2012年01月15日

スローモーション

今の住まいは、壁が薄いのか、窓が大きいからか、
なぜか外の音を良く拾います。

おそらく反響しているんでしょう。
完全にクッキリと聞こえるんです。
部屋の中で音声が鳴っているぐらいにハッキリです。

なので、目の前の道で立ち話をされたり、電話をされたりすると
その会話の内容を一字一句もらさず聞きとれてしまいます。

せめて車通りが多かったり、電車が近くを通ったりすれば
雑音の中で聞こえる声になりますし、
街中のように多くの人が話していれば
それも雑踏の中の声として聞き取りにくくなるでしょう。

ですが、外も内も、基本的に音は少ない。
いわゆる「静かな」住宅街の感じがあります。

だからこそ、静かな中でハッキリと会話が聞こえると
その話を無理やり聞かされているような気分になってくるわけです。

他のことをしているときに会話を聞かされる。
それも耳元で大音量の感じ。
このことが僕にはストレスフルなんです。


で、それ以上に耐えられないのが
車でスピーカーから宣伝を流しながら走っている業者。

特に頻繁にやってきて、かつメッセージが不愉快な廃品回収業者は
不快感のアンカーが出来上がってしまっているぐらいです。

セミナー中に、たまたま会場近くを同じ業者の回収車が通ると
話をしている最中でも自分の中に苛立ちが上がってくるのが分かります。

セミナー会場ぐらいだと、僕の住まいとは比べられないほど
遠くから鳴っているように聞こえますから、
現実的に邪魔されている量は小さいはずです。

なのに瞬間的に苛立ちが出てくるということは、
まぁ、普段の繰り返しで作られたアンカーなんだろうと想像できます。


その業者が特に不愉快な理由の1つは頻度。
一日に同じルートを三回ぐらい、毎日通ります。

そんなに廃品は出ないでしょうに…。

当然、焼き芋の移動販売車と同様に、ゆっくりと走りますから、
スピーカーの音が聞こえ始めてから、聞こえなくなる距離に行くまでに
最低でも数分はかかるんです。

わりと遠い段階から聞こえてしまうぐらい、音を良く拾う部屋なんでしょう。
同時に、その業者の音量はデカイ。

一度、歩いているときに横を通ったことがありますが
違法なぐらいじゃないかと思う音量でした。

まず、この大音量を長時間にわたって、高頻度に聞かされるのがツライ。

しかし、もしこれが電車や高速道路の騒音だったら
多分、僕の場合、もっと不満は少ないと思います。

実際、以前に住んでいたところの前は大通りで
車通りが多くて、ひっきりなしに音が聞こえていましたが
そういうのは気にならないみたいです。

雑音としてバックグラウンドの扱いで処理できるんだと思います。

うるさい環境でも会話であれば相手の話が聞きとれるのに、
それを録音してしまうと全く聞けなくなってしまう。
そのように雑音は背景として無視しながら、特定の音に集中できるのと一緒でしょう。

一方、言葉になると、そうはいきません。
耳に入った言葉は、僕の頭の中で理解のプロセスにかけられます。

確実に、その言葉の内容を追いかけるようにリピートして
他に頭の中で聞こえていた思考の内容が聞こえなくなります。

考えが遮断されてしまうんです。
遮断されて、聞こえてくる言葉の内容に、頭の中が占拠される感じ。

何度もやってくる業者のスピーカーのメッセージは覚えているぐらいなので
知っている無駄な情報で頭の中を占拠されるのが不満なんだと思います。


ところが、業者の種類によっては、あまり不満を感じないのもあります。

大きな違いは、録音されたメッセージ。

内容ではなくて、話し方だと思います。

僕が不満を感じる傾向のあるのは、気持ちが入っていないヤツ。
棒読みでやられるのが嫌なんです。

音声を吹き込んだ人、つまり話し手側にとって
全く気持ちの乗らない、どうでも良い情報を読まされている感じを受けます。
自分が口に出している内容なんて、どうでも良い…、そんな印象。

聞いてほしいと思っているわけでもなければ
自分が楽しくてやっているわけでもない。

「だったら、言わなくたって良いじゃないか」という気分のように思います。

あまり不満を感じないほうの業者は、読んでいる人が上手いんです。
「上手い」というか、「素直」というか、もっと自然な会話に聞こえる。

なので、廃品回収の案内文ではあっても、
その内容を伝えようという気持ちが込められている印象を受けるんです。

こちらに対して話しかけてきているように聞こえる分、
聞こえてきている僕としても、そっちに気持ちを向け返すような気分なんでしょう。

気持ちの入っていないのが嫌なところは大きい気がします。

せめて、お経ぐらい安定したイントネーションだったら違うんですが、
気持ちが入っていないのに、不自然に音の抑揚だけあるのも不満。

イメージで言うと、小学校の卒業式に皆で声を合わせて言うような感じ。
「皆でカレーを食べた、はんごうすいさん。…はんごうすいさん!!」
「楽しかった修学旅行。…修学旅行!!」

もしくは、小学校の運動会で、慣れない子供がアナウンスをやるような。
「次は、6年生の組体操です。力を合わせた演技をごらんください」

日常会話では絶対にあり得ない、不自然に強調された抑揚。
小学生なら一生懸命やっている雰囲気が伝わって好感もありますが、
業者の録音は、一切の気持ちが乗っていないのに抑揚だけ強いんです。

もう、その辺の非言語的なミスマッチ感が
僕の注意だけを、ひたすら引っ張っていくようです。

非言語と内容が一致していること。
自然で聞きやすい言い方であること。
このあたりは、コミュニケーションで重要なんだろうと改めて感じます。


もう一点が、スピード。

聞きやすくしているつもりなのかどうか分かりませんが、
録音している音声は、これも不自然に遅いんです。

日常よりも2倍から3倍ぐらい遅い印象を受けます。

僕が作業をしているときは、頭の中で沢山の声が行き交いますから、
かなり早口で情報が流れている感じがあるんです。

そういう状態のときに、極端に遅い言葉が聞こえてくると、
その遅いスピードの言葉の流れに、一時的に頭の中が占拠される。

遅いのは読む速度もそうですが、間の取り方も遅いので音の空白があります。

「こちらは……廃品回収車です……ご家庭内で……ご不要になりました……」
と文節ごとに1,2秒の間がある。

この余計な空白の時間が「絶妙」に不快なんです。

一時的にスローな音に占拠された頭の中が、間の部分で解放されますから、
その空白の時間が続くと、僕の頭の中で早口な情報処理が再開されるんです。

空白の時間が終わる直前ぐらいのタイミングです。

なので、一瞬考えが再開した頃合いを狙って
見事にまた、遅くて不自然な言葉が頭の中を占拠する。

邪魔された→戻った瞬間に邪魔された→戻った瞬間に邪魔された→…
と、僕の中には気持ち悪いスピード変化が繰り返されるわけです。

分かる人にしか伝わらない喩えだと思いますが、
 『ウーマンラッシュアワー』のコント「バイトリーダー」と
 『スリムクラブ』の漫才が、繰り返し急に切り替わる
みたいな感じです。

多分、もっと普通の間の取り方、普通の話すスピードであれば
不快感も相当なレベルで減ると思います。

もしくはテープの再生速度を3倍ぐらいにするか。
それだったら、僕の頭の中のスピードが急にブレーキをかけられる不快感は
かなり改善されるような気がします。

まぁ、いずれにしても、僕には対処の方法がありませんが。


コミュニケーションとして不自然で、意味を伴わない音だけの表面的な言葉。
思考速度よりも数倍遅いテンポで流れる音としての言葉。

この組み合わせが僕には合わないみたいです。

真剣に仕事の打ち合わせをしている隣の席で
『戦場カメラマン・渡部陽一氏』のモノマネの練習をしている人がいる感じ
「みなさん……こんにちは……。渡辺……陽一……です。」
「みなさん……こんにちは……。渡辺……陽一……です。」
「みなさん……こんにちは……。渡辺……」

気になって考えられません。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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