2010年09月19日

評価が与える影響

一般的に、人は関係性を一定にしやすいものです。
両者の間で一度、関係が決まってしまうと、それは変わりにくい。

もちろん、徐々に変わっていくことはありますが、
短期的に大きく変わるには何かの事件に近いレベルのキッカケが必要だったりします。

その両者の関係性を作るまでには、個人差として
一気に決まった関係ができるまで踏み込んでいく速い人もいれば、
徐々に打ちとけながら安定した関係を作っていく人もいます。

二人にとって安定する距離感が生まれるまでに
近づいたり離れたりを繰り返して、ある一定のところをキープする、ということです。

だからこそ、ちょっと距離が離れた感じを受け取れば
少し距離が近づけるように工夫をして、普段よりも多めに連絡を取ったり
近づき過ぎれば、もめごとを起こしたりして、距離を適切に保とうとする。

距離感として言うと、単純に親密度のように感じるかもしれませんが
それだけではありません。

上下関係とか、主体性とか、評価とか、他人が関わる要素において
両者の間で関係性が一定になりやすいものでしょう。


これが能力や技術に関しても起きるというのが重要なんです。

「この人は優秀だ」とか「この人は才能がある」とか、そういう評価においても
一度本人の中で決まってしまうと、そのレベルを保つように関係性が進みやすい。

自分の能力に対する評価や見込みが、相手の中で決まってしまうわけです。

上司が部下を一度「こいつは優秀だ」と捉えれば、その評価は変わりにくいので
少しぐらいミスがあっても「何かあったんじゃないか?」と推測をしたり
「このミスを活かして大きく成長するだろう」と期待したりする。

逆に上司が部下を「こいつはダメだ」と評価してしまえば
小さなミスでも「またミスしやがって」とか「やっぱりダメだ」とか
自分の評価の枠組みに当てはめて部下を見るようになりやすいものです。

「なりやすい」という言い方をしていますが、
ほとんどの場合は気づかずに、そうなっていると思います。
そうじゃない人を見ることなんて滅多にないものでしょう。

有名な実験結果として『期待をかけられた生徒のほうが成績の伸びが良い』
というものがありますが、そのうちの1つの要因は、
こうした関係性が保たれやすい性質に関係していると考えられます。


ということは、教員や講師、インストラクターといった人たちは
自分が指導する相手を、どのように評価しているかに注意をする必要があると思うんです。

自分が相手を低く見積もってしまえば、その人が伸びる可能性は減ってしまう。
「この人は上達しないなぁ」という感想を持つことがあったとしたら
それは自分が相手を低く評価していることと関係するかもしれないんです。

高く評価しているときでも注意が必要なことには変わりがありません。
そこには先々の見込みも含まれるからです。

「この人はスゴイ!きっとグングン伸びていく」と思って指導をしていたとしても
その伸び具合に評価や見積もりが含まれてしまいます。

その伸び具合の評価が低い可能性があるんです。

例えば、野球のコーチが「この子のバッティングは上手いなぁ」と思っていて
バッティングで活躍できるように指導していたとしても
コーチ自身が「自分の教え子からイチローを超える選手なんて出ないだろう」と
心のどこかで感じていることがあったとしたら、
その野球少年の才能を低く見積もってしまっているかもしれないんです。

自分の常識でしか相手を判断できない。
超一流を沢山育ててきた人が判断した才能と、そうでない人が判断した才能では
中身に大きな違いがあるはずです。

そしてそれが、その後の成長に関係するはずです。

「上達する」ことを思い描いておらず、現状の実力だけで評価をする指導者は
相手の上達のチャンスすら奪っている可能性があり、
どんなに「上達」を予測していたとしても、その予測の範囲がある限り
予想を上回る劇的な上達速度は奪ってしまっている可能性がある。

まぁ、指導という立場にいれば、ある程度は
相手の実力がついてくることを目にしているでしょうから
何も変わらないままという想像はしていないだろうと僕は期待していますが、
その実力の伸び具合に評価や予測を入れないことは難しいでしょう。

無限の可能性を信じていてくれれば良いんでしょうが、
それを期待することは酷だと思います。

なぜなら無限の可能性を期待してしまっては
相手のレベルに合わせて指導するのではなく、
過剰なまでに高度なことばかりを要求しかねないからです。

僕が今までしてきたことは、
『人は小さなキッカケで大きく変化する』
ということを実感した上での関わりのつもりです。

人は数分もあれば、劇的に変わる可能性がある。
まして、次に会う日には、別人のように変わっているかもしれない。

そういう前提で、一瞬一瞬で、相手を見るようにしてきたつもりです。
逆にいえば、何が変わったかを注目しているのかもしれません。

「その人の今」に合わせた対応をする。
それは、「その人」に合わせた対応をする、のとは別物です。

「その人」に合わせてしまっては、変化の可能性や成長の度合いを
自分が決めてしまうことで、逆に可能性を奪うかもしれないんです。


語学においては、とくに重要な要因になっているんじゃないでしょうか。

熟練した語学の指導者ほど、どのくらいの進度が一般的なのかを知ってしまっています。
だからこそ、劇的な上達なんてないと捉えてしまいやすい。

それがネイティブの場合は、特にそうでしょう。

日本人が英語を話すということに対して当たり前だと思っていないはずです。
むしろ、多くの日本人の生徒は英語が話せない。
自分と同じレベルで話せるようになると信じている講師は滅多にいないでしょう。

何年も英会話教室に通っても、ネイティブ並みになる人がいない理由の1つに
指導者側が見積もってしまっている評価の問題もあるような気がします。

日本人の講師でネイティブ並みの英語力にまでなった人であれば
どういうプロセスで言語習得がなされていくかを知っている分、
その点の評価では効果的に働くかもしれません。

それでも、劇的に変わるということを信じられる人は少ないんじゃないかと思います。

同じ先生について、ずっと習い続けるというのは
その点でデメリットになることがあると思います。
関係性が決まってしまって、上達の度合いに制限をかける場合があるんじゃないか、と。

その先生が毎回、初対面のように評価を変えてくれれば望ましいですが、
そういう発想を持っている先生を探すのは大変でしょう。

まして一般的な英会話スクールにいるネイティブの講師に
そういう期待をするのが困難なのは当然の話だと思います。

「この生徒は、これぐらいの英会話力だ」
「日本人は、こういうものだ」
「このレベルの生徒は、これぐらいの進歩をするものだ」
知らず知らずのうちに、そういう評価がなされてしまうでしょう。

生徒の側も、関係性が決まってしまうと、
「その先生の前にいる自分」を決めてしまいやすいものです。
劇的に上達した自分を表現するのが難しい。

なので、ある程度のタイミングで先生を変える、
場合によってはスクールそのものを変える、
というのが有効じゃないかと思います。

以前のスクールで身につけてきたものを最大限に発揮した状態を
新しいスクールでゼロから評価しなおしてもらえる。
初心者というレッテルがなくなるんです。

そして、ある程度の時間が経過したころに
また以前のスクールに戻るのも良いかもしれません。

今度は、劇的に上達した自分で新たに接しなおすことができます。
もちろん、そのときには新たな自分のつもりで行くことも大事ですが。

すると「 Oh! いつの間にか、すごく上達しているじゃないか!」
という風に見てくれるでしょうから。

短期的に力をつけたい場合には、
指導者側の上達予測に制限されないための工夫が役立つと思います。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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