2010年02月03日

セザンヌのリアリティ

セザンヌは凄い。

おバカキャラで有名なのはスザンヌ。
僕が言いたいのは、画家のポール・セザンヌです。

芸術家は一般的に、人が一般化の作用によって作り上げている
強調されたパターン記憶の特徴をサブモダリティのレベルで捉えるのが上手いですが、
セザンヌも例外ではありません。

(一般化で強調されるサブモダリティに関しては、ここでは省略しますが、
 「無意識に訴えかける特徴付けが上手い」というようなニュアンスです)

セザンヌの場合には、画面の中に遠近感を閉じ込めるのが圧倒的なようです。

といっても、一点消失をベースにしたような明確な遠近法が見て取れるようでもなく、
レオナルド・ダ・ヴィンチによって生み出された空気遠近法
(遠くのものが青白くボヤけて見える)を使っているのでもありません。

どちらかというと、ザックリした描き方。
リアリティを追求した細かい描き込みではありません。

でも、その画面には強烈な奥行きが感じられます。


それは認知科学的に解釈すると、人間が奥行きを感じるために利用している
見た目の特徴づけの仕方が絵の中に反映されているからと言えます。

遠近法というのは、まさにその奥行きを判別するために
人間が一般化して作り出した見分け方の基準を
平面である絵の中に反映させたものと考えられます。

セザンヌは、まさに自分の目の中に映った景色を
そのままキャンバスに移し替えたような描き方をしているように見えるんです。

その見え方のポイントは、中心視野と周辺視野の描き分けにあるはずです。

セザンヌの絵は、見ていると画面の中心に目がいくような動きを感じます。
自然と画面の中心を見てしまう感じ。
そこには画家の視界がそのまま表れているようです。

一般的に絵を描こうとすると、キャンバスの範囲を全て目で追いかけて、
部分部分を集めてキャンバス全体の絵が出来上がるものでしょう。
多くの画家の絵は、そのように描かれています。

つまり、一般的には画面全体を中心視野(視界の中心)で追いかけて
目を色々な範囲に動かしながら細部を描き込んでいく手順をとるわけです。
人物画を描くのであれば、手を描くときには手の部分に注目し、
首を描くときには首の部分に注目する、というように。

ところが、セザンヌは違います。
セザンヌの絵からは画面の中心だけに視点があって、
画面の周囲は周辺視野で見られたままに描かれている雰囲気があるんです。

まるで目に映った一瞬を切り取ったように。

セザンヌは、肖像画を描くときにはモデルが動くことを極度に嫌ったそうですが、
一瞬の視野に映った映像をキャンバスに移し替えるには当然のような気もします。


それが、どのような描き方に表れているかを考えるには
先に自分自身の視野に映るものに注意を向ける必要がありそうです。

普通、視野の中心はピントが合って、明るく鮮明に見えるはずです。
そして目線を動かさずに視野の端のほうに注意を向けると
周辺にいくほど映像はボヤけて形もハッキリしなくなり、
色も薄ボケた感じがしてくるものだと思います。

中心部に円に近い形でハッキリした領域があり、
それが放射線状に見ずらい領域が広がっていく感じと言えば良いでしょうか。

その中心視野と周辺視野の見え方の違いは、中心視野に意識を集める、
つまり何かを凝視するほど強調されてくるようです。
ズームインして見る感じにすると、他の部分と見え方が違うことに気づけるでしょう。

セザンヌの絵には、このような中心部と周辺部の描き分けがあるように見えるんです。

画面の中心を凝視するようにズームインしていくと、
画面全体が急に奥行き感を伴ってリアルに感じられてくる。

そして同心円上を広がっていくように不鮮明になっていく具合も
周辺視野での見え方を感じさせます。

セザンヌの絵は詳細には描かれていませんが、
視力の悪い僕がメガネをかけずに同じ景色を見たら
まさに絵の通りのような見え方をするのではないかと思えます。


特徴が顕著に出ているものを紹介します。

 ブログで他のサイトの画像を転載していいものか、僕には分かりませんので
 念のためリンクをはるまでに留めておきますから
 是非、リンク先の画像をご覧いただきたいものです。


まずは、こちらの絵
セザンヌが良く描いた「サント・ヴィクトワール山」です。
(http://www.mets-art.com/blog/2009/10/blog-post_12.htmlより)

山を見たくなるようですが、山よりも少し手前の画面中央に視点を合わせて
その部分を凝視してズームインするような気持ちになると奥行きが深まると思います。

僕の場合には、過去に自分が見てきた山の見える光景が自然に脳裏によみがえり
広大な景色を見たときに感じる胸の広がる感覚まで戻ってきます。

ある山の景色の中に、山の見える広大な景色に共通する特徴が盛り込まれているために
見ている人の中の景色の記憶が引き出されると考えられます。

そして、次がこちらの絵
「ペール・ラクロワの家」として知られる風景画です。
(http://jcapacity1.exblog.jp/i5/2/より)

これは、もう典型的なズームインの視点で描かれたものでしょう。
中央部に黒く塗りつぶされた窓がありますが、そこを凝視していると
その中を覗き込もうとしているような気分になってきます。

なんだか、その家の中にいる誰かのことを想っているような、
そんな雰囲気さえ感じられるのではないでしょうか。
画面の中の世界に吸いこまれていきそうな気がします。

どちらの絵も、画面中央部の色合いや明るさ、鮮明度が
画面周辺に行くほど微妙に落ちていくことが見て取れると思います。

ハッキリ見えている部分はハッキリと描き、
ハッキリ見えていない部分はハッキリと描かない。

このシンプルな描き分けが、現実的に我々が目にしている世界の見え方を
そのままにキャンバス上に移し替える技術だったんだろうと考えられます。


最近では、テレビゲームなどでプレイヤー目線の三次元スクロールのものがありますが
(「バイオハザード」シリーズの中にもあるようです。シューティングゲーム・タイプ)
これは、画面全体が中心視野のように鮮明になり過ぎているので
実際の見え方と違っている印象がぬぐいきれません。

どんなに画面に映り込む映像をリアルにしても、リアリティが無いんです。
画面が激しく動くと酔ってしまうような感じになるのも
全部が中心視野だけの鮮明な見え方で表現されているからです。

人間は目をスピーディーに動かすと、視野の中心部分は速く動いても
周辺部分は意外とゆっくりというか、動きが少なく見えるものです。
そういう補正が働いている。

本を読むときに目で文字を追っても、本の位置が上下して見えないのは
この周辺視野部分が動きにくいように補正されているからです。

プレイヤー目線をリアルに表現したいのであれば
画面に写る範囲を思い切って広げ、その代わりに周辺視野部分の鮮明度を落とす
というような工夫が効果的でしょう。

自分たちが、実際にどのように世界を見ているのか。
当たり前に見ているだけの状態では気づかないことに意識を向けられる人は、
描写できるもののリアリティが上がっていくはずです。

リアリティは、細かく描くだけで伝わるものではないんです。
細かさはリアリティを感じさせる要因の1つではあります。

リアリティを感じさせる要因をどのくらい盛り込んで表現できるかが、
見ている人に、その世界の中をリアルに感じさせるポイントなわけです。

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
おしらせ
 ◆ セミナー情報 

New!

《コミュニケーション講座》
 〜人を育てる指導力〜

【日時】 
  2019年6月16日(日)
   10:00〜16:30


【場所】 
  北とぴあ 601会議室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《瞑想講座》

【日時】 
  2019年6月22日(土)

  午後の部 13:30〜16:30
  夜間の部 18:00〜21:00

【場所】 
  北とぴあ 第2和室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《怒りの取り扱いマニュアル》
 〜期待の手放し方と
  ゆるしの技法〜


【日時】 
  2019年7月6日(土)
     7月7日(日)
   10:00〜18:30


【場所】 
  滝野川会館

   JR上中里駅より7分
   JR駒込駅より10分
   南北線西ヶ原駅より7分

詳細はこちら>>
次回未定


 ◆ 過去の講座 

《新カウンセリング講座》
 〜まとめと実践〜


当時の内容はこちら>>


《勉強会》 

【テーマ】 変化の流れを考える

当時の内容はこちら>>
次回は未定



 ◆ お問い合わせ 
  技術向上、
  コンサルティング、
  スーパーバイズ、
  執筆・講演…

  諸々のお問い合わせはこちらへ>>



ホームページ
バナー1


プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
Archives
最近のコメント
QRコード
QRコード