2012年05月24日

日米の情報伝達の違い

日本の学校の授業は、先生が一方的に講義をするのが主流だと思います。

生徒に手を上げて答えさせたりして参加の意欲を高める工夫はあっても
内容は先生の側に導かれます。

授業の前に先生は、内容をまとめておいて、
教科書よりも簡潔に要点だけをまとめたものが説明されます。

小中学校ぐらいだと、場合によっては、教科書のほうが簡潔になっていて
先生が補足情報を加えていくこともあるかもしれませんが、
テストに出る部分は教科書一冊全部ではないわけですから、
先生のほうがポイントを絞っていると言っても良いと思います。

なので黒板にも、まとめた情報を書いてくれます。
生徒にとっては、黒板を写すのが学校の勉強とさえ思えるんじゃないでしょうか。

歴史であれば年表に近づけて板書してくれたり、
理科だったら、覚えるべきポイントを図式化しながら書いてくれたりします。

その意味で、日本人は、まとめられた情報を理解するのに慣れているはずです。

それは会社のプレゼンや会議などにも引き継がれ、
資料には話の内容を要約したり、ポイントを整理したものが書かれます。

「図にして分かりやすくポイントを整理する」というのは
日本人にとって伝える手段として馴染みのあるものなわけです。

実際、本を読んでいても、日本の書籍の図表は
コダワリをもって作りこまれていたり、見やすかったりします。
見せ方には、マンガ文化の影響もあるかもしれませんが。

つまり、知って欲しいポイントが先に整理されていて、
それに沿って話を進め、情報を追加して理解を深めてもらう。
情報量が段々と増えていく形で学んでいくスタイルと言えます。


一方、アメリカの学校では、小学校の頃から既に、
先生は黒板をあまり使わないそうです。

生徒は自分でポイントを整理しながらノートを取る。

洋書の図は、日本の本と比べるとヒドイものが多いですが、
そもそも図式化することに慣れていないのかもしれません。

さらに、授業の始まりは本題ではなかったりします。
色々とディスカッションをさせて自分の考えを整理させて、
それと対比できる状態で、まとまった理論を説明する形です。

情報を与える前に、引き出すほうがあるわけです。

しかも漫然と個人の意見だけを聞くのでもありません。
事前に教科書を読んでくるように宿題が出ます。
副読書がある場合も多いそうです。

データによると、アメリカの大学生は、平均で
日本の大学生の4倍ぐらい本を読まされるとか。

何かのビデオを見て、本を読んで、先に詳しい情報を詰め込む。
それから授業に出て、意見を交換する。

ディスカッションによって学生同士で意見を交換させたり、
質問を振って考えさせることで多くの意見を引きだしたり。

いずれにせよ、学生は、自分の考えを明確化するのと同時に
他の人の意見を聞いて、テーマに沿った情報量を増やします。

と同時に、宿題段階の情報よりはポイントが絞られ
内容の整理は進んでいると考えられます。

その後で、先生が方向性を示しつつ、授業を進めていく。
色々と対比された考えをベースに、まとまった理論の位置づけが整理される、と。

ですから、情報量は最初に増やされて、そこから段々と減っていって
まとまったポイントに絞られていく流れだと言えます。


つまり、日本とアメリカでは、勉強における情報整理の流れが逆だということです。

ポイントが先に伝えられて、それに情報を付け加えて理解を深めていく日本。
先に情報量を多くしておいて、それを、まとめ上げてポイントを掴ませるアメリカ。

『勉強』という場においては、こういう違いがありそうです。


にもかかわらず、文章にしたり、議論をしたり、話で情報を伝えたりする場合は
傾向が逆になるように思えます。

日本人は、色々な可能性を上げて、具体的な状況を思い浮かべながら話を進め、
最後に、「うーん、だから、こんな感じ?」といって、まとまった意見に辿り着きます。

ビジネスの場面だと、「結論から先に言って」なんて言われたりするのは
普段のコミュニケーションの傾向が違っているからでしょう。

これは単純に伝え方の問題だけではありません。
結論がハッキリしないところとも関係します。

色々な事情があるんです。
多くの側面に注目して、色々と感じたことを伝えて、
良かったこと、悪かったこと、複数の可能性や選択肢…
とにかくテーマに関係することは、一度、思考のプロセスに上がるわけです。

それで、全部をひっくるめて結論を出そうとする。
色々な立場、色々な気持ちが考えに入っていますから、
どれか1つだけに注目して、他を無視するのは違和感があるのかもしれません。

すると
「うーん、どっちとも言えないかなぁ…」
「こっちはこうだし、”でも”、そっちだと…。
 だからといって、こっちには、こんなところもある…。”でも”やっぱり…」
「まぁ、強いて言えば、こっちのほうが良いような気もするけど、”でも”…」
という感じの答えになりやすいはずです。

一般化して、一まとめにできない事情に目が行っているんです。
例外があることに最初から気づいているから、100%の断言がしにくい。
強いて出した結論も、反対意見を聞けば「そう、そういう部分もあるから…」なんて。

「日本人は意見がない」と言われてしまうのは、この傾向と関わっている気がします。


これが英語になると、まず結論です。

そして重要なのは、少しずつ詳しくなっていく、というところ。

日本人が「結論から先に言え」と言われると
「先日の会議で話題に上がったプランの件ですが、A案が良いと思います。
 なぜかというと、実は先日…」
という具合に、結論の後は、一気に具体的な出来事に話が戻ったりします。

そこから話は色々な可能性や立場に移り、全ての情報を提示した後、
全部をひっくるめた結論へと、一気に辿り着く。
ただ、その結論部分だけが最初”にも”来ているだけになりがちです。

英語では、一気に具体例に行っては良しとされません。

「今回のケースでは、A案が良いと考えます。
 その理由は、A案のほうがコストメリットが高いからです。
 特に、海外市場を考えた場合には、A案の、この部分がコスト削減に有効です。
 コストメリットの高さは、次の3つの点で説明できます。
 1つは、製造面です。
 もう少し詳しく言うと、海外で製造することで、人件費と輸送費を抑えられます。
 人件費が抑えられるというのは、具体的には、…」

…こんな感じの流れ。
本当はB案のほうが環境に優しいとか、仕事の負担が少ないとか、
今いる社員の仕事を脅かさないとか、色々なポイントがあるかもしれません。

そこまで踏まえたとしても、「コストメリットが最優先です」という立場を説明すれば
あとは、他の要因には触れずに話を進めるのが一般的です。

すると反論の側は、「いや、そうじゃない。環境に優しいほうが重要だ」と主張して
「なぜなら…」といって、そちらの説明を少しずつ具体化していくことになります。

ある側面にだけ注目して、「そこが大事なんです!」と主張する。
あとは、その大事な理由を説明する。
これが「分かりやすい」とされるんです。

そのほうが、その意見を言っている人の価値観がダイレクトに分かるからでしょう。

ですから、便宜的に注目する価値観を変えれば、
ゲームとしてディベートができるわけです。

賛成・反対の立場を変えても議論ができるんです。

それは賛成の立場の時には無視していた部分に注目して、
そちらだけのメリットを説明していけば、反対意見としての主張になるからです。

つまり、アメリカ式の、英語における主張の伝え方というのは
まず最初に「結論としてポイントを絞る」ことをしている、ということです。

そして、そこから徐々に具体化していく、と。


日本の意見の伝え方は、
 具体的な事情を色々と考えて、話に挙げ、全体を網羅してから
 一気に、全てをひっくるめたポイントに絞り込む
という流れ。

アメリカの意見の伝え方は、
 先に意見のポイントを絞り込んでから
 あまり他の立場には目を向けずに、情報を補足していく
という流れ。

見事に、授業のスタイルと逆なんです。

日本の意見の伝え方は、アメリカの学校の授業のスタイルと似ていて、
アメリカの意見の伝え方は、日本の学校の授業スタイルと似ている。

なかなか興味深いところだと思います。

理由は分かりません。

1つの可能性としては…、

 学校で先に結論を教えてもらう癖がついている日本人は、
 自分で結論を導いて、ポイントに絞って説明する練習をしないため、
 出来事主体の”結論後回しスタイル”で話すようになる。

 アメリカでは、学校の頃から多くの情報から自分の意見をまとめ上げ
 それを他人と対比させながら、自分の立場を主張する練習をしているから、
 ”ポイント絞り込みスタイル”の話ができるようになる。

というストーリーも想像できます。

が、個人的にはシックリしません。
”何か見落としている側面がある気がします”
…まさに日本人的発想の傾向でしょうが。



ちなみに、アメリカの授業形式で、ポイントを絞るのを後回しにする傾向は、
セミナーなどにも引き継がれていると思います。

NLPのセミナーなどでは典型的に、解説をせずに
「じゃあ、まずは体験してみましょう」なんてやることが多いようですが、
それは単純にトレーナーが、そのスタイルで習ったからでしょう。

おそらく日本で最初の頃にやった人は、アメリカのセミナーに参加したでしょうから、
そこで”アメリカで一般的な授業形式”で行われているセミナーを体験して、
その流れをそのまま日本に入れたんじゃないかと思います。

もちろん、そのスタイルは、日本人にとっても効果的です。

ただ、『どういう効果があるのか』を分かって、意図的にそのスタイルにするのと、
単純にそれで習ったから同じようなスタイルでやるのとでは意味が違うと思います。

僕は、状況と目的に応じて、どちらにも違った効果があると思いますから、
それを使い分けられたほうが良い、という立場です。


個人的な体験談としては、両方の授業スタイルを味わってみると、
それぞれの効果は別物の印象を受けています。

平均的に授業への意欲を高めさせるのはアメリカ式でしょう。
考える力や自分の意見を伝える力を養えるのもアメリカ式だと思います。

ですが、情報を対比させたり、色々な立場を考えたり、
与えられた情報を整理して、まとめたりするのは、
日本式の勉強が良いような気がします。

まとめ方の見本を見せてもらっているわけですから。

何より、情報を伝達する上での正確さは、日本式のメリットでしょう。
学校教育では”正しい”情報もあります。
間違って覚えてしまうと、後々の学習を阻害する場合も多いわけです。

そう考えると、正確に情報を教え込んでいくには
考えさせるアメリカ式よりも、先に整理したものを伝える日本式のほうが
効率的に学習ができるんじゃないかと思うんです。

教育に求めるものによっても、この辺りの違いは影響するような気がします。

人へ影響を与える分野だからこそ、良く考える必要があると僕は思います。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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