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