2010年09月14日

「三次元」の酷評

最近、テレビでも映画でも、場合によっては携帯でも
「3D」映像のようなものが出回ってきています。

辛辣な言い方になりますから、関係者の方が目にしたら申し訳ないんですが、
僕は個人的に、あの技術は、まだ認められません。
「3D」と呼ぶにはちょっと早いんじゃないか、と。

「飛び出て見える画像」ぐらいなら良いですけど。

確かに、あの「3D」加工の画像を見ていると
画面のある位置よりもずっと手前にまで映像がやってくる感じがしますから
何かが飛んで向かってくるようなときには迫力があるかもしれません。

ただ、それは普通のテレビのドッキリ映像であるような
例えば、ゴルフボールがビデオカメラに直撃したときの映像であっても
こっちに向かって速いスピードで向かってくれば
思わず避けてしまうほどの迫力は十分にあるわけです。

なので、迫力を増す上で、効果を発揮するところはあるでしょうが、
その効果のほどは驚くほどではない気がするんです。


ここからが重要なんですが、その「3D」画像の表現の仕方は
むしろ一般的な平面画像よりも、リアリティを失っているように思えるんです。

そう感じる人は少ないんでしょうか?
僕が、人間の認知プロセスなどに興味を持っているせいかもしれません。

しかしながら現実的に、今の「3D」技術で表現されているのは
複数の焦点距離に像が結ばれるように屈折させているところまでに見えます。

奥行きがあるように見える部分は、あくまで画面と自分との間の空間に
近寄って画像が浮いていることで表現されているに過ぎません。

仮に、3人の人が手前から奥に向かって違う位置に立っていたとしたら
それぞれの場所が違っていることは見て取れます。

ただ、3人が全部、違う「空間」に浮いているようにしか見えないんです。
それも、かなり平面的に。

言ってみれば、透明なスライドに人物の絵を描いて、
それを手前から奥に向かって3か所に配置しているような状態です。

背景の絵はその奥にあるんです。

だから奇妙に見える。
現実的な見え方では、あり得ないんです。
人間が三次元として認知するときの視覚的な特徴は含まれていません。

いくつかの平面が前後に重なっているように見えて
現実とは違った映像になっていると思うんです。

トリックアートと呼ばれる絵画は、完全に平面に描かれているにも関わらず
見ている側に三次元的な認知をさせますから、
そちらのほうが統一感のある3Dになっていると考えられます。

逆に言えば、現実では認知できない世界を見せてくれているわけですから
それを活用した映像効果を考えれば工夫できるところは沢山あるんでしょう。

ですが、それは我々一般の三次元の認知とは別物です。

ちなみに、「対象物だけが背景から浮き出て見える」という状態は
本人が「のどから手が出る」ほど、あるいは「吸い寄せられる」ほどに
魅力的なものを認知するときのプロセスに似ていることがあります。

この「3D」技術で商品を背景から浮き上がらせるように寄せてくる、
NLPでいうビジュアル・スウィッシュのような動きを作れば
その商品が「欲しくてたまらない」ような気分にさせることは可能かもしれません。


おそらく、人間は映画やテレビの画面を見るとき、どんなに小さな画面でも
周辺視野への意識を低下させて、画面の中だけに集中する度合いが高まります。

もちろん、画像そのものが大きいほうが、視野の大部分を画面で占められるので
自然とその画像の世界に意識を集中しやすくはなるでしょう。

そして、この意識の向いている視野の範囲が、普段見えている世界と近いほど
その画面の中の世界に臨場感を感じることができるわけです。

その点、現状の「3D」映像は、視野を画面の中だけに固定できません。
本来は画面の中とは違うはずの空間に、画面の中のものが配置され
それを画面の中の世界と関連付けなければいけない。

一手間、余計にかかります。

そして、画面の中の世界だけに入り込むことも許されません。
画面と自分との間の途中の空間にも意識を分散させる必要があるからです。

となると、仮に映画館で「3D」映像を見たとしたら、
途中の空間の位置に焦点を合わせるタイミングがあって
そのときには、その距離に見える前の座席の人や通路などの他の物が
同時に意識されてしまう可能性が出てきます。

「画面の中のものが、映画館の中の空間に飛び出してきた」という迫力は
『自分は映画館の中にいる』という現実を認識させるので
映画の中の世界だけに入り込むための臨場感を低下させます。

ストーリーが展開される世界には入りにくくなるし、
映像を認識するためにも普段と違う作業が必要になって注意が散漫になるし、
「飛び出してくる」迫力を得るために支払っている代償は大き過ぎる気がします。


もし、本気で3Dの認知を作り出したければ
メガネのようにしてスクリーンを目の前に映し出すのが手っ取り早そうです。
しかも、できるだけ視野の全てを覆えるようにする。

目を開ければ、視野に入る範囲が全て映像になるようにしておくわけです。
ちょっと目を左右に振っても、そこまで画像が入っているように。
目を下に下げれば、自分の手足と地面が見える状態。

そうなると、何かが浮き出ている必要はありません。
映像の中で遠近感を正確に表現するほうが重要でしょう。

奥への広がりだけを表現すれば良いんです。
手前は、目の数cm前に実際の絵があるわけですから、近いほうは十分でしょう。

音声に関しては、距離感や方向性を感じさせるような録音・再生の技術がありますから、
そういう音声をヘッドホンで流すことになるでしょうか。

この上に、匂いや温度、皮膚感覚なども再現したら
現実との区別がつかなくなるぐらいの状況でしょうから、
そうなると別の問題が出てくるように思えます。

ヘッドセット型の映像と音声供給装置だけで、
その世界にいるかのような臨場感は、相当なレベルで作り出せると考えられます。

ただ、忘れてはいけないのは、「自分」は物語の登場人物ではないということ。

こういう技術で臨場感を高めていったときに認識されるのは
まるで夢を見ているような状態だと想像できます。

自分がその世界にいるように感じられるということは
ストーリーに対しての意味づけも必要になるのかもしれません。

自分がその世界にいるかのような臨場感を生み出したとすると、
それは主体的な体験として認識されるでしょう。

映画やテレビ、演劇などは、その場面を見ている自分が
その世界と切り離されている度合いが残っていることで
客観性を保っているわけです。

NLPのサブモダリティの特徴として表現するなら
思い浮かべた画像がパノラマで見えるときは100%主観的に体験していて
少し距離のある場所に、ある範囲で映像が見えるときには客観性が出ていると言えます。

ということは、ヘッドセットで視野全部を映像で覆ってしまった場合、
思い浮かべた映像がパノラマのときと同様、100%の主観的な捉え方になります。
一方、通常の映画やテレビのように、少し離れたある場所に映像が見えるときは
客観性を含みながら捉えられているときに似ているんです。

映画や演劇の魅力の1つは、自分とは違う世界を眺めながら
その世界にリアリティを感じつつも、
自分とは違う世界として切り離した体験ができるところにもあるはずです。

客観的な世界の中に、自分の人生で感じている感情を投影しながら
自分の人生と少し距離を置いて向き合うことができる。

その意味では、映画館のスクリーンやテレビ画面は、
自分の視野の中で、自分と離れた場所にある必要もあるんです。

離れた画面の中の世界に、共感するように想像力を使うのが重要な楽しみの1つです。
映像が飛び出てくる必要はないと思います。
自分から入っていくのが魅力なんですから。

cozyharada at 23:03│Comments(0)TrackBack(0)clip!NLP | 全般

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
おしらせ
 ◆ セミナー情報 

New!

《コミュニケーション講座》
 〜人を育てる指導力〜

【日時】 
  2019年6月16日(日)
   10:00〜16:30


【場所】 
  北とぴあ 601会議室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《瞑想講座》

【日時】 
  2019年6月22日(土)

  午後の部 13:30〜16:30
  夜間の部 18:00〜21:00

【場所】 
  北とぴあ 第2和室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《怒りの取り扱いマニュアル》
 〜期待の手放し方と
  ゆるしの技法〜


【日時】 
  2019年7月6日(土)
     7月7日(日)
   10:00〜18:30


【場所】 
  滝野川会館

   JR上中里駅より7分
   JR駒込駅より10分
   南北線西ヶ原駅より7分

詳細はこちら>>
次回未定


 ◆ 過去の講座 

《新カウンセリング講座》
 〜まとめと実践〜


当時の内容はこちら>>


《勉強会》 

【テーマ】 変化の流れを考える

当時の内容はこちら>>
次回は未定



 ◆ お問い合わせ 
  技術向上、
  コンサルティング、
  スーパーバイズ、
  執筆・講演…

  諸々のお問い合わせはこちらへ>>



ホームページ
バナー1


プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
Archives
最近のコメント
QRコード
QRコード