2010年10月26日

憧れにはならない

今年もNLPのトレーナーコースに向けた審査の時期がやってきました。

審査に向けて準備をしている方を見ると、
トレーナーコースについての思い出が蘇ります。

フロリダで過ごした日々が懐かしいのと
そこで感じた変化や衝撃が意識の前面に上がってくるような感じがあります。

今、もう一度アメリカにコースを受けに行ったら
全然違った体験ができるんだろうと想像したりもします。

通訳なしで楽しめる度合いも違うでしょうし、
何がなされているかへの理解も違うでしょう。

少なくとも、今にしてトレーナーコースを振り返ってみて
リチャード・バンドラーやアシスタントのトレーナーたちが
何をしようと工夫していたのかが見てきている部分もあるかもしれません。

そこにはコース全体を通して設計されていた意図がハッキリとしている気がします。
コースでの経験によって色々な影響が出るように工夫されていた。

参加者にどれくらい伝わったのかは分かりませんし
個人差もあるとは思いますが、彼らのしていたことの多くは
意識的、知識的な学習やトレーニングではなく、
もっと個人的で内面的な、人間的成長を促すようなものだったと思います。


一見するとメチャクチャに思える彼らの振る舞いも
下品で非難を浴びることの多い言動も、意図があってのものでしょう。

バンドラーは自分の影響力に自信も持っているでしょうが、
それ以上に自分の影響力の大きさに注意を払っているように感じています。

そして、それはトレーナーやインストラクターや講師と呼ばれる人たちにとっては
非常に重要な注意事項のはずです。
自分の予想外の影響力を知ることが求められると僕は考えます。

特に、リチャード・バンドラーはNLPの創始者のひとりであって、
オリジナルの人であって、NLPをやり、トレーナーになろうという人にとっては
まさに憧れに近い雲の上のような存在に感じられる可能性があります。

そうでなくても、心を扱う場面においては
その場をコントロールしている人物に対して強烈なラポールが生まれやすいものです。

それが、NLPの創始者で、天才的だと噂される人物ですから
その尊敬の念や期待は大きくなっても当然でしょう。

ともすれば、アイドルのコンサートのように
講師が登場した瞬間に「キャー!!」となっても不思議ではありません。

僕には、バンドラーという人が、そのような偶像崇拝や盲信を
避けようとしている姿勢が感じられました。

個人的にいえば、僕は別のセミナーにおいて
ほとんど全ての参加者がトレーナーに対して憧れや崇拝を抱いているような場面を
何度か目にしてきたことがあります。

場合によっては、そのトレーナーに再会できたことで涙する人もいる。
それだけの想いを持てるのは素晴らしいと思いますが、
参加者がそのような状態になることが
その人自身の人生にとって望ましいかと考えると
僕はそれに同意はできません。

もちろん、セラピー的な関係性においては、一時的に
そうした強い結びつきが役立つことがあるのは事実です。
ただ、同じだけのセラピー効果が得られるのであれば、自立という意味において
そうした強い関係性はないほうが良いと思います。

それがセミナーということであれば、
トレーナーがアイドルやスターのように崇められてしまうのは
決して望ましいことではないと思うんです。

バンドラーは、特に崇拝されるのを嫌っていたような気がします。


それが、あのハチャメチャな言動や、下品なセミナー内容なんじゃないか、と。

トレーナーコースでは、座る場所を一定にするなと言われました。
しかし強制ではありません。

もし、それをルールにしたら、真面目な日本人の多くは
それが正しいんだと思いこんで、自分のセミナーでも同じように
「座る位置は毎回変えるようにしましょう」などと説明するようになるかもしれません。

確かに座る位置を変えると体験の仕方に大きな影響が出ます。
でも彼らは、それを詳しくは説明しなかったように記憶していますし、
それを強要することも、それが重要であるかのようにも言わなかったと思います。

あくまでチョット乱暴に、突き放すように、
「同じところに座るなよ!」と言いながら
それをルールや常識にはしようとしていませんでした。

確かに、座る位置を変えると感じ方は変わる。
それを体験することは重要だと思います。
やってみると違いに気づけるんです。

そして、それに気づいた後で、本人がどこに「座りたい」と思うかは
本人次第だということです。
本人が自分の意思で選択すれば良いんです。

違う方法をやってみて、その意味を知った上で普段のやり方を選択するのと、
無自覚なままにいつものやり方を続けるのでは、全く意味が違います。

彼らの突き放し方の中には、参加者自身の自由と自立を促すような工夫が
溢れていたんじゃないかと感じます。


「ノートを取るな!」というのも同様です。

もしノートを取らないことのメリットを論理的に説明して、
それが崇拝するリチャード・バンドラーの教えだったとしたら
日本で教えられるNLPのコースでは「ノートは取らないこと」というルールが
テキストの最初のほうに注意事項として載るようになったかもしれません。

「ノートを取ると理不尽な怒られ方をする。
 めちゃくちゃだなぁ…」
そんな感じ方をしてくれたほうが、ずっと
本人に意味を考えてもらうキッカケとしては役に立つでしょう。

何よりも、そういうメチャクチャな印象を与えることが
崇拝されるリスクを避けるのに役立っていると考えられます。

…まぁ、バンドラーの過去には良くない噂があるのも事実です。
本当に、そういうハチャメチャな性格だという部分もあるかもしれません。

ですが、彼ぐらい自分の振る舞いをコントロールしながら
意味のあるメッセージを複数組み合わせてプレゼンテーションできる
パブリックスピーカーであったとしたら、
理想的な人物を装うことぐらい簡単だと推測されます。

問題行動のようなものを噂されるとしても
「あのような暗い過去があったから、今の私があります」なんて
自分が正しい道を進んでいることを強調する材料に使えば、
完全無比な聖人のように振る舞うこともできるはずです。

NLPの創始者で、人間的にも素晴らしくて、
誰に対しても慈悲の心をもって接してくれ、
気づきと無批判で周りの人を成長させてくれる…
そんな人物像をすることぐらい、お手の物でしょう。

そうしたほうがビジネスだって上手くいくかもしれないし、
評判だって良くなるかもしれないし、
今よりも遥かに多くの人から尊敬を集めて
一大派閥を作ることだってできたかもしれません。

でも、バンドラーは、それをしなかったんだと思うんです。

そんなことよりも、実際に自分と関わる目の前の参加者に対して
本当に役に立つ影響を及ぼすことだけを考えたら、
ああいう下品でハチャメチャなスタイルになったんじゃないでしょうか。

持ち味を活かしながら、という前提がつくからハチャメチャなんだとは思いますが。

少なくとも、NLPの創始者リチャード・バンドラーという人物の影響を知るからこそ
意図的に自分の振る舞いを俗っぽくして、
崇拝されてしまうことを避けているところがあるんじゃないかということです。

敵も作るし、嫌われるし、評判も落とすし、尊敬もされにくいし…。
それが分かっていて、あの振る舞いを選んでいる。

だからこそバンドラーはスゴイんだと僕は考えているんです。

世の中に「今の私があるのはNLPのおかげです」という人はいるかもしれません。
でも「今の私があるのはリチャード・バンドラーのおかげです」という人は
限りなく少ないんじゃないかという気がします。

バンドラーがいなかったら、NLPは生まれなかった。
それを知っている人でも、バンドラーに意識が向きにくい。
そんな普及のさせ方をした人だと考えると、
やっぱり偉大な人物なんだと感じられます。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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