2012年03月15日

遺伝と進化の話

進化に対しては、分子生物学的に見ると
「有利な突然変異は存在しない」
という『分子進化の中立説』が主流になりつつあるようです。

この説を提唱したのは日本人の木村資生氏。

ダーウィン的な考え方をすると
生存に有利な進化をしたものが残ってくることになりますが、
遺伝子レベルで見ると進化とは、もっと中立なものだという考え方です。

例えば、人間がビタミンを必要とするのは、
それが全ての生物にとって必須な成分なのに
人間は体内でビタミンを作り出せなくなっているからです。

他の生物は作れる。
だから、わざわざ食物から取らなくても生存できる。
人間は自分で作れないから、必須な栄養素として摂取しないと生きられないわけです。

その意味では、人間にとってのビタミンと猫にとってのビタミンは違うんです。

人間はビタミンを作れない遺伝子の変異を持っていると言えます。
しかし、その変異が起きたときにも、食物から十分な量のビタミンを取ることができた。
それで、ビタミンを作れなくなる突然変異を持っていても生き残ることができた、
という風に説明ができます。

つまり、環境要因が不利に働かない限り、どんな遺伝子の変異も問題なく起こり得て、
それが沢山蓄積しているのが、今、地上にいる生物だと考える、ということです。

生存に有利な突然変異が起きて進化が進むわけではなく、
全ての変異は中立に、意味などなく、たまたま起こっていて、
大部分は「突然変異が起きても問題なく生存できたから進化の過程で残ってきた」
と考えるのが最近の主流だ、と。

もちろん、一部の遺伝子の突然変異は、たまたまその環境で有利に働くこともあって、
例えば、その変異のおかげで伝染病に感染しにくいとかがあれば
大部分の人が、その変異を子孫に残していくことになります。


で、このように進化を分子レベルで考えようとまではしない人たちが
進化というものを「有利なものが生き残る」という漠然としたアイデアで捉えて、
拡大解釈なんじゃないか?と思うほどの理論を展開する場合があります。

例えば、「人間には基本となる5つの性格要素がある」とする考え方を
「その要素を持っていると生存競争に有利だったから」とサポートしようとする、とかです。

1つの要素を挙げると、「協調性」は、群れの中で上手くやっていくために必要な能力として
それを持っているほうが有利でいられたために、その性格が残ってきた、と言うんです。

協調性に関する遺伝子はあるでしょうが、単独であるとは考えにくいので
そんなにシンプルに生存競争をベースには考えられないでしょう。

それに協調性が高い人もいれば、低い人もいるというバリエーションがあるのも
本当に有利で生き残ってきたのだとしたら、説明ができなくなってしまいます。

その説を証明する方法があるとしたら、
1万年前の人類の平均的な協調性のレベルと、
今の人類の平均的な協調性のレベルを比べて、
今のほうが協調性が上がっている、と示すぐらいなものです。
…やるのは限りなく難しいと思いますが。

こうした説に全体として感じられる印象は
「進化の目的に沿っているから」
という発想を持っているところでしょう。

「進化のためには、このほうが有利だから」と考えがちな気がします。

僕は分子レベルから考える傾向があるので、そういう発想を受け入れ難いようです。


ちょっと変わった話として、臭いに対する研究があります。

好意を感じる相手には、その匂いも好意的に判断する。
それを示すために、男性が何日間か着たTシャツをビニール袋に入れて
その匂いを女性の被験者に評価させるような実験があります。
で、実際の評価と比較をしてみる、と。

この結果を
「遺伝子的に相性のいい人は、良い匂いに感じる」
と説明する。

僕は逆じゃないかと思うんです。
「遺伝子的に良い匂いに感じる相手がいて、だから一緒にいても不快じゃない」

1つの好みの判断材料として、匂いの好みが遺伝子的に決まっているというだけ。

遺伝子的に相性が良いとまで解釈を広げるのは過激じゃないかと思います。


そこから、さらに発展して、
「同じ遺伝子を持っていると嫌な臭いとして感じる」
という見方をする場合もあるようです。

だから娘は父親の匂いを嫌うんだ、と。

もう、僕には違和感が沸きまくりです。

匂いの元を作る遺伝子と、匂いを感じる器官を作る遺伝子は別です。

仮に娘が父親と近い遺伝子を持っていることが関係しているなら
娘は自分の匂いだって嫌でしょうし、父親も自分の匂いが嫌でしょう。

しかも、母親は、父親の匂いを好意的に捉えていたはずじゃなかったんですか?
母親は相手の男性の匂いを、良い匂いに感じるという話はどこに行ったのか?

母親の遺伝子だって、一部を娘が引き継ぐわけです。
それだったら娘も父親の匂いを好意的に感じても良いでしょう。

人は自分の匂いに鈍感ですから、仮に父親が自分の匂いを感じないとしたら、
・母親は父親(夫)の匂いが好き
・父親は父親(自分)の匂いを感じない
・娘は父親の匂いが嫌い
というところから、大袈裟にいえば
 母:好き + 父:感じない → 娘:嫌い
なんて奇妙な変化が起きていることになってしまいます。

実際は、もっと複雑なことを考えないといけませんが
しっかりと遺伝子的に説明しようとしても難しい話なんじゃないかと感じます。

相性を考える上で、匂いは非常に重要な要素だと思いますが、
それと進化を結びつけて考えるのは飛躍し過ぎの気がするんです。


遺伝子は、相性に大きな影響を与えている可能性があります。
でも、それが人類全体の進化に有利だからかどうかは分かりません。

むしろ、もっとランダムなものじゃないかと僕は考えています。

どうやら僕の中には
「それと、これとは、別」
を違和感として感じ取る傾向が強くあるようです。

その傾向があるのは進化に有利だったから?
多分たまたまでしょう。

cozyharada at 23:21│Comments(0)TrackBack(0)clip!全般 | 心理学

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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