2011年08月27日

コミュニケーション能力の中核

最近は、「コミュニケーション能力が大切だ」という話を良く目にします。

コミュニケーションの手法にも色々な流派がありますし、
コミュニケーションをテーマにしたセミナーも沢山あるようです。

「コミュニケーション能力」というものが曖昧なので
具体的に何が求められているのかを語るのは難しいですから、
コミュニケーションのセミナーをやれば、受講生が期待してくることと
実際に扱われる内容との間にギャップがあるのも仕方ない気がします。

とはいえ、曖昧な「コミュニケーション能力」というものの中でも
「正しい」とされる方法を表面的に使えるようにするのではなく、
あらゆるコミュニケーションの場面で効果を発揮する能力もあるはずです。

それを能力として訓練しようとしているセミナーは
僕自身もしたことがありませんし、わざわざ扱う人もいないんじゃないでしょうか。

僕は、「その能力」の重要性を、より一般化した形でトレーニングの題材として
扱うことは良くありますし、実際に自分でも中核となるぐらい重要だと感じています。


それは話の聞き方や、メタモデルやリフレーミングといった技術ではありません。
共感能力とか気づく力といった抽象的なものでもありません。

「コミュニケーション能力」として非常に重要な能力。
自然とコミュニケーションが上手い人が身につけてきた能力。

それは
 『他人の不快感を読み取る力』
です。

人は、本当に些細な筋肉の変化に、不快感を表現します。
わかりやすく露骨な不快感に気づけるのは必須として、
いかに微妙な表情や姿勢、仕草などの変化に表れた不快感を
敏感にキャッチしていくことができるかが、能力だということです。

この能力は、観察力の一部には含まれると言えそうですから
観察力のトレーニングを積んでいけば自然と向上していくと考えられますが、
他の感情に気づく観察力以上に、不快感に対する感受性は重要です。

なぜなら、不快感だけは全てのコミュニケーションの最中に
表現される可能性があるからです。

そして、かすかに表現される不快感は、大きな不満の感情へ届くよりも
先行する形で出てくるものでもあります。


かすかな不快感が表現されていることに気づき、
その瞬間に自分の対応を変えていくことができれば、
あらゆるコミュニケーションでの致命的なミスを避けられます。

誰かが作った理論や有名な技術を忠実にこなせることよりも、
相手の不快感に気づいて、自分の対応を変えていけるほうが有効でしょう。

理論や技術が当てはまらない例外のような場面は存在しますが、
相手が不快に思うことを避けていれば、その例外にすら対処できます。

多くのミス・コミュニケーションは、ミスに気づくタイミングが遅いんです。
「上手くいかなかった」と判断するタイミングが遅いんです。

営業で契約を取れなかったときも、
思わぬ会話から関係性が崩れてしまったときも、
相談に乗っていたつもりが話を混乱させてしまったときも、
最終的にダメになったときに「ミス」の判断をすることが多い気がします。

その段階まで進んでしまう前に、一番最初の不快感の時点から
自分の対応を変えるように対処していったとしたら
そこまで大きなミスにはならなかったかもしれません。

少なくとも、小さな不快感に対処するように工夫を続けていれば
少しずつ相手を不快にさせない方法が身についてくるんじゃないでしょうか。


もちろん、世の中で「コミュニケーション能力が高い」と言われる人の中には
些細な不快感には目も向けず、相手に喜んでもらうことを優先する人もいます。

本当に相手に喜んでもらえれば、些細なミスは帳消しにできるかもしれません。

ただ、僕の見立てですが、、そういう「喜んでもらう」派の人には
多数の大ファンが集まってくるとしても、その割合は100%ではないはずです。

その人の「喜んでもらう」ための方法がピッタリと当てはまって
その人の大ファンになる人が、ある一定の割合で存在しているのでしょう。

そして、ファンにならない人のことは深く考えない。

ファンにならなった人たちは、その人のコミュニケーションに対して
不快感を表現していたかもしれません。

しかし、ビジネス的に考えれば、全員に嫌われないことよりも、
相性の良い人たちを対象にしてファンになってもらったほうが上手くいく。

このような「喜んでもらう能力」、「ファンを作る能力」は大切だと思いますが、
僕は、それを「コミュニケーション能力」とイコールだとは考えていません。

コミュニケーションが苦手でもファンになってもらうことはできるわけですし、
「喜んでもらう能力」の高い人が、『不快感を読み取る能力』を追加すれば
さらに多くの人に喜んでもらえる可能性だってあるのですから。

野球に喩えると、「喜んでもらう能力」は、ボールを遠くに飛ばす能力。
『不快感を読み取る能力』は、ボールをバットに当てる能力。

当たればホームランでも、空振りばかりでは話になりませんが、
とりあえず絶対に空振りをしないのであれば、
ヒットやフォアボールの確率はゼロではありません。


不快感を読み取るのは、マンツーマンの対話だけではありません。
大勢を相手にコミュニケーションを取る場面でも、
文章だけでコミュニケーションを取る場面でも、
注意深く読み取ることが大切ではないでしょうか。

「コミュニケーション能力が大切」だと言っていたとしても、
本当に高度なコミュニケーションの技術が求められる場面は限られます。

世間一般で「コミュニケーションが大切」と言っているのは、
それだけコミュニケーションが問題になることがあるとも捉えられるでしょう。

その意味でいうと、求められているのは、
 コミュニケーションで大失態をやらかさないこと
なのかもしれません。

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
おしらせ
 ◆ セミナー情報 

New!

《コミュニケーション講座》
 〜人を育てる指導力〜

【日時】 
  2019年6月16日(日)
   10:00〜16:30


【場所】 
  北とぴあ 601会議室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《瞑想講座》

【日時】 
  2019年6月22日(土)

  午後の部 13:30〜16:30
  夜間の部 18:00〜21:00

【場所】 
  北とぴあ 第2和室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《怒りの取り扱いマニュアル》
 〜期待の手放し方と
  ゆるしの技法〜


【日時】 
  2019年7月6日(土)
     7月7日(日)
   10:00〜18:30


【場所】 
  滝野川会館

   JR上中里駅より7分
   JR駒込駅より10分
   南北線西ヶ原駅より7分

詳細はこちら>>
次回未定


 ◆ 過去の講座 

《新カウンセリング講座》
 〜まとめと実践〜


当時の内容はこちら>>


《勉強会》 

【テーマ】 変化の流れを考える

当時の内容はこちら>>
次回は未定



 ◆ お問い合わせ 
  技術向上、
  コンサルティング、
  スーパーバイズ、
  執筆・講演…

  諸々のお問い合わせはこちらへ>>



ホームページ
バナー1


プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
Archives
最近のコメント
QRコード
QRコード