2010年04月28日

言葉と心

NLPのことを「心理学と言語学が融合したもの」のように説明するのを目にしますが、
分かりやすさと信頼性を伝える目的であったとしても
かなり言い過ぎのように思います。


僕の印象では、NLPの中に心理学は、ほとんど含まれていません。
むしろNLPは心理学の対極をやろうとしている様子さえある。

なぜなら心理学の大半は、多くの人に共通する振る舞いの傾向を
一般論として調査していくことに労力を注ぐからです。

「人は一般的に、こういう状況では
 こんな感じ方をしやすいために、こうした行動を取るものだ」
という結果が示されたり。

有名どころでは、
「一度頼みごとをされて断った人は、後ろめたさを感じているため
 次に簡単な頼みごとをされると引き受けやすくなる」
といったものでしょうか。

人の行動や気持ちを、「心理」と呼ばれる心の動きで理解していくスタンス。

中には、学習をベースにしている理論もありますから、
振る舞いの個人差を説明する方法を持ち合わせているものもあります。
それらは一般論であっても、個人差を理解する上で役立ちます。

心理学が人間一般の心の動きを対象にするのに対して
NLPは徹底的に人それぞれの違いに目を向けます。

人は全員違う。
その前提で人の行動や気持ちの動きを見ていくわけですから
人の全体的な傾向を扱うことは滅多にありません。

かなり独自の着眼点で人を理解しようとしている理論だろうと思います。

心理学の中にも、臨床心理学のように心理療法を含んだ分野もありますから
NLPが心理臨床の観点から捉えられることはあります。

NLPは心理療法家の分析をスタート地点にして発展していますし、
その中の技術には心理療法として活かせるものも含まれています。

ですが、それは「NLPが臨床心理学の一部だ」ということではなく
「NLPの一部が心理臨床に応用できる」という説明のほうが正確でしょう。

広く「人の心を扱うもの」を心理学と呼んでしまうのであれば
NLPも心理学に含めても良いのかもしれませんが、
NLPは、あまり心理学とは言えないと僕は考えているんです。


また、NLPは最初に発表されたとき、
言語学の助教授だったジョン・グリンダーの手によって、
心理療法家のフリッツ・パールズとヴァージニア・サティアの
言語パターンが分析され、生成文法の観点で説明した形が取られました。

その意味では、NLPの中に言語学の内容が含まれているのは事実ですし、
NLPの用語の中にも言語学用語がいくらか表れてきます。

が、それは本当に一部分に過ぎません。
言葉のパターンを調べるということと、言語学的に説明することとは
直接的に関係するものではないでしょう。

言語学者が言語学として発表すれば言語学の分野に含まれはするでしょうが、
そうしたものがNLPの中にどれだけあるかと言えば、定かではありません。

むしろ、NLPが当初、心理療法の一派として捉えられていたことを考えると
言葉のパターンといっても、心理療法で扱われる効果的な質問の仕方というのと
同じようなものと捉えたほうが自然ではないかと思います。

実際、NLPの中で言語学的な知見が役立つ部分は限定されます。
本質的には、NLPは言語に対しても独特の捉え方を発展させた印象さえあります。

生成文法で説明するのではなく、言語さえも五感の情報として説明する。
それがNLPの前提になっているはずなんですが、
このことを意識している人は多くないのかもしれません。

確かに、NLPのスタートは言語学的なアプローチだったようです。
しかし、その後のNLPの開発には言語学の気配は薄れている印象を受けます。

NLPのベースと言えるようなコンセプトが固まってきたのは
最初の発表からすると少し後になるでしょうから、
新たな発想や技術を追加する形でNLPは進んできたのだろうと推測されます。

一通りの基本的な発想がまとまった辺りで、中身を一度整理したほうが
より分かりやすく、立ち位置も明確なものが作られたのではないでしょうか。

特に、NLPは言語の部分に対して、まだまだ大きな可能性を持っているはずです。
五感の情報で言語を説明するアプローチは面白いとも思いますし。


NLPを「心理学と言語学の融合」と呼ぶのは
「心理」療法家の言葉のパターンを「言語学」者が分析して発表した
という経緯から生まれた説明なのかもしれません。

それは誤解を与えるもののように思います。

むしろ、NLPは心理学や言語学、さらに認知科学などの分野に対して
事象をNLPの理論で解明する形で関わっていくほうが
その可能性を広げられるように思うんです。

どうやってNLPが作られたかよりも、
NLPという理論が、どんな分野で使えるのか、ということです。

人の心や認知、言語といった様々な活動を
NLPという1つの理論で説明してしまえる。

そのことを示していく方向性は、NLPを後世に残していくのであれば、
大事な活動のように感じます。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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