2012年06月18日

カウンセリング”経験”が役立つ場合

コミュニケーションにおいて、
 相手を自分とは完全に別の人として捉えて、相手の立場になって考える
というのは重要な部分だと思います。

しかし、頭で分かっていても、できるかどうかは別問題。

そこでNLPでは、ポジション・チェンジと呼ばれる技法を使って
できる限り、自分を切り離して、相手の立場を体験しようとします。


自分の気持ちを切り離すと、相手の立場に入ることができるという発想には
そもそも、「意識していない範囲で、相手の気持ちや状況を感じ取っている」
という前提があって、だからこそ、本気で相手の立場だけに注意を向けたとき
今まで意識していなかったことが分かるようになるわけです。

確かに、その側面はあります。

情報としてインプットしてはいても、自分の立場や自分の気持ちに注意を向けるあまり
相手のことは気づかないようにしている、と。

普段から、相手がどういう行動をしているかなどは、
近くで見ていれば知っていることかもしれません。

どういう言葉を良く使っているか、何を言っているか、どんな態度か、
どういう出来事に対して、どんな反応をしているか…
などと断片的な情報はインプットされているわけです。

ただ、そもそも理解しようとしていない状況においては
その断片の情報は、バラバラのまま保存されていると考えられます。

それを、相手の立場になって、相手に意識を向けて、
その人の人物像を意識の中心に据えて、
これまでの情報を全てそこに統合していったとき、
今まで理解できなかった全体像が浮かび上がります。

断片では意味が分からなかったものが、全体として繋がりを見出されると
まとまった意味合いが見えてくる、という話です。


ということは、結局のところ、自分がピックアップできていた情報だけが
判断材料になっている、と言えます。

もちろん、それでも意識していなかったことに気づくわけですから
重要な意味があります。

ただ、そのことと
「どれだけ相手を理解しているかどうか」というのは
区別する必要があるでしょう。

自分がピックアップできていた情報だけが活用されるのであれば
どれだけ普段から相手に関する情報を取れているかがカギになります。

そこで1つのポイントになるのが、
「知らないことは見逃されがち」だという部分。

例えば、ブランド品に全く興味のない人の場合、
相手の持ち物がブランド品なのかどうかさえ分かりません。

すると、仮に、高級ブランドのカバンを持っていたとしても
「カバン」という大きなカテゴリーでしか捉えられないわけです。

その上で、さらに「カバンなんて持っていたかな」ぐらいのレベルで
意識から外れていきます。

せいぜい取り戻せるのは、「あぁ、カバンを持っていたなぁ」という程度。

鮮明に映像的な記憶が蘇れば、そのブランドのデザインも思い出すかもしれませんが
デザインが映像的にハッキリと浮かんでいても、その時点で同様に
ブランドの知識がなければ、やっぱり気づくことはないわけです。

逆に、「あぁ、カバンを持っていたなぁ」ぐらいにしか捉えていなかった人が
あるときにブランド品について知る機会があって、詳しくなったとしたら
相手に関する記憶が鮮明に蘇ったときに
「あ!あの人は、このブランドのバッグを使っていたんだ!」
と気づくかもしれません。

それと同じように、過去の人間関係について振り返って
当時の相手の立場を考えてみたとき、自分自身が当時よりも知識と経験を増やしていれば
当時は気づけなかったことに、今の知識を前提として気づける可能性が出てきます。

よくある話で言えば、自分が上司の立場になってみたときに初めて
新入社員のときの上司が見せていた態度の意味に近づける、とか
自分が子供を育てるようになって初めて
親が自分に向けていた気持ちに近づける、とかです。

経験と知識が増えると、相手の立場を理解するための視点が増えるわけです。
気づくかどうかの前に、気づきの素材の量を増やせるんです。


その意味で、相手の立場を理解してコミュニケーションを取りたいのであれば
直接的に相手のことを理解しようと努力をするだけでなく、
一般論として知識を増やしていくことが役立つと考えられます。

実際に、その相手が一般論に当てはまるかどうかは重要ではありません。

当てはまるはずはないので、一般論を基準にして
どこが、どのように、どれぐらい違うのかに注意が向けられます。

基準があるから判断ができるようになるんです。
基準があるから、着眼点が生まれるんです。

僕の場合、カウンセリングのトレーニングと実際のセッションの経験が
日常的な人間関係にも役立っていると思います。

幅広い年齢層、幅広い立場の人から、個人的な話を聞きます。
それを客観的な情報として蓄積していくと、
自分が経験したことのない内容でも、一般論としての知識を増やせます。

自分が持っていなかった着眼点を教わる機会も沢山あるということです。


そう考えると、コミュニケーションの技術や方法を学ぶだけでなく、
そもそもの経験として、自分以外の人生の片鱗に触れることが
非常に有意義だということになります。

カウンセリングのトレーニングは、カウンセラーになる人だけでなく
多くの立場に関する情報をクライアントから教えてもらえる点で
全ての人のコミュニケーションに役立つと思います。

特に、受講生同士の立場になると、年齢や社会的地位は意識されず
大人同士の人間関係が期待されます。

すると、例えば、親との関係に”わだかまり”がある人が
自分の親に近いような年齢の人を相手にカウンセラー役をやることで
親の立場の考えに触れることもできます。

自分の話でもない、自分が改善したい関係性の相手でもない、
第三者の立場から、しかも共感的に話を聞くことになる。

その少し「ひねった」情報収集の結果、
素直に、客観的に、かつ自分が意識している人物に対しては共感的に、
自分を取り巻く関係性に目を向けられるようになります。

「そうか…。ということは、あの人の場合も…。」
という発想が出やすいわけです。

それは技術レベルで得られるカウンセリングのトレーニングの効果ではなく、
カウンセリングの『経験』を通じて多くの立場に触れられるという
また別の観点からのメリットだと思います。


苦手な相手、改善したい人間関係があるのだとしたら、
カウンセリングのトレーニングを通じて、
自分が関係性を改善したい相手と似通った立場のクライアントから
色々と話を聞かせてもらうのが役立つ気がします。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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