2010年02月17日

光の画家

芸術家はサブモダリティに敏感だと感じます。

サブモダリティというのは、五感で識別する要素のこと。
視覚であれば、色とか明るさとか、大きさ、形など。
聴覚であれば、音の高さ、音色、トーン、リズムなどを言います。

なお、大きさや形というのは、まず先に色の識別があって、
その色で他の部分と区別される領域に対して認知できるものです。

形を識別するということは、他と区別された意味のある「まとまり」を
その時点で意識しているということ。
背景とは区別されるものだと分かっていることになります。

ちなみに、音の場合には視覚よりも遥かに多くの情報量から
「まとまり」を感じられるといいます。
楽譜で見て規則性を見つけられない人でも、音楽として聞いてしまえば
そのリズムやメロディーの規則性が実感できる、と。


我々は日常生活で言語を利用していますから、
何かを目にしたり聞いたりしたときにも、それを言語に変換して理解するものです。

だからといって、言語化するときに意味づけがされるわけではない
と僕は考えていますので、その辺は一部のNLPの流派とは相容れない部分ですが。

意味づけは、対象の中の特定のサブモダリティを捉えて、
その対象を認識した瞬間に、記憶の中からゲシュタルトが立ちあがって
そのゲシュタルトの持つ印象によってなされます。

花を見るときには、その色と形というサブモダリティの組み合わせが知覚されて、
その「花」としての特徴的なサブモダリティの組み合わせに当てはまる記憶が探索され、
1つの意味を持った「まとまり」(ゲシュタルト)と対応させるようにして
目の前の花を「花」という意味に当てはめることになります。

その「花」のゲシュタルトの中には関連する情報として、
文字としての「花」や「華」、音としての【 ha - na 】なども含まれますから
言語的に説明すれば「花だ」と認識されるわけです。

意味のある「まとまり」として識別された瞬間、
つまり何かの仲間の中にグループ分けされた瞬間に、
そのグループの一員としての意味が判断されているということです。

幼稚園でのゲームみたいに、色々な絵の描かれたカードを見せられて
仲間はずれを探す感じに近いでしょう。

例えば、自動車、自転車、飛行機、船、電話、電車あたりを見せられると、
「他は乗り物だけど、電話だけ乗り物ではない」と区別されます。
ここで「乗り物」というゲシュタルトに当てはめられて意味づけがなされています。

こうした作業をもっと五感に近い情報のレベルでも人間は行っているんです。
「この色と形の組み合わせは花だな、こっちのは土だ」という具合に。

ただ、言語化するのは、そのグループに対応する言葉を意識した場合ですから、
意味づけは言語化の前に起こっていて、
意味に対して言語が当てはめられている、と考えるほうが正確でしょう。


そうしたゲシュタルトは経験によって作られますから、
感情的に不快な体験を伴ってきたゲシュタルトに分類されると、
その不快感が意味づけのなかに付け加えられます。

僕は、幼少期に風邪を引いている状態で出前のカツ丼を食べたとき
その玉ネギの半生の歯ごたえで戻してしまった経験を持っています。

それ以来、僕にとっての「玉ネギ」のゲシュタルトには、
ジャリッとした歯ごたえと吐き気の感覚がセットになっていました。
玉ネギの意味づけのなかに、最初から「苦手」な意味づけも含まれていたわけです。
(今はもう大丈夫ですけど)

つまり、ゲシュタルトの中に含まれている身体反応の記憶が、
その対象の意味づけに対しての快/不快の判断に大きく関わっているということです。

ところが、芸術に関しては、サブモダリティの組み合わせ自体が
記憶の中から特定のゲシュタルトを引きだす前に、
直接的に身体感覚を動かすことがあります。

それは芸術に限ったことでなく、自然に対しても同じような効果がありそうです。

見た瞬間、聞いた瞬間、
その場に行った途端に「ウワーッ」「ハーッ」と息を飲むような感動を覚える。
それは過去の意味づけとは無関係に、直接的に身体に訴えていると思うんです。

だからこそ、自然や芸術が時代や文化を超えて、人に感動を与え続けているのでしょう。

芸術と自然と、どちらが先に存在するかと言えば、
それは自然のほうだろうと思いますから、
ある程度、人は自然から身体が感動的に突き動かされる感覚を
別の活動を通じて表現しようとしてきたのではないでしょうか。

それが芸術ではないか、と。

なお、ここで言う「自然」には、人体の仕組みのようなものも含みます。
人が特定の音を聞くと体に反応が出るようなことは、自然の作用として捉えています。

で、そうした人の身体反応に直接的に訴えかけるような自然の特徴を
五感の情報(サブモダリティ)としてピックアップして
それを表現することができる人たちが「芸術家」として
多くの人々を魅了してきたと思うんです。


以前にセザンヌの絵の特徴について書きましたが、
それは人間の周辺視野と中心視野の違いを描き分けたところに
ポイントがありそうだ、という内容でした。

写真で取ってしまったり、テレビ画面に映し出された映像では
画面の全ての領域がそれなりに均一な様子で描かれます。

実際にはレンズの歪みの影響はあるはずですが、
それは人間の目が中心視野と周辺視野で見分けるときの特徴とは別物です。

映画館の大画面で見ると迫力があるのは、
画面の端の部分を周辺視野で捉えられるようになって
その映像が実際に目の前にあるときの感じに近づくから、というのもあるでしょう。

セザンヌは、特に人間が中心視野の範囲を狭くして見ている状態、
つまり何かを集中してズームインするように捉えているときの見え方の特徴を
サブモダリティのレベルで敏感に捉えて絵に表わしたと考えられます。

セザンヌの不思議なまでの立体感と吸いこまれるような臨場感は
肉眼が捉えている視覚情報を正確に再現したからだと思います。


人間の視覚は光を捉えているだけですから、その光の情報の組み合わせによって
色合いや形、表面の質感、奥行きなどの特徴を区別しているわけです。

なので、光というのは人間にとって大きな意味を持つものだろうと考えられます。

古くから宗教画などでは、聖者の周りに後光を描くことが多いものですが、
これも人が光の特徴を利用して意味づけをしていることの典型例です。

どういうわけか、実際に光を放っている人というのはいないのに、
多くの人が大切な人や尊敬する人を思い浮かべると
その人の顔の周りだけ明るかったり、淡いスポットライトが当たったようであったり、
何かしらの光による強調がなされているものです。

これは「大切な人」とか「尊敬する人」とかいったゲシュタルトの中に
光の情報が組み込まれていることを意味します。
ゲシュタルトの強調のされ方の中には光を使ったものが意外と多いようです。

これは、生理的な反応が視野や焦点に違いを及ぼすからだろうと考えられます。

楽しい気分、ウキウキした気分、高揚している状態…、
そんな時には目の前が明るくなるような感じになることがあります。
(敏感に視野の変化を自覚している人に限って実感できることかもしれませんが)

大好きなもの、興味津津なものには、焦点が絞られて
中心視野だけで対象を凝視するようなこともあるでしょう。
背景が抜け落ちて見えるような感じです。

すると、主役とか大事なものというのは、繰り返しの経験の中から
中心視野でハッキリと捉えられていて、背景よりも明るく捉えられる、
という特徴が一般化されていくことになります。

逆にいえば、そのように視野の中心で、他よりも明るくハッキリと映るものは
「大事なもの」という意味づけに当てはめられるわけです。

高揚した状態で視野がパァーッと淡く明るくなる印象が一般化されれば
そうした光の特徴が示された対象には「高揚感」の意味が当てはめられるでしょう。

気分や感情に伴う生理状態が引き起こす視野や焦点の変化が
光の特徴として一般化されるために、光を使った印象表現が可能になる、
と考えられます。

舞台でスポットライトが当たった人物を主役だと認識するのは
元々のゲシュタルトとして「主役」という意味に「光が当たっている」特徴を
含んでいることが多かったからだろうと推測します。
その特徴に敏感だった人が発案したのではないか、と。


で、この光のサブモダリティの特徴で識別されている印象を巧みに表現したのが、
あの有名なレンブラントだと思うんです。

レンブラントの絵には独特の光の当たり方があります。
いわゆる正しい光源の方向とは違うスポットライト的な光もあったりする。
光の当たり方そのものにも色々な違いがあるようです。

有名な「夜警」という絵がありますが、
これなどは典型的に光で強調がなされている作品です。
(http://www.wallpaperlink.com/info/fineart.htmlより)

光の印象が人の内面に影響を与えることを敏感に察知したのでしょう。

ちなみに、マンガ家で光の表現を上手く利用しているのは
「シティハンター」でおなじみの「北条司」氏だろうと思います。

興味があったら見てみてください。
セリフがなくても感情が読み取れる貴重なマンガ家ではないでしょうか。

cozyharada at 15:01│Comments(0)TrackBack(0)clip!NLP | 全般

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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