2010年09月23日

ビリーフに対する理解の仕方

NLPは色々なものの良いところ取りだと呼ばれることがあります。
三人の心理療法家のやり方をモデリングしたとか、
実践心理学だとか、コミュニケーションスキルだとか、呼ばれることも。

実際のところ、NLPは遥かに出来た当時よりも形を変えていて、
寄せ集め感が強く見えるところもある反面、
NLP独自の概念や技術も沢山あるんです。

個人的にはNLP最大の発見はサブモダリティにあると考えていて
それを見出したバンドラーは、やはり偉大なんです。
それを深めて理論化しなかったのかもしれませんが。

自分の中では、一つの分野の中では「浮いている」情報は無くしたいんです。
NLPは多くの方が感じるように「色々あるけど点と点がバラバラ」といった
印象を受けやすい内容だと思います。
人によってはスキルの寄せ集めだというのも分かる気がします。

が、それらには根底に流れている共通点があるのも事実で、
それこそが「人間とはどういうものか」を説明している部分だと思うんです。

なので、その根底に流れる部分からNLPの全ての概念を繋げていくと
各々のスキルの関連性が見えてくるはずです。

そして、その作業を進めるとNLPの中の矛盾点も見えてきてしまいます。

そのうちのいくつかがビリーフに対する解釈であったり
メタプログラムに対する解釈だったりしたんです。


最近のNLPの中心理論はビリーフやメタプログラム、価値観といった
抽象度の高い概念から作られている印象があります。

それは心理学や心理療法に携わっていた人たちが絡んでいるからでしょう。
アメリカの自己啓発の第一人者ルー・タイスのTPIEなどもビリーフが基本ですし、
当然、アンソニー・ロビンスもジェームズ・スキナーもビリーフが基本です。

アメリカの自己啓発系は、伝統的にビリーフを使ってきているようです。

しかし、その理論で説明していくと、サブモダリティやアンカーが浮くんです。
それらは単純にプログラムを変えるスキルとして捉えられてしまいます。
リフレーミングというのもスキルになってしまいます。

全てをバラバラに捉えているからこそ、ビリーフ・チェンジというスキルまで生まれます。

アメリカの自己啓発系の流れの中に身を置く人が関われば
自然と、NLPもビリーフを中心とした理論で説明したくなると想像できます。

推測するに、サブモダリティについて深く研究する前に
NLPという一つの体系を発表したかったんでしょう。

だから全体を統括する理論が必要だった。
そのときに取り入れたのが馴染みのあるビリーフの理論だったんじゃないでしょうか。


ディルツは良く知られているビリーフの概念を
他のNLP用語と関連付けて説明することに挑戦したようです。

僕の知っている情報では、その理論には「深層構造」という表現はありますが
サブモダリティやアンカーという言葉は出てきません。

「深層構造」や「無意識」という曖昧な一言で片づけている中身を説明してこそ
統一的な理論になるんじゃないかと、僕の発想は動いていきました。

その結果、全ての中心をサブモダリティとアンカー、抽象度で考えていくと
他の概念の多くが最も上手く説明できていったんです。

当然、NLPで「スキル」と呼ばれているもの同士の関係性も説明できますし
NLPがまとまった1つの理論体系として扱える状態になったようです。


NLPが出来てきた歴史的経緯を考えれば、今のNLPの中心がビリーフだとか
ミルトンモデルとかに進んでいくのは納得のいくところです。

一度も壊すことなく、新しいものを積み上げているんです。

僕がしようとしている説明は、ちょっとした説明の視点の違いだと思ってはいますが、
大袈裟に言えば、地球の周りを月や星や太陽が回っているという仮説に基づいて
様々な理論を積み重ねて研究が進んでいるような状態に近い。
誰も「地球が回っている」と言わなかったんでしょう。

まぁ、そういう根本的な疑問を投げかける人はアメリカ文化の中では
すぐにオリジナルを志向しますから、NLPという名前を使わなかったとも考えられますが。

何も僕の説明の仕方が天動説と地動説の違いほど劇的だと言っているのではありません。

単純に
「NLPは疑われたり壊されたりすることなく
 追加だけを繰り返されているのではないか」
という部分だけがポイントです。

その意味で、少し無理が出ているものや、説明しきれないものが含まれています。
少なくとも人間を「プログラム」で説明しようとしているなら
「無意識」という言葉は使うべきではない。

他分野との接点として解説をするとしても
「NLPでは無意識という言葉は使わないが、
 もし無意識をNLPで説明するとしたら〜と…で説明ができます」
ぐらいに留めておくほうが良いと思うんです。

そういうNLPの積み重ね的な進展の中で、早期に取り入れられたのがビリーフで
かなりの理論的中心部分に据えることが決定されていたんじゃないかと推測しています。

サブモダリティやアンカーについて研究を進めるよりも先に
全体像を説明するための理論ができたんじゃないだろうか、と。

あるいは全体像を説明するよりも、役に立つものを志向する度合いが強く、
スキルを沢山開発していくということに重きが置かれ、
理論化していくことが優先されなかったのかもしれません。


おそらく、サブモダリティの研究が研究が進んでいた頃には
もう全体的な理論構成は決まっていたんじゃないでしょうか。

サブモダリティを使ったスキルを研究する中で
価値観をサブモダリティで扱おうとする内容が出てきますから、
その時点で既に、価値観がプログラムの1つだと捉えていた可能性が考えられます。

中には、人間の振る舞いの全てをサブモダリティで説明しようとした人も
もしかするといたんじゃないかとは思います。
スティーブ・アンドレアスからは、その雰囲気が感じられます。

沢山NLPを体験してきた人からは「NLPの中心はアンカーとサブモダリティだ」
という意見を耳にすることは一度ではありませんでしたし、
オーウェンというマスタートレーナーも
「NLPはアンカーとサブモダリティとミルトンモデルだ」と言っていました。

何より創始者バンドラーの開発するスキルは、大半が
アンカーのバリエーションかサブモダリティを応用したものです。

本質的には、アンカーとサブモダリティの重要性を感じながらも
それを明確に理論の中心に据えて説明することは少なかったのかもしれません。
バンドラー系の人たちは、理論を話すことそのものを好みませんから。

もちろん、僕が見たことが無いだけで、そんな理論もあるかもしれませんが、
僕は自分でその作業を進めて、人間の振る舞いの全てが
サブモダリティとアンカーと抽象度で説明しようとしたんです。

実際、ビリーフはサブモダリティとアンカーと抽象度で説明できます
価値観も説明できます。
メタプログラムは説明できません。

しかし、サブモダリティやアンカーは、ビリーフでは説明できません


例えば、犬に噛まれた経験があって、犬を怖がる人がいたとします。
犬を見ると体の中に恐怖反応が起きて、冷や汗が出て、筋肉が硬直する。

この人は「犬は噛むものだ」とか「犬は怖い」というビリーフを持っている。
ビリーフの理論では、そうやって説明するでしょう。
だから恐怖の反応が出る、と。

ところが、他の人が目の前の犬を可愛がっていて、
噛むこともないし、おとなしくて、人懐っこい犬だったとしても、
その犬が恐い人は恐怖の反応から、なかなか抜け出せないものです。

頭で「安全だ」「噛まない」と納得していたとしても怖いんです。
遠くから見るだけだって怖いんです。
鎖でつながれていて、絶対に来ないと分かっていても怖いんです。

どんなに論理的に安全性を説得しても、
老犬で歯がが全部抜けていて噛まれたって痛くないと証明してもらっても、
きっとその恐怖の反応は抜けないはずです。

それが犬恐怖症ということです。

この恐怖は、ビリーフを変えれば無くなるのでしょうか?

別の人は、「犬に対して恐怖反応がアンカーされている」と説明するでしょう。
そして、アンカリングのスキルを使ったり、恐怖症治療のスキルを使うかもしれません。

ビリーフを理論の中心に据える人は、
「恐怖症治療のスキルやアンカリングでビリーフが変わるんだ」
とは説明しないような気がします。

でも、そのスキルで恐怖症が治った事例は沢山ある。

犬恐怖症を克服した人に、数年後インタビューをしたら、こう答えると思います。
「もう犬は怖くありません」
これは「犬は怖い」というビリーフが変わっているとは言えないんでしょうか。


僕の説明は、
「ビリーフの中身にアンカーが含まれている」
というものです。
だからアンカーを変えれば、結果的にビリーフが変わる。

犬に対する恐怖のアンカーを「犬は噛むものだ」というビリーフで説明するのは難しくても、
「犬は噛むものだ」というビリーフをアンカーで説明するのは簡単です。

つまり、サブモダリティやアンカーは、ビリーフの構成要素だということです。

そして、ビリーフはプログラムの別の呼び名です。
全てのプログラムはサブモダリティとアンカーと抽象度で作られていて、
そのプログラムの中に「ビリーフ」と呼ばれる種類のものがある。
強いていうと、分類なんです。

化学に喩えると、サブモダリティや元素、アンカーは化学反応のようなものでしょう。
プログラムは化合物です。

化合物は、その構成によって別物になるので、その数は無限に近い可能性があります。
プログラムも、それを作っているサブモダリティやアンカーの組み合わせで
無限に近い数が存在しえます。

そうした化合物の中で、炭素を中心にしているものを有機化合物、
そうでないものを無機化合物というように分類し、
無機化合物も金属や鉱物などと様々に分類が可能です。
無数にある化合物をジャンル分けするわけです。

同様に、人間の中に無数にあるプログラムは、分類として
ビリーフや価値観などと呼ぶこともできる。

単純に呼び方の問題だということです。


「あの人は優しい」という表現をすることもできますが、
その「優しさ」をプログラムとして、中身をサブモダリティやアンカーで
詳細に説明していくことも可能なんです。

「あの人は頭が良い」という表現も可能ですが、
「頭の良さ」を詳細な中身で説明していくこともできます。

「イチローのバッティングは上手い」というのは誰でも言えますが
「イチローのバッティング」をサブモダリティとストラテジーで説明することも可能です。

一言で大雑把に片づけるか、詳細に説明しようとするかの違いに過ぎませんが、
僕は専門家というのは違いを詳しく分かっているものだと考えているんです。

その詳細な情報を説明するための手段がサブモダリティやアンカーだという話です。

「あの人は『犬は怖い』というビリーフを持っているから、犬が恐いんだ」
と説明してしまうよりも、
その犬に対するプログラムの中身を詳細に説明できたほうが
アプローチの仕方が効果的になるはずです。

相手のプログラムを詳細に理解できたほうが、選択肢が増えます。
より相手に合わせた方法も見出しやすくなります。
精度を上げていけると思うんです。

そして僕は、NLPの目的の中には、そうした
「より効果的なアプローチが誰にでもできるようにする」といったニュアンスや
「相手を一人の個別の人間として理解しようとする」といったニュアンスが
含まれていたように感じています。

「この人には、こんなビリーフがあるから、こういう振る舞いをするんだ」
という理解の仕方は、
「地図は領土ではない」という考え方と離れている気がします。

僕がビリーフを理論の中心として考えず、あくまで呼び名とだけ考えているのは
そのほうが人を正確に丁寧に理解しようとしていると感じるからです。

少しでも正確に理解したほうが、より効果的な関わり方ができそうじゃないですか。

心がこもっている料理が最高だという考え方もあるとは思いますが、
僕は少しでも美味しくできるように努力をする形で心を込めたいわけです。

ちなみに、料理は喩えなので、僕はあまり料理をしないんですけど。

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この記事へのコメント

1. Posted by 印南 享   2010年09月26日 03:20
原田さん

ご無沙汰です、印南です。
前のビリーフの続き?のご説明ありがとうございます。
多少なり原田さんのお考えが理解できた気がします。
そしてサブモダリティやアンカーに視点を置くというのは、実践側の視点に立てていますし、
その意味でユーザーフレンドリな考え方のように思います。(まぁ私は専門家ではないですが…)

私もNLP関連の書籍を読む限り考え方がバラバラした感覚は強くありました。
ですのでLPを勉強するには何かしら上記の理論や他の分野でもいいですが自分の方向性の軸をもって取り組んで、
その骨格にNLPの援用できるところを肉付けしていく感じの付き合い方のほうが良いのかなと考えていました。

そういえば、北岡泰典先生はアンカーリング/リフレーミング/サブモダリティ/TOTEを4大機能と捉えることがNLPの全体像をもつのに有効だとおっしゃっていました。

とにかく、私は原田さんのようにNLPを実践され、かつ理論部分の整合性についてまで検討されているNLPトレーナーがいらっしゃってうれしいです。
正直、私もNLPの資格コースまで行きましたが、
一般的に知名度はゼロあるいはマイナス(自己啓発マニアと思われる)ですし、
考えようによっては資格コースって教える側のトレーナーを量産しているだけですし、
そしたら当然需要が増加せずに供給が増えてかえって困るだけでしょうし、
そのくせ日本は情報格差にあるのか日本人トレーナーの質がまだまだなのか
NLP創始者や開発者でもない外人トレーナーが高い料金でワークショップを開いていたりと、
なんだかなぁとかなりシラケていたところなのですが、個人的に励みになりました。
個人的にはただ単純にNLPの有効なところを学んで活用したいだけなのですけどね。

というわけで、私ももうちょっとNLPを実践できるよう頑張っていきたいと思います。
ありがとうございました。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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