2011年04月18日
さりげなく響かせる
NLPの創始者の一人、リチャード・バンドラーは、品の悪さで有名です。
セミナーは下ネタ満載。
言葉遣いも、色々な意味で直接的です。
アメリカには、きっとスタンダップ・コメディに見られるような笑いのセンスがあって
一人のスピーカーがステージ上で笑いを取りながら
話し続けるスタイルが自然なのかもしれません。
講演であれば、一方的にステージ上から話し続ければ良いわけですが、
NLPのセミナーでは、その技術を紹介するために
デモンストレーションを行うことが頻繁にあります。
会場からクライアントとなる人物を募って、
紹介する技術が効果を発揮しやすい問題をもった人を探す。
そしてステージ上に来てもらって、実際に問題に対する取り組みを行います。
バンドラーは、デモをやるまでの話の流れが、下ネタに溢れたコメディ調ですから
デモを始めるまでの雰囲気も当然、そのままの状態になります。
深刻さがない。
問題について話してもらうときも、共感的なカウンセリングの形とは違います。
そういう雰囲気の中でステージ上にデモとして出てくる人物も
やっぱり協力的というか、気楽で深刻さがない感じになりやすいようです。
普段だったら深刻に悩み続けているような自分の問題も
そういうステージ上で扱うときには、ちょっと普段よりも距離を置いて
過剰に思い悩むことなく扱える雰囲気になっています。
問題を抱えていても、それに自分が振り回されない状態になれていて
むしろバンドラーの雰囲気に飲まれて、
気軽に解決できてしまいそうな気分にさえなるかもしれません。
先日、僕が見たバンドラーのデモの動画は
過去の苦しいトラウマ的な記憶を解消する内容のものでした。
デモに出てきた男性は気軽に自分の問題を笑い話のように話ますが、
毎日、その記憶に数時間は気を取られているということでしたから
結構、日ごろは大変な想いをしていたものじゃないかと推測されます。
バンドラーは、その話を聞くときも気軽にオチャラケながら進めていきます。
独特の速いテンポの会話を続け、一定のリズムを保ち続ける。
するとクライアントも、そのリズムに巻き込まれてきます。
苦しい記憶によって嫌な気持ちになるパターンを解消するための作業も
完全にバンドラーのリズムで進みます。
クライアントのペースでやらないのが特徴でしょう。
そこまでのセミナーの流れで参加者全員を自分のリズムに巻き込み、
会場全体の雰囲気をコントロールできる状態を作っているからこそ
そのような速いペースでクライアントに指示を出せますし、
その指示通りに作業をこなしてもらうこともできると考えられます。
バンドラーのデモのやり方を、その部分だけを切り取って学び、
同じように自分のクライアントに対処しようとすると
セラピストは上手くいかずに苦労することもあるだろうと推測されます。
一対一で相談を受けるようなケースで
過去の苦しい記憶に対処することがあったとしたら、
その人は元気を失っている場合も十分に想定されます。
それに対してバンドラーの真似をして対処しても
ペースが合わずに必要な作業を効果的にこなせない可能性があります。
バンドラーの特徴は、自分のペースにクライアントを巻き込んで
リーディングしているという部分にもあると言えます。
クライアントのいつも通りのやり方を続けていると
いつも通りに問題に苦しむパターンを再現しやすい場合もありますが、
バンドラーは、クライアントを「問題に苦しむモード」から
「問題をお茶の子さいさいで解決するモード」に移しているのかもしれません。
動画で見たデモにおいても、
「苦しい記憶と嫌な気持ちを切り離すための作業」を
スピーディに行っていました。
その作業のときだけ、バンドラーの真剣な雰囲気が増します。
オチャラケ感が減る。
でもリズムとスピードはそのままです。
指示的に、クライアントをリードするように作業を進め、
一通りの必要な内容が終わった時点で、少しずつ気軽な感じを増やしていく。
終わった感想を聞きながら、上手くいったかどうかを確認するときも
やっぱり笑いを入れながら、冗談半分に話を進めます。
デモに出たクライアント役の人も楽しそうで、不思議そうな様子。
そこで、バンドラーは自分の状態を一気に変えます。
会場も、デモに出ている人も、その変化には気づいていない感じ。
とても真剣な表情と、声のトーンになります。
少し身を乗り出して、親身な姿勢を取ります。
そして質問をする。
「過去について、一番良いことを知っていますか?」
聞かれたクライアント役の男性は、その雰囲気の違いに気づいていません。
気軽な感じのままのように聞き返す。
そこでバンドラーは、さらに声を少し低くし、
真剣で、優しさと説得力のある雰囲気で付け加えます。
「もう終わっているということです」
言われた男性は、少し茫然とした表情。
雰囲気の違いを感じ取り、気軽に笑っていた表情に真剣さが戻りつつある途中の顔ですが
完全に笑いが消えるまでもいかないぐらいで止まっています。
予想もしていなかったメッセージだったのでしょう。
これまでの一見するとフザケ半分のような雰囲気からのギャップがあるからこそ
大事なメッセージが際立ちます。
その優しいメッセージがジワリと感じられてきた頃には、
すぐに元のオチャラケた雰囲気に戻っていく。
技術的に言えば、ループを閉じることで
一番大切なメッセージを脱線していた話のように意識から外そうとしている、
とも受け取れます。
そうすることが、より効果的だという可能性もあります。
もしかすると、表面的な印象に残っている必要はないという考えなのかも。
大事なことは、本人の心の奥に残っていれば良い、と。
こういう間接的な優しさがカッコイイなぁと思います。
良い話や名言は、調べれば引用することができます。
が、本当に、目の前の一人の心に響く言葉は
さりげなく届いているものなのかもしれません。
そういうメッセージが自然と内側から沸き上がってくる人は
やっぱり只者ではない気がします。
セミナーは下ネタ満載。
言葉遣いも、色々な意味で直接的です。
アメリカには、きっとスタンダップ・コメディに見られるような笑いのセンスがあって
一人のスピーカーがステージ上で笑いを取りながら
話し続けるスタイルが自然なのかもしれません。
講演であれば、一方的にステージ上から話し続ければ良いわけですが、
NLPのセミナーでは、その技術を紹介するために
デモンストレーションを行うことが頻繁にあります。
会場からクライアントとなる人物を募って、
紹介する技術が効果を発揮しやすい問題をもった人を探す。
そしてステージ上に来てもらって、実際に問題に対する取り組みを行います。
バンドラーは、デモをやるまでの話の流れが、下ネタに溢れたコメディ調ですから
デモを始めるまでの雰囲気も当然、そのままの状態になります。
深刻さがない。
問題について話してもらうときも、共感的なカウンセリングの形とは違います。
そういう雰囲気の中でステージ上にデモとして出てくる人物も
やっぱり協力的というか、気楽で深刻さがない感じになりやすいようです。
普段だったら深刻に悩み続けているような自分の問題も
そういうステージ上で扱うときには、ちょっと普段よりも距離を置いて
過剰に思い悩むことなく扱える雰囲気になっています。
問題を抱えていても、それに自分が振り回されない状態になれていて
むしろバンドラーの雰囲気に飲まれて、
気軽に解決できてしまいそうな気分にさえなるかもしれません。
先日、僕が見たバンドラーのデモの動画は
過去の苦しいトラウマ的な記憶を解消する内容のものでした。
デモに出てきた男性は気軽に自分の問題を笑い話のように話ますが、
毎日、その記憶に数時間は気を取られているということでしたから
結構、日ごろは大変な想いをしていたものじゃないかと推測されます。
バンドラーは、その話を聞くときも気軽にオチャラケながら進めていきます。
独特の速いテンポの会話を続け、一定のリズムを保ち続ける。
するとクライアントも、そのリズムに巻き込まれてきます。
苦しい記憶によって嫌な気持ちになるパターンを解消するための作業も
完全にバンドラーのリズムで進みます。
クライアントのペースでやらないのが特徴でしょう。
そこまでのセミナーの流れで参加者全員を自分のリズムに巻き込み、
会場全体の雰囲気をコントロールできる状態を作っているからこそ
そのような速いペースでクライアントに指示を出せますし、
その指示通りに作業をこなしてもらうこともできると考えられます。
バンドラーのデモのやり方を、その部分だけを切り取って学び、
同じように自分のクライアントに対処しようとすると
セラピストは上手くいかずに苦労することもあるだろうと推測されます。
一対一で相談を受けるようなケースで
過去の苦しい記憶に対処することがあったとしたら、
その人は元気を失っている場合も十分に想定されます。
それに対してバンドラーの真似をして対処しても
ペースが合わずに必要な作業を効果的にこなせない可能性があります。
バンドラーの特徴は、自分のペースにクライアントを巻き込んで
リーディングしているという部分にもあると言えます。
クライアントのいつも通りのやり方を続けていると
いつも通りに問題に苦しむパターンを再現しやすい場合もありますが、
バンドラーは、クライアントを「問題に苦しむモード」から
「問題をお茶の子さいさいで解決するモード」に移しているのかもしれません。
動画で見たデモにおいても、
「苦しい記憶と嫌な気持ちを切り離すための作業」を
スピーディに行っていました。
その作業のときだけ、バンドラーの真剣な雰囲気が増します。
オチャラケ感が減る。
でもリズムとスピードはそのままです。
指示的に、クライアントをリードするように作業を進め、
一通りの必要な内容が終わった時点で、少しずつ気軽な感じを増やしていく。
終わった感想を聞きながら、上手くいったかどうかを確認するときも
やっぱり笑いを入れながら、冗談半分に話を進めます。
デモに出たクライアント役の人も楽しそうで、不思議そうな様子。
そこで、バンドラーは自分の状態を一気に変えます。
会場も、デモに出ている人も、その変化には気づいていない感じ。
とても真剣な表情と、声のトーンになります。
少し身を乗り出して、親身な姿勢を取ります。
そして質問をする。
「過去について、一番良いことを知っていますか?」
聞かれたクライアント役の男性は、その雰囲気の違いに気づいていません。
気軽な感じのままのように聞き返す。
そこでバンドラーは、さらに声を少し低くし、
真剣で、優しさと説得力のある雰囲気で付け加えます。
「もう終わっているということです」
言われた男性は、少し茫然とした表情。
雰囲気の違いを感じ取り、気軽に笑っていた表情に真剣さが戻りつつある途中の顔ですが
完全に笑いが消えるまでもいかないぐらいで止まっています。
予想もしていなかったメッセージだったのでしょう。
これまでの一見するとフザケ半分のような雰囲気からのギャップがあるからこそ
大事なメッセージが際立ちます。
その優しいメッセージがジワリと感じられてきた頃には、
すぐに元のオチャラケた雰囲気に戻っていく。
技術的に言えば、ループを閉じることで
一番大切なメッセージを脱線していた話のように意識から外そうとしている、
とも受け取れます。
そうすることが、より効果的だという可能性もあります。
もしかすると、表面的な印象に残っている必要はないという考えなのかも。
大事なことは、本人の心の奥に残っていれば良い、と。
こういう間接的な優しさがカッコイイなぁと思います。
良い話や名言は、調べれば引用することができます。
が、本当に、目の前の一人の心に響く言葉は
さりげなく届いているものなのかもしれません。
そういうメッセージが自然と内側から沸き上がってくる人は
やっぱり只者ではない気がします。