2011年06月15日

失敗とフィードバック

「失敗はない。フィードバックがあるだけだ。」
という考え方があります。

研究をやっていた人間には、いたって当たり前の発想です。
「ネガティブデータ」という表現が作られるぐらい、
仮説と異なった結果が得られることは良くある話なんです。

ですから、「『そうではない』ことが分かった」という意味で
得られたものはあると考えるわけです。

そうやって可能性をつぶしていく。


日常の様々な場面において、失敗を嘆きがちな人にとっては
この言葉を意識しておくことが役立つでしょう。

とはいえ、こういう便利な言葉を鵜呑みにするのも危険です。

「失敗をフィードバックに変える」という「失敗から学ぶ」発想にも
注意すべきところがあるんです。


その1つは、感情の取り扱い。

失敗したことによる悲しみや怒りにフタをするのは賢明ではありません。
わだかまりを抑え込むことにエネルギーを消費します。
疲れます。

その消耗感すら無視して、「次こそは!」と力を無理に出そうとすれば
その負担が積み重なっていく場合もあります。

悔しかった、残念だった…、
その気持ちは大切なものです。

それを無視して、望ましい結果が得られなかったときに
「この失敗から何を学んだだろう?」
とすぐに考え始めるのは無理があります。

学びを考えるのは、時間が経ってからのほうが安全です。


このように感情の扱いに注意しないといけないのは、
「失敗だ!」と捉えているからです。

怒りや悲しみなどの感情が動く以上、
本人の中で「残念な出来事」として捉えられているわけです。
「失敗」だと捉えているから、残念なんです。

口では「失敗はない、フィードバックがあるだけだ」
なんて言いながらも、残念な気持ちが沸いてきたとしたら
その時点で、「失敗だった」と認めているんです。

上手くいかなかった結果を「フィードバック」として捉えたら、
「あぁ、こっちじゃないんだ。じゃあ、こうかな?」と
気持ちが自然に次へ進むことが多いでしょう。

少なくとも、好奇心に近い気持ちが表れると思います。

結果が出る前から、
 上手くいかなかったとしてもフィードバックがある
ものとして取り組むことができる。

すると、フィードバックが得られるように行動するようになるんです。

ここが重要です。

「上手くいかない」という状態は無限にあります。
予想していたこと、期待していたことと違う結果は全て
「上手くいっていない」結果と言えるでしょう。

色々とある「上手くいかなかった」結果から
フィードバックとして有効な情報を得る。
そのためには、「上手く失敗する」必要があるんです。

失敗を前提に行動するわけではありませんが、
効果的なフィードバックが得られるように
最初から工夫して取り組んでいると、得られるものが多いわけです。

結果が出る人は、失敗の仕方も上手いんです。


プロゴルファーは、打つ前に毎回同じ動作をします。
狙った方向に、まっすぐ構えられるように練習をします。
姿勢や目線を同じにできるように工夫をします。

これらは全て、毎回同じように打つための手順だといいます。

いつも目標に向いてまっすぐ構えて、同じ姿勢で、
同じようにスイングをして、ボールを打つ。

その結果、予想よりもボールが曲がったとします。

いつもと同じように構えているから、
スイングのどこが違っていたかが区別できるわけです。

スイングの影響だったのか、風の影響だったのかも、
打つ前からフィードバックが得られる準備をしているので
次に活かす学びが得られるんです。

まさに、ミスショットをフィードバックに変えられるんです。

これが素人になると事情が全然違います。

打ったらボールが右に行った。
「おかしいな。ミスショットだ。どうも今日は右に飛ぶ日だな。」
これだって失敗から学んでいるとは言えるでしょう。

ただ、分析が足りません。
では、どうすれば分析ができるのか?

そのためには、分析ができるように
準備をしておく必要があるんです。

ボールを打ってみて、右に飛んでいくミスだったとします。
そこから分析をしようとしても、
・最初から右を向いて立っていたのか、
・スイングが悪かったのか、
・風が吹いていたのか、
を後から思い返して整理するのは大変なんです。

フィードバックを得たつもりが間違って学んでしまう。
本当は右を向いて立っていただけだったのに、
「今のは、打つときに腰が開いたな」
なんて考えてしまえば、次からのショットに悪影響が出ます。

間違ったフィードバックを取り入れ続けると、
どんどんと悪い方向に進んでいく場合だってあるんです。

効果的なフィードバックを得るにも技術がいるということです。


つまり、フィードバックの手に入れ方にも
上手くいかない方法があるわけです。

「失敗はない、フィードバックがあるだけだ」と言い続けながら
フィードバックを得る方法に失敗し続けている。
この言葉を信じているからこそ、逆に
「失敗の仕方に失敗している」ことに気づけなくなっている。

…そういう皮肉な事態は避けたいものです。

フィードバックが上手く得られているかどうかにも
フィードバックをしていく視点が大切じゃないでしょうか。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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