2012年03月11日

感情と行動の関係

心理学のある一派は、人の反応を
感情・行動・生理反応に分けて考えるようです。

ある出来事がありました。
それに対して、特定の認知の仕方をするから
その結果、感情・行動・生理反応に変化が起きるんです、と。

例えば、ストレスがかかるときは、その出来事をストレス要因として認知して
その結果として、感情・行動・生理反応にストレスの反応が出る、というわけです。

この考え方は認知科学や、いわゆる脳科学とは違っているように思えます。
心理学では「”感情”とは、こういうもの」という『定義』があっても
それは外から観察者が見て取れるものか、本人が自覚できるものかに限られます。

一方、脳や認知のレベルで”感情”を考える人は、
”感情”の中身に注目することになります。
”感情”と呼んでいるものは、具体的に、どのような身体的な変化なのか、と。

つまり、”感情”を「心」の問題として、「心」のレベルだけで考えるのが心理学の傾向。
”感情”を脳や神経系統といった「体」のレベルで考えるのが認知科学の傾向、
といったところでしょう。

感情とは、脳を含めた人間の「体」で起きている、何らかの変化で作られている、と。
もっと言えば、
「”心”というものが”体”の機能として、どうやって生み出されているか?」
を調べたいわけです。

ですから必然的に、”感情”と”生理反応”を分けて考えるということはなくなります。

心理学であれば、例えばストレスがかかると、
「こういう感情が生まれて、こういう生理反応が起きます」
となりますが、認知科学では
「こういう生理反応が生まれて、このときに本人が主観的に認知する”感情”は、これです」
という風に説明することになるんです。


体験的に理解していることを言語化していけば、
”感情”というのは、明らかに体の中に起きた変化に名前をつけたものに過ぎませんから、
僕にとっては認知科学的な解釈のほうがシックリきます。

で、重要になるのは、「主観的に本人が身体的な変化を自覚する」というところ。

ここで、「どれぐらい自覚しやすいか?」という程度に、個人差が出てくるようなんです。

ほとんど感じないようにしているか、体の変化があることに気づいても
それを自覚しながら、通常通りに近い対応ができる人もいます。

すごく敏感に体の中に起きた変化に気づいて、
その感情があることに対して、さらに気持ちを複雑に変化させる人もいます。

体の中の変化に対する自覚は低く、むしろそれが
すぐに行動の原動力となって、行動を変化させやすい人もいます。

例えば、「あー、イライラする!」とか「ムカつく!」などというのは
身体的な変化を実際に、その時点で自覚しているから生まれるものです。

僕の見た感じでは、日本人は、わりとこの自覚する傾向が高いように思います。

一方、「感情が高まると、すぐに行動に移す」傾向のある人は、
生理的な変化を解消させるための行動を無自覚にとりやすいと言えます。

程度問題として、
「感情に自覚しながら”行動したい”気持ちが抑えられない」ぐらいの人もいれば
「ほとんど感情として自覚することもなく”衝動”が沸き起こって行動する」ぐらいの人も
「何も自覚せずに、とにかく自然に行動してしまう」ぐらいの人もいるでしょう。

生理的な反応が解消しやすいタイプの行動があるんです。

おそらく、幼少期から、解消させることを自然にやってきた人ほど
体の変化を意識的に自覚するよりも先に、行動で解消しやすくなるんじゃないでしょうか。

ですから、生理的な変化を”行動の欲求”として捉え、
その”欲求”を自覚するか、程度の高い場合には自覚すらしないで、
実際の行動に繋げる、という反応の仕方があるということです。

言い換えれば、生理的に起きた反応を
”感情”として「イライラする」と捉える人もいれば
”行動の欲求”として「殴ってやりたい」と捉える人もいる、と説明できます。

ここは体験的な学習の結果でしょう。


そして、この「すぐに行動に移す」、「生理的な反応を意識に上げずに、行動に繋げる」傾向が
どうも欧米人に多いような印象があるんです。

といっても、僕のイメージする欧米人は典型的にテレビで見ているコミュニケーションの方法や
実際に見てきたアメリカ人、アメリカ文化の場所でのものですから、
「アメリカ人に多い」という印象である可能性も高いと思います。

つまり、アメリカの映画やドラマで見る様子も、実際に身の回りで見る様子も、
アメリカン・スタイルでは、
 「生理的な変化を”行動の欲求”として捉え、行動につなげる」
という傾向が高いんじゃないか、と。

その意味では、”欲求”に対して素直に、ストレートに行動を起こすようですし、
その表現の仕方も大きなものとなります。

日本人のほうが、「感情を自覚する」という1ステップが多い傾向があるとも言えます。

もちろん日本人にも、”感情”としてよりも”欲求”として自覚する結果、
衝動的に行動に繋げる傾向の人も見受けられます。

しかし、その程度としも、頻度としても、アメリカ人のほうが高く見えるんです。

ハリウッド映画なんかで見かける
 ついカーッとなって、感情を爆発させて物を投げたり、罵声を浴びせたりして
 すぐに我に返ったかのように「ごめんね」と言いながら抱きしめたりする
…そんなシーンは、日本人には少ないと思います。

日本人のほうが感情として自覚をしている分、
それを完全に発散させるための行動には移りにくく、
結果として感情が”わだかまり”として持続的に残っている印象があります。


特に、僕が最近で印象に残ったのは
大学での授業中のこと。

授業の残り時間は、あと10分。

そこで、唐突にカバンからサラダを取りだして食べ始めた人がいたんです。
いたって普通に、授業を聞きながら。

まぁ、それが良いとも悪いとも思っていない、普通のことだからするんでしょうが、
「お腹がすいたから食べる」というシンプルな行動の起こし方が、僕には驚きでした。

あと10分なんだから、終わってからでも良いだろうに、と。

授業中に、ただ食事をするだけの人は結構見受けられます。
アシスタントが教授の横でパンを食べていたりもします。
隣の席で、えらく匂いの強いパスタを食べている人もいます。

食べる行為自体が、特別なものではないのでしょう。

ですが、別にそれが失礼じゃないと知っていても、
「今やっている内容を考えれば、10分後に食べることにして
その場では今の作業をやっておいたら?」と思ってしまいます。

「お腹がすいた」という意識が、どれぐらいあるのか聞いてみたいものです。
見ていると、「食べたい。だから食べる。」ぐらいシンプルに見えます。

かなり直接的に、生理状態と行動が繋がっているんだろうと思いました。

”空腹感”という認識をしていれば、その感覚の強さを識別できるでしょう。
「すごくお腹がすいている」とか「小腹がすいている」とか。
すると、お腹のすき具合いに合わせて、食べる量を調整したり、
食べる時期を考えたり、どれぐらい我慢できるか予測したりすると思います。

一方、空腹時に起きる身体反応を「食べたい欲求」と結びつけて解釈していたとしたら
空腹度合いを意識するというよりも、欲求に従うかどうかで考えやすいと思われます。

そこで、「食べたい欲求」に従うことを選択し続けていれば
「食べたい。だから食べる」を繰り返して、
必要以上のカロリーを摂取しやすくもなるはずです。

アメリカ文化の食べ物が、そもそも高カロリーのものが多いからだけでなく
空腹時の生理反応に対する自覚の仕方にも、肥満率の高さが関係しそうです。

そのように生理反応を”行動の欲求”として解釈するような対応の仕方が
習慣として定着しているということは、そうした内的なプロセスであっても
幼少期から「見て学ぶ」スタイルの学習が起きている可能性を推測させてくれます。

そんなことを思うと、色々と違う世界で起きていることを見られたら
理解の幅も広がるような気がしてきます。

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
おしらせ
 ◆ セミナー情報 

New!

《コミュニケーション講座》
 〜人を育てる指導力〜

【日時】 
  2019年6月16日(日)
   10:00〜16:30


【場所】 
  北とぴあ 601会議室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《瞑想講座》

【日時】 
  2019年6月22日(土)

  午後の部 13:30〜16:30
  夜間の部 18:00〜21:00

【場所】 
  北とぴあ 第2和室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《怒りの取り扱いマニュアル》
 〜期待の手放し方と
  ゆるしの技法〜


【日時】 
  2019年7月6日(土)
     7月7日(日)
   10:00〜18:30


【場所】 
  滝野川会館

   JR上中里駅より7分
   JR駒込駅より10分
   南北線西ヶ原駅より7分

詳細はこちら>>
次回未定


 ◆ 過去の講座 

《新カウンセリング講座》
 〜まとめと実践〜


当時の内容はこちら>>


《勉強会》 

【テーマ】 変化の流れを考える

当時の内容はこちら>>
次回は未定



 ◆ お問い合わせ 
  技術向上、
  コンサルティング、
  スーパーバイズ、
  執筆・講演…

  諸々のお問い合わせはこちらへ>>



ホームページ
バナー1


プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
Archives
最近のコメント
QRコード
QRコード