2010年03月29日

人材のポイント

今年の新卒大学生の就職率は非常に低いそうです。

一方で、企業の採用者数そのものは減っていないという見方もあるので
多くの大学生が、起業や自営ではなく安定を求めて
企業に「就職する」傾向が上がってきているのかもしれません。

企業側として見たときに、何を求めて採用を行っているのかを
明確に自覚しているところは、どれくらいあるのでしょうか?

本当に即戦力で活躍してくれる人材が欲しければ
中途採用やヘッドハンティングを活用するという選択もあるはずです。

それでも大手企業は、毎年、大人数の新入社員を採用する。
そこには、即戦力として活躍できる能力以上のものに期待があるように思えます。

なにより、日本の企業の多くは、配置転換を行うようですから
特定の仕事でのみ活躍できるような能力を求めているわけではなさそうです。

最終的には本人の特性に合わせた道に絞り込む計画はあるのでしょうが、
色々な視点を持つため、能力開発のために、人事異動というのがあるのかもしれません。


そんな中、2004年に設立されたばかりの秋田県にある「国際教養大学」は
企業への就職率が非常に高く、大手企業からも人気が高いという内容が
テレビで放送されていました。

国際教養大学は、大学構内での日本語が禁止、英語を共通語にする仕組みで
「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」スタイルを取っているそうです。
一年間の海外留学も必修になっているという話。

早稲田大学にも国際教養学部というのがありますが、
こちらも、ほとんど全ての講義が英語で行われ、海外留学のあるようです。

いずれにせよ、英語を使って考え、英語でディスカッションするという仕組みは
語学力としての英語力をつけるには確実なやり方でしょう。
実際に英語で会話をしている人たちは、そうしているのですから。

また、専門的な学問の内容は、英語の論文として発表されていきますし、
国際学会が英語で行われるというのも事実です。
その意味では、英語で学ぶのは最先端を学ぶためにも有効なことでしょう。

もちろん、高校まで英語を全く話せなかった人が
急に大学からの内容を全て英語で学ぶということになれば
専門的な知識を身につけていく段階では不利になる可能性もあります。
一般教養の段階で、英会話の能力を十分に上げておく必要がありそうです。

実際のところ、「国際教養」という名称をつけているところでは
専門性よりもグローバルな教養に力を入れているようですから、
英語を武器に国際的な活躍ができる人を育てようとしているのかもしれません。

番組中で紹介されていた学生や、卒業生たちは
世界を飛び回る仕事や、国際交流に憧れを抱いている人が多いようでした。


ただ、自分の過去を振り返ってみたとき
はたして大学生の時点で何を考えていただろうか
という疑問が沸き起こります。

いくら自己分析をさせてみても、いくら学生時代のアピールをさせてみても、
いくら大学での研究業績を話させてみても、
社会に出てから経験することと比較すれば、未熟なのは当然でしょう。

良く考えている学生なんて、ほんの一握り。
考えているようでも、誰かの影響を受けていることを自覚できていない。

学生時代に「本当のやりたいこと」を探すのは、難しいことだと思います。
むしろ、そこの段階で見つかるほうが例外。

夢や、目標、憧れが生まれるためには、きっと何かのキッカケがあったはずです。
同じような体験をしても、キッカケにならない人もいるわけですから、
そのことに魅力を感じた時点で、本人の個性にマッチした部分はあるのでしょう。

興味を持った方向に進もうとすることは、とても重要なことだと思います。

ただ、それが全てではない。
それが自分の道だと決めるには、学生の時期では早過ぎることが多い気がします。

もっと試練が訪れるはず。
その試練が大切なものになっていくもののようです。


興味を持った方向に進んでみるのは、個性を活かす1つの方向でしょうから
国際的な活躍に興味を持った人が、国際教養の場に進学するのは
理にかなっていると考えられます。

ただ、日本の学校教育や、大学教育の全てをその方向に変えていくかというと
それは別問題のように思えます。

まして、就職率が良いからという理由で、
「国際教養大学では企業にとって理想的な人材が育てられている」
という結論に結び付けるのは違うような気がします。

商社に入って海外と取引をしたいとか、
世界中の人たちと交流をしていきたいとか、
政府と関わる仕事について、世界の国々を相手に仕事をしたいとか、
そういったことに夢を持てる人たちにとっては望ましい教育だと考えられます。

そうした仕事をしている採用側からみても、
その教育方針は理想的な人材を育ててくれているのかもしれません。

でも、その教育は国際交流という視点で役に立つものであったとしても
国内での仕事に役立つものかどうかは分かりません。

むしろ、国際交流のために身につけたコミュニケーションスタイルで
国内の営業の仕事をしようとしたら、
逆効果になる可能性だってあるかもしれないわけです。

興味を持てる人が教育を受け、
その教育で見につく能力を必要とする企業が、その人を採用する。
このバランスは大切なように感じます。

学生までの段階であれば、「興味を持てるかどうか」の部分こそ
重要な才能として判断できるところじゃないでしょうか。

あとの細かい能力は、仕事の内容に合わせて活かし方を変えられるものです。
スケジュール管理が苦手なら、思いつきの行動力を活かせばいい。
同じ仕事内容でも、両方の活かし方があるほうが多いでしょう。

どうしても素養として能力を上げにくい部分が出てきたら
そのときは別の仕事内容に変わる方法もあります。

「やりがい」や「ヤル気」には他者からの評価も関わってきますから、
それらを基準に仕事の向き不向きを判断するのは難しいところがあります。

「興味を持てるかどうか」は、個人の好みの問題です。
やってみたら興味が持てたというケースもあるでしょうから、
色々やってみながら興味を持てるものを探していくのが大切かもしれません。

その中で、興味が持てる対象から共通点を探す。
そうして見えてきたものが、自分の大切な部分じゃないでしょうか。

一番興味を持てるものを探すのは絞り込み方を間違えるリスクがあるようです。

例えば、野球が好きでプロ野球選手になったとします。
引退によって、道を決めるタイミングがやってきたとき、
「野球が好き」を基準に道を決めるのは乱暴だという話です。

野球をやってきて、野球のどの部分に関わっているのが好きだったのか。
後輩に指導するときか、野球の理論を考えるときか、人に説明するときか。
そこに合わせて道を考えることができるでしょう。

興味をもてるかどうかには、その人の個性が関わっているようです。


そうして考えると、興味を持てたところに就職の希望をするのは
どういった理由からであれ、1つの選択だと言えそうです。

採用する側の企業としても、即戦力を期待しないのであれば
その人の個性に合わせて、仕事に能力を活かしてもらえればいい。
仕事で結果を出すための方法は、どんなに高度な教育を受けても
実際の仕事の現実とのギャップを埋めるために、トレーニングが必要なものでしょう。

そのトレーニングを教育担当者がするのか、
上司が育てていくのか、本人が自分で身につけていくのか、
仕事の仕方を身につけていくプロセスには様々な方法があります。

仕事をするために本人の能力を活かす方法が見つかれば
その仕事が上手くいく可能性は高くなるでしょう。

1つの仕事に絶対必要な能力というのは滅多にない気がします。
ある程度のラインがないと困ることはありますが、
そのレベルはトレーニングで対応できる可能性も高い。

仕事の結果として求めるものを得るために、
どのように取り組むかは、個人の能力の使い方によるところが大きいと思います。

であれば、採用側は何を基準に人を選ぶのでしょうか。

いわゆる頭の良さの1つとして扱われることの多い
「多角的な視点」というのを取り上げたとしても、
場合によっては、「まっしぐら」に突き進む人のほうが役に立つこともあります。

個性を基準に人を採用するのは、逆に組織に偏りを生む可能性もあるので、
どちらかというと色々な個性の人物を集めたほうが
チーム作りとしては面白いところもあるかもしれません。

僕の考えとしては、採用の重要な基準として
「自信と客観性が高いレベルでバランスを維持できているか」
というのがあるように思います。

自信とは、自分の存在に対しての価値の感じ方と
自分の能力に対しての価値の感じ方を合わせたもの。

自分の存在に価値を感じられる人は、
仕事を通じて他者と関わることに意味が見出しやすくなります。
他者からの評価を求めて仕事をするのではなく、
「自分がしている仕事なのだから役に立てているはずだ」
と根拠もなく信じることができる。

仕事で上手くいかなかったときも、過度に落ち込むことがありません。
「仕事は仕事。やり方が良くなかっただけ。次に上手くいく方法を考えよう」
という風に、自然と前に進む力を引き出してきます。

失敗したり、非難されたりするのは、ストレスを受ける場面です。
前に進むエネルギーが一時的に低下します。

どんなに元々のエネルギーが大きい人でも、
ストレスを受け続ければ前に進めなくなってしまう。

ただ、ストレスのかからない社会生活もないわけです。
なので、そのストレスに対して一時的にエネルギーが低下したとしても
自分でエネルギーを回復して前に進み始められる力が重要です。

その土台になるのが、自分の存在に対して感じている価値の度合い。
自分は大丈夫だと思えるだけの愛情豊かな触れ合いをしてきているかが支えになります。

もう一方の、自分の能力に対する価値とは、「自分はできる」という感じ方。
初めてのケース、難しそうなケースに対して、取り組む意欲に関わります。
あきらめの悪さにも近いかもしれません。

繰り返しチャレンジしたり、やり方を工夫したり、
困難に立ち向かっていく姿勢に反映されます。

これが低いと「私には無理です…」になる。

何かを成し遂げてきた実感や、苦しさを乗り越えた経験が
自分の能力に対する価値を高く評価させてくれます。

このような自信が高くても、客観性が低いとワガママ過ぎてしまいます。
「自分はスゴイ」と本人は思っているが、周りからの評価は低く、
自分が高く評価されないことに不満を撒き散らすようになります。

逆に、客観性の高さに対して、自信が低いと弱々しい雰囲気になるでしょう。

能力として自信が低いと、他者と比べて「私にはできません」の方向に
価値として自信が低いと、他者と比べて「私はダメだ」や「嫌われている」の方向に。

自信と客観性の両方が高いことが大切ということです。
両方が高く維持できていれば、ほとんどの困難に立ち向かい、
自分の力でそれを乗り越える方法を見つけていくでしょう。
他人との折り合いのつけ方も自然と身につけていくはずです。

ちなみに、どちらかというと、一般的な採用の場面では
自信の高さが評価される傾向があるような気がします。
客観性を判断する目を持っていないことが多い。

「デキそう」な雰囲気で、自信満々なのに
仕事をさせてみたら「あらっ?」ということがあったりします。

この自信と客観性のレベルに関していうと
組織の中で育てていくことも可能ですが、
それを意識的にできる人は多くない気がします。

だから人材育成の情報があふれているのでしょう。

そして、この偏りが大きい場合には、かなり教育は難しい。

教育レベルや技能として採用する以外にも
人間的素養として「自信と客観性」の視点で人を見ていくのは役立つと思います。

国際教養という場は、今までに関わってきていない環境に
身を置く決断をしていますから、ある程度の自信が必要になるでしょう。
そして、そこでの4年間の生活は、さらに自信を育んでくれる。

その意味で、企業が就職のときに注目するのは自然な流れとも考えられます。

あとは、客観性の部分。
欧米的なコミュニケーションのスタイルと
日本的なコミュニケーションのスタイルのギャップを
どのように扱っているかで見えるかもしれません。


そうやって考えると、
内面を育むような取り組みのほうが
重要度が高いような気がしてきます。

それを仕組みにしていくためには工夫が必要そうです。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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