2010年03月25日

分かりやすさの話

分かりやすい説明と、分かりにくい説明の違いを感じたことは誰にでもあると思います。

ただ、ここでいう「分かりやすさ」が、
人によって違う捉え方になっている場合もあるはずなんです。

大雑把に分けると、少ない言葉で要点だけを「分かりやすく」まとめた説明と、
難しい言葉を使わずに「分かりやすい」言葉でなされた説明、
具体的に詳しい情報があって「分かりやすい」説明、
などでしょうか。


そもそも「分かる」とは、どういう状態なのかを共有しないと話にならないと思いますが、
おそらく多くの場合において
 「具体的な体験内容と説明の言葉の内容が繋がる」
ときに「分かった」という感じになるのではないかと考えられます。

ですから、「分かりやすい」説明にも2種類あって、
最初から体験的に実感している内容を少ない言葉で整理するケースと、
体験的な実感がない新しい考え方としての内容を
体験の実例とともに結びつけながら理解していくケースとに分けられるでしょう。

前者は新しいことを学んでいるプロセスではなく、
本人の中で体験的には納得できているが言葉になっていない内容を
上手く他の人から言葉で説明してもらった状態で起きるでしょう。

実際には分かっていたはずのことを的確な言葉で説明してもらう。
そのときに、その説明に対して「分かりやすい」と感じるわけです。

後者は、体験的に納得できていない、触れたことのない考え方を取り入れるときで、
新しいことを学んでいるプロセスと言って良いでしょう。

そのときには、整理されていないけれど体験そのものはしたことのある内容を事例に、
そのことへの新しい意味づけがなされていきます。
これによって、新しく学ぶことの意味が分かるようになる。

もし、全く体験もしたことがないような場合には、
たとえ話を使って、同じような意味合いを伝えることもあるでしょう。
この「たとえ話」の選び方も「分かりやすさ」の1つの要因になると思います。


ここで、「前者」や「後者」という言葉を使いましたが、
このような言葉遣いは小学生に「分かりやすい」言葉ではありません。

言葉の選び方として馴染みがあるものを使ってくれるかどうかも
説明を受ける側からすると「分かりやすさ」の要素になるはずです。

初めての内容を学んでいくときには、体験と結びつけながら
新しく自分の体験を意味づけしていく方法を知る必要があります。
新しく学ぶというのは、物事を分類するときの視点を増やすということでもあるんです。

新しく学ぶための説明の「分かりやすさ」には、
体験の内容が典型的でシンプルなものになっているか
という部分も重要になるでしょう。

実際には複雑な場面があって、一口に説明するのは難しいことがあっても、
それには触れずに一般的な例だけで説明する。

中学校ぐらいの参考書でいうと、難しい練習問題がないようなものです。

本当は詳しく分けていくと色々と分類して理解すべき情報があるけれど、
その部分まで説明してしまうと最初から情報量が多すぎるので
一般的で典型的な情報だけに割り切ってしまって説明をする。

こういう「分かりやすさ」が入門的な分かりやすさと言えるでしょう。
当然、このときには先で学んでいく専門用語は使いません。

なので、初めて学ぶときの「分かりやすさ」には
情報を大雑把にまとめてしまって、典型的な事例だけに集約して、
専門的な言葉を使わずに、少ない言葉で説明する、という方法が役立つようです。

多くの入門書は、こうやって書かれているはずです。


そこから理解を深めていくためには、事例としての情報量
つまり体験の量を増やしていく必要があります。
細かく状況を分けていったり、根拠になる情報を説明するようになります。

本来は、ここまでの情報が繋がって「分かった」ということになりますが、
このためには情報量が増え過ぎてしまって混乱が生まれやすくなるというリスクもある。

専門書は詳しい分、繋げていくべきシンプルな説明が見えなくなってきて、
「今読んでいる説明が何のための説明なのかが分からない」
というような状態にさえなってしまうことがあるようです。

このような状態になってしまった人は、少ない情報で言い表わされる
「要点」や「ポイント」だけをまとめた説明を好みます。

それによって、複雑になった情報を、もう一度整理できるからです。

一方で、専門書の中には、事例的な情報の詳しさではなく、
専門的な用語同士を関連づけるような詳しさで説明がなされるものもありますが、
こちらの場合には、用語の部分で引っかかってしまう場合があります。

一般的な話ばかりで具体例がないのに、説明だけが長い。
これも難しさを感じるケースでしょう。


説明が「分かる」ためには、その意味を
自分自身の体験という事例と結びつけるか、
文字で与えられた事例と結びつけるかしていく必要がある。

説明を受けている過程で、自然とそのプロセスが進行していくようになっていると、
その説明は「分かりやすい」ということになるはずです。


つまり、新しいことを学ぶときに「分かりやすい」のは、
まず、典型的かつ一般的な事例を具体的に示しながら
専門的でない言葉遣いで説明される場合、というケースが多いと思われます。

入門書的な「分かりやすさ」が最初に求められるわけです。

新しいことを取り入れていく段階で情報量が多すぎるのは
説明そのものの「分かりやすさ」とは無関係に
説明を受ける側が情報を整理しきれるかどうかという部分でリスクがあるわけです。

詳しくて、かつ「分かりやすい」というのは
新しく学んでいく初期の段階ではハードルが高いこともあるでしょう。
一度、大まかな内容を「分かった」人に対して提供されると
効果的な説明になると考えられます。

そうして情報を詳しくしていくと、記憶して整理をするところで混乱が起きてくるので
改めてポイントになるところだけを説明して整理しやすくする、
という方法が役立つことがあります。

この「少ない情報でポイントだけを整理する」というタイプの「分かりやすさ」は
体験学習や具体的な事例などで情報量が増えた場合おいて
初めて効果を発揮するものだと考えられます。

「なんとなく分かっていた」ことを言葉で
もう一度整理してもらうときの「分かった」の感じです。

流れとしては
  典型的な事例とともに、一般的な言葉で説明をする(概要説明・入門的)
 →複雑な具体的事例、体験学習、根拠になる周辺情報などの詳しい情報提供をする
  (詳しい説明・専門的) 
 →ポイントだけを絞って「まとめ」の説明をする(要約・情報整理)
という具合でしょう。


この辺りは、学校の勉強の流れと近いものがあるようです。

中学校の歴史で習うのは簡単な出来事の流れですが、(概要説明)
高校ぐらいからは、1つの歴史的イベントを詳しく学びます。(詳しい説明)

1つの物事に対して、結びつける情報量を増やしていくわけです。
これが「詳しく」ということだと言えます。

ただ、詳しくばかりで進んでいくと、
どの内容が、何時代の、何の出来事のものか
混乱してきてしまうことがあります。

そこで歴史年表みたいな要点だけを示したものを使って
増えた情報量を分類しなおして整理するのが役立ちます。(要約)


ということは、初めて何かを学ぼうという場合にとっての「分かりやすさ」と
詳しく学んでいきたい段階での「分かりやすさ」と
色々学んでみて整理をする段階での「分かりやすさ」では
求められるものが違うということです。

少ない言葉で要約して説明してもらえるのが分かりやすく感じるのは
それまでに色々と経験をして情報量を増やしている場合です。

「上手く言い表している」と感じられるのは
すでに情報量を蓄積して分かり始めている段階だということです。

色々と勉強してきて、実体験も積んできて、
その段階で聞いた誰かの「分かりやすい」説明というのは
要点をまとめた説明になっている可能性が高いでしょう。

そのタイプの説明が「分かりやすい」と思っていても
同じ説明が初めての人に伝わるかは分かりません。
むしろ伝わらない場合のほうが多いと考えられます。

NLPのワークショップなどは、日常的な生活とは離れた内容を扱うことが多いですから
かなりの場面において、新しい・初めての内容を説明されるわけです。

それを説明する側は、少なくとも一通り体験していたり、
色々なところで情報量を増やす努力をしてきたりしているでしょう。

その人にとって「分かりやすかった」説明と同じ説明の仕方をすれば、
それは要点だけを説明することになり、
説明を受ける側には内容を実感することさえ難しくなってしまいます。

すると「まぁ、とりあえず体験してみましょう」ということになる。

逆に、いきなり詳し過ぎる情報提供をすれば混乱してしまう。

となると、まずは入門的な「分かりやすさ」を重視するのが
効果的になりやすいだろうと考えられますが、
そればかりだと、底の浅い内容になってしまうかもしれません。

結局、相手に合わせて説明の仕方を工夫する必要があるということです。

そのためにも、相手に必要な情報の種類を見極められるように
自分の中で情報提供の仕方を区別しておくことが大事だと思います。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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