2012年03月19日

学校で学ぶもの

ビジネスの現場で活躍している人の中にも
コンサルタントとしてビジネスのお手伝いをしている人の中にも、
大学院でMBAを取ることなく、効果的な対応ができている人がいます。

場合によっては、MBAで習うような一般論ではなく
そのビジネス現場特有の問題などに対しては、MBAで勉強した人よりも
遥かに的確な判断ができる人もいることでしょう。

また、大企業のビジネスと、中小企業のビジネスでは重視するところも違うでしょうから
MBAで学んだことが役に立つ場合も、そうでない場合もあるかもしれません。

ちなみに、ピーター・スキルマンという人がチームビルディングの研究として
『マシュマロ・チャレンジ』という実習を使った結果では、
この実習に対してMBAの学生は成績が悪かったそうです。

『マシュマロ・チャレンジ』は、
・20本のスパゲティの乾麺
・90cmのテープ
・90cmの紐
・1つのマシュマロ
を使ったゲーム。

この3つだけを使って、できるだけ高いタワーを作るのが課題です。
ただし、「頂上にはマシュマロが乗っている」必要があって、
何十秒間か自立していなければいけないという条件があります。
制限時間内であれば何回でも挑戦できます。

多くの人は、まずチーム内で課題の確認や主導権争いなどをして、
それから作戦を練り、計画を立てるそうです。

それから大部分の時間を、
「スパゲティとテープだけで、どれだけ高くできるか」
の検討に費やす。

で、最後の少ない時間でマシュマロを乗せようとする、と。

その結果、大体がマシュマロの重みでバランスを崩し、崩壊してしまうんだとか。

こういう風に計画優先で進め、最後の場面で失敗してしまうのが
ビジネススクールの生徒だったというのが彼の話です。

一方、一番良い成績を残すのが幼稚園児。

ビジネススクールの生徒が最適な計画を立てるようトレーニングされているのに対し、
幼稚園児は、とにかく試していく。

マシュマロを持って、マシュマロを乗せた構造物を立てることを繰り返します。
思考錯誤と実際の試作品の数が多いわけです。

「とにかくやってみてから考える」というスタンスが
役に立つケースも沢山あるということです。

中小企業のマーケティングなどでは
こうした試行錯誤の繰り返しを重視する手法がありますが、
このあたりは、おそらくMBA的な発想とは違うんじゃないかという気がします。

気軽にやってみて試しながら…、なんてできない場面では
的確に状況分析をして、計画を立てていくという手法のほうが役立つでしょう。

言い換えると、一般論で学ぶ方法が役に立つ時もあれば、
個別のケースに対しては役に立たない場合もある、という話です。

学校で学ぶビジネスは、どんなにケーススタディをやっても
それは一般論としての理論を学ぶための具体例にすぎず、
抽象度の高いパターンを学習するのが目的になっていると推測されます。


同じように、心理学として学校で勉強することも
人間の振る舞いを一般的なパターンとして知るためのものなんでしょう。

実社会で様々な人間関係を積んでいけば経験的に掴めてくる法則。
それを一般的な傾向として学んでおこう、というのが心理学のように思います。

まさに、大学を卒業して、そのままビジネススクールに行ってMBAを取り、
それから就職してビジネスの現場に踏み出していくような手順です。

実際の現場としての人間関係で、多くの人の振る舞いと向き合い、
そこと濃密に関わってくれば、経験的に掴めてくるパターンがあるわけです。
それを学校にいる間に知識として仕入れることができるのが
心理学の1つの大きなメリットでしょう。

もちろん、MBAを取っていなくても、ビジネスマンや
コンサルタントとして活躍する人がいるのと同様に、
心理学を大学で勉強しなくても、人の心や振る舞いを的確に理解できる人もいるはずです。

その一方で、MBAを勉強したからビジネスマンやコンサルタントとして活躍できる人もいて、
同様に、心理学を勉強したからこそ、人の行動や気持ちを理解して
関われるようになった人も沢山いることでしょう。

まぁ、ビジネススクールで学ぶ知識と、営業成績が直結しないのと同じように、
心理学で学んだことと、コミュニケーション能力も直結しないわけですが。


学校で学べることは、一人の人生では体験できない情報量を
凝縮した知識に変換されたものじゃないかと思います。

実際の企業では何十年もかけて出世しながら経験を積んで学んでいく経営の方法を
多くの先人がパターンとして効率化した知識の形で学べるのがビジネススクール。

実社会のコミュニケーションを通じて、長年かけて人の心や振る舞いを理解するものを
研究結果から一般化されたパターンとして学べるのが心理学。

社会に出てからでもビジネススクールに入ってMBAを取る人がいるのは、
大きな会社の中で過ごした10年ぐらいでは、ビジネスの全体像には迫らないからでしょう。
ビジネスの実体験もある人が理論を学ぶのは面白いだろうとも想像します。

同じく、社会に出てから心理学を勉強し直すとしたら
自分の知らない分野をやるのが良いんだろうと思いました。
今まで接したことのなかった人を研究対象としたような分野。

それであれば、僕も楽しめるような気がします。

ただ、全体的にいえば、僕は順番が違うんだろうなぁとは思いますが。

それと、もう1つ気になるのが
ビジネススクールは最終的にビジネスへの応用されることが前提になっているのに対して、
心理学は必ずしも役立てようとしていないところです。

自分が経験したことのない分野、出会ったことのない人たち…
そこに対する研究を、実社会に役立てようとしている発想が感じられれば、
僕はその心理学の分野を楽しめるんじゃないかと期待しています。

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
おしらせ
 ◆ セミナー情報 

New!

《コミュニケーション講座》
 〜人を育てる指導力〜

【日時】 
  2019年6月16日(日)
   10:00〜16:30


【場所】 
  北とぴあ 601会議室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《瞑想講座》

【日時】 
  2019年6月22日(土)

  午後の部 13:30〜16:30
  夜間の部 18:00〜21:00

【場所】 
  北とぴあ 第2和室

   JR王子駅より2分
   南北線王子駅直結

詳細はこちら>>


《怒りの取り扱いマニュアル》
 〜期待の手放し方と
  ゆるしの技法〜


【日時】 
  2019年7月6日(土)
     7月7日(日)
   10:00〜18:30


【場所】 
  滝野川会館

   JR上中里駅より7分
   JR駒込駅より10分
   南北線西ヶ原駅より7分

詳細はこちら>>
次回未定


 ◆ 過去の講座 

《新カウンセリング講座》
 〜まとめと実践〜


当時の内容はこちら>>


《勉強会》 

【テーマ】 変化の流れを考える

当時の内容はこちら>>
次回は未定



 ◆ お問い合わせ 
  技術向上、
  コンサルティング、
  スーパーバイズ、
  執筆・講演…

  諸々のお問い合わせはこちらへ>>



ホームページ
バナー1


プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
Archives
最近のコメント
QRコード
QRコード