2011年10月28日

気軽なカウンセリング

日本におけるカウンセリングの知名度は決して低くないと思いますが、
カウンセリングを利用する割合というのは、かなり低いようです。

帰国子女の知人に聞いた話だと、アメリカでは
風邪を引いたら病院に行くのと同じぐらいの感覚で
気軽にカウンセラーに連れていかれるということでした。

何かトラブルがあったら、第三者に話を聞いてもらう。

弁護士の数も日本とは比べ物にならないぐらい多いわけですし、
「第三者」という立場を強く必要とする文化のように思います。

まぁ、あのコミュニケーションのスタイルを見ていれば
「自分」と「相手」という区別はあっても、NLPの知覚位置でいえば
「第一のポジション」(「私」)にいる割合が高いことが窺えます。

「相手の立場にたってみる( stand in other's shoes )」という表現こそあれ
「第二のポジション」や「第三のポジション」にいることは少ない気がします。

だからこそ、人間関係でもめることも多いのでしょうし、
訴訟に進むことも多くて弁護士が求められ、
「困ったら第三者に相談する」という流れも生まれやすいと考えられます。


それに比べると、日本では「誰かに相談する」という発想自体が少ない。
井戸端会議や居酒屋での愚痴がメインかもしれません。

例えば、区役所や市役所などでは
弁護士に短時間の無料相談をしてもらえたりするそうですが、
そういうものでさえ利用しようという人は限られていると思います。

困ったことがあったときに、「困っている」段階で相談をしない傾向がある。
困っていることを自分なりに解決しようとして「解決方法」の段階で
それを提供してくれる人のところへ行くわけです。

困っていることが何なのか、どうすれば解決できるのか。
その部分の見立てを素人である本人がやってしまって、
解決策だけをプロに求めに行く、とも言えます。

例えば、頭が痛かったとして、
「風邪かな」と判断して病院に行く人もいれば、
「頭痛薬を飲めば大丈夫」と判断して薬局に行く人もいる。
同じ薬局に行っても「疲れ目から来ているな」と目薬や疲労回復薬を買ったり、
「肩こりから来ている」と判断してマッサージに行ったり、
「疲れがたまっている」と判断して温泉旅行に行ったりするかもしれません。

理想をいえば、「頭が痛いんです」と言って相談できる相手がいて、
その人がカウンセリングや診断を進めた結果として
頭痛薬や目薬、マッサージや温泉などの処置を指示できると望ましいはずです。

しかし、それは難しいので、本人の好みのところへ行くのが現状でしょう。

日本の場合は、その選択肢の中に
 「ストレスかな」と判断してカウンセラーに行く
というのが含まれにくいわけです。

まぁ、風邪を引いたときに病院に行くかどうかさえ人それぞれなのですから
病院に行かない人がいるのと同様に、カウンセラーに行かない人がいる
と考えてしまうこともできるかもしれません。

体に不調があっても、整体やマッサージに行くかどうかも好みですし。

そこは知名度の問題ではなく、「困ったときにどう対処するか」に対する
文化的な姿勢も関係していると思います。

困ったことに対処する段階までイメージしてからサービスを利用する。
そうなれば、内容や効果が分かりにくいところには手を出しにくいでしょう。

カウンセリングに通うということをネガティブに評価する他者の目というのは
意見として耳にすることがありますが、現実的にどれぐらいのものかは
僕には定かではありません。

むしろ、カウンセラーが何をしてくれるのかが分かっていないから
自分の現状への対応策の候補としてカウンセラーが上がらないんだと思います。

その結果、早めにカウンセラーに行っておけば楽だった問題が
かなり深刻な「症状」と呼ばれる状態に近くなって、
別の解決手段へ目が向くようになることもあると考えられます。

日本において「困ったら誰かに相談」という文化が
浸透していくかは分かりませんし、そうだったとしても
それには時間もかかるような気がします。

日本では、まだまだカウンセリングが「遅れていて」
アメリカのようにカウンセリングが「広まる」ときが来る…
と考えるのは、僕には実感が沸きません。

広まっていないから、隠れたニーズがある…
と考えるのもビジネス的には大事かもしれませんが、隠れたニーズが
病院に行くのと同じぐらい手軽なものとして広まると考えるのは楽観的でしょう。

カウンセリングが日本で今よりも広まるためには、1つの方法として
「カウンセラーのところに行くと、どういう効果が期待できるか」という中身を
多くの人に知ってもらえるように目指すことが挙げられると思います。

中身を知ってもらって、
「この状況だったらカウンセラーに行けば楽になるな」
という判断を、多くの人が選択肢として持てるようになれば
カウンセリングのニーズは高まっていくんじゃないでしょうか。


とはいえ、それは個人でできるレベルではありません。

カウンセラー側が、自分のカウンセリングで期待できる効果を示すことと
多くの人がカウンセリングで期待できる効果を知っていることとは違います。

現状で、カウンセラーが個人で中身を知らせたところで、
その情報にアクセスする人そのものが
カウンセリングを選択肢として既に持っている人なわけですから。

現時点ではカウンセリングの効果を知らない人が
カウンセリングの効果を知って、カウンセリングの情報を
自分から調べようとする方向に進んでいくには、
全体的な啓蒙活動が必要でしょう。

日本の場合、それにはテレビを使うのが効果的だと思います。
情報番組でカウンセリングの特集をするとか、
カウンセラーとして有名人を作り、テレビの露出を増やすとか、
バラエティ番組などでのコメンテーターとしてカウンセラーを出すとか。

テレビ番組で占い師やスピリチュアルな人たちがやっていたようなことを
カウンセリングのレベルでもやってしまう、という荒業も1つの手でしょう。

ただ、それよりも僕が効果的じゃないかと思うのは
芸能人やスポーツ選手が気軽にカウンセリングを使っている
という状況を作り出して、それをテレビで話してもらう、という形です。

芸能界が異常にストレスに満ちているであろうことは
ニュースから入ってくる悲惨な情報で想像に難くないところでしょう。

そんなストレスに満ちた芸能人を支えているのがカウンセリングです、
といったような様子にしていく。

現状は、ストレスに耐えきれなくなった芸能人が病院に行って
それから復帰してくることはあっても、カウンセリングではなさそうです。

限界を超えて病院に行く前に、カウンセラーが定期的にケアをする。
そういう存在としてカウンセリングの知名度が上がっていくと
ポジティブなイメージとともにニーズも増えていくんじゃないかと想像します。

有名人がやっている、というのは強い影響力を持っていると思うんです。

多少、「贅沢なもの」というイメージもついてしまうかもしれませんが。

どこを目指すかの問題もあるでしょう。
多くの人が知っていて、選択肢として気軽に選べるものにするか、
セレブ御用達の自分自身のケアとして嗜好品にするか。

後者の場合には、エステとか美容とかフィットネスとか
そんなイメージに近づいていくと思われます。

値段の幅も広がるでしょうが、同時に日常的なところとしても
広がりは出ていくように思いますから。

「困ったからカウンセリング」だけでなく
「より良い毎日を過ごすためにカウンセリング」というのも良さそうです。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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