2010年02月19日

正しくない

個人的なスタンスとして、全ての情報を整合性を持って理解したいという願望があります。
ストレングス・ファインダーで「着想」が一位になるのも当然でしょう。

全ての情報に辻褄が合っているかが重要なんです。
矛盾したところがあると反発が生まれます。

その一方で、科学的な視点も含めて、僕の中には
「100%正しいというものはない」という考えが強く根付いています。
正しいかどうかは断言できないと考えているんです。

化学においては、原子核の周りに電子が存在すること自体が
もう確率論でしか説明できません。

中学校のときに習うボーアの原子のモデルは不正確な模式図で
原子核の周りを電子が回っているというのとは違う形で説明されます。
電子が存在する確率の高い場所があると考えるんです。

化学反応が起こるのも原子核や電子の存在する場所の確率で説明されます。
もう少し大きな視野で見ると、溶液の中に物質が溶けている状態も
厳密に均一なわけではなく、動き回っている物質がいる場所が
平均的な確率として満遍なく散らばっている可能性が高いだけなんです。

物質同士が化学反応を起こすときも、たまたま近づいた物質同士が相互作用するので
反応の起こりやすさも確率でしか説明されないわけです。

そのように化学反応そのものが確率論である上に、
化学反応の集まりである生命活動は、その構造の中に
さらに不確定な仕組みを多く含んでいます。

脳の神経細胞の電気的な伝達の仕組みは、かなり不確定な仕組みと言えるでしょう。

まぁ、そうした不確実性が人間らしさを生み出していると考えられていますし、
そうしたランダムな部分が人を一定ではない状態にして
柔軟性を生み出すキッカケ作りに役立っているのではないかと思います。


ということで、僕は「正しい」という概念を
「最も整合性のある形で全ての情報を説明できる仮説」と捉えています。

「100%正しい」というものはない、と。

ですが、「正しくない」ものはあると僕は考えています。
「正しくない」「間違っている」という概念は、
「他の情報と整合性が取れていない」「矛盾がある」として捉えているんです。

例えば、NLPやヒプノセラピーの中で、
インナーペアレンツに対して取り組む内容があります。
(これら多くの場合のインナーペアレンツという発想自体が僕には違和感がありますが)

心の中の親とコミュニケーションを取るために、
自分のイメージの中で過去にさかのぼっていきます。
自分の誕生の瞬間や、胎内での体験をイメージの中で再体験する方法がとられます。

このとき、受胎から誕生までの間のイメージ誘導の言葉として
「今、あなたは1つの細胞です。細胞分裂をするにつれて…」
などという表現がなされたりします。

自分の胎内での成長の過程をイメージさせるわけですが、
一般に「受胎」というのは「妊娠」が成立した状態を言うらしいので
着床のプロセスが完了した段階を示すはずです。

受精卵は確かに1つの細胞ですが、そこから子宮内膜まで辿り着くのに約2日、
そこから着床のプロセスが進み、胎盤が形成される準備が整うまでに何日もかかる。
その間、細胞分裂は進んでいますから、「受胎」した時点で
細胞の数は1つではないわけです。

ということは、受胎直前の時点をイメージさせて、そこから受胎の瞬間に入り
誕生までのプロセスをイメージで進めていく誘導のなかで、
受胎の場面に入ってから「あなたは1つの細胞です」というのは
「間違っている」と判断します。

別に、インナーペアレンツという取り組みだけをする上では
そのような言葉の内容には問題はありません。
それで上手くいくなら構わないでしょう。

でも情報としては「間違っている」んです。

この誘導の仕方で良い体験ができて、取り組んだ結果が役に立つのであれば
その人にとっては意味のあることですから、それを否定することはしません。

そういう体験をしたという人の話を聞いたら
「それは良かったですね」と思うだけです。

ただ、そうした手法を広く伝える側の人間が、「間違った」情報を含んでいる場合には
僕はそのことに対して否定的な反応をします。
反感を覚えます。

なぜなら、受胎という状況を具体的に詳しくイメージできるような知識を持った人に
そのような誘導の言葉がけをした場合には、体験をしている本人のイメージと
違った内容を言葉にしている可能性が出てくるからです。

「間違っていない」情報を既に持っている人に対して
一致しない情報を言葉として伝える場合には、その人の体験を妨げるリスクがあります。


個人の体験にとっては「間違っている」かどうかは問題ではありません。
僕の中の情報と矛盾する話を聞いても、その人にとって役立っている考え方であれば
僕がそれに反発することはないつもりです。

ただ、広く情報を発信していく立場の人物が
偏りがあって他の情報と辻褄の合わない説明をしているとしたら、
僕はその内容を「間違っている」と判断します。

場合によっては、「えー、それは違うんじゃないの?」と言葉にもします。

その意見や説明が他人に影響を与えているからです。
その「正しくない」場合が、デメリットになる可能性を考慮して欲しいんです。

説明をしている本人にとって役に立ってきたものでも、
人によって状況によって違うことがあるはずです。

学問の場は、前提として論理的な矛盾を排除するものですから
「間違い」として批判することさえ許されます。
そうして「最も上手く説明できる仮説」に近づけていくわけです。

それは言い換えると、全世界の人の頭を利用して
1つの上手い仮説を吟味していく作業ということです。
話題に上る内容は、話をする一人の中から出るものではなく、
全員の目の前に客観的に出されるものだと言えます。

でもセミナーや講演というのは、趣旨が違う。
話題に上がる内容は、講師の中から出てきます。
全員が対等かつ客観的に内容を吟味する場ではありません。

なので、参加者の立場として「正しくない」ことを指摘すべきではないと思います。
どんなに反発が沸いても、ある程度のガマンをします。

講師の内側から出る内容なのですから、
最初から「私はそう思います」とか
「こう考えると役に立つことがあります」とか、
マイルドに表現してもらいたいものだと感じます。

一般論として「正しさ」を主張されると反発が沸いてしまいますので。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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