2012年07月11日

JND

僕は、基本的にラーメンがそんなに好きではありません。
でも、たまに食べます。

最近、近所に有名な店の姉妹店みたいのができて
わりと人気があるようなんです。

とはいっても、最近はピークも過ぎて、行列はなくなりました。
平日なら昼時でも並ばずに食べられるぐらい。
混雑時を避ければ、スムーズに店内に入れます。

それで、僕がその店に行く理由は、あまりラーメンっぽくないからなんです。

味の組み立ては、明らかに昔ながらの醤油ラーメンの雰囲気ですが、
色々なコダワリが味と香りを重層的にしていて、
ちょっとした高級料理の風情があるんです。

なので、僕にとってはラーメンではなくて、別の食べ物の感じです。
良くできた1つの料理として、たまに食べに行っているわけです。


以前、昼間に食べに行ったとき、…多分、4回目ぐらいだったと思いますが…、
店長らしき人がいなくて、他の店員のお兄ちゃんが店を仕切っていました。
調理も他のバイトへの指示も、その人がやっていたんです。

食券を買って、店に入ってみたら店内の様子が少し違う。
そのときに気づいたぐらいです。
店長らしき人は、ピークを過ぎたから席をはずしているんだろう、と思っていました。

ところが。

でてきたラーメンを食べてビックリです。
いや、正確には運ばれてきた時点でビックリでした。

匂いがいつもと違う。
明らかに足りない成分があるんです。

スープの味も平べったくて、まぁ、本当に昔ながらのラーメンの感じでしょう。
好きな人は良いでしょうけど、僕はラーメンを食べに行っていなくて
その料理を期待していましたから、僕には全く別物に感じられました。

麺のゆで加減も甘くて、粉臭さが残っているし、
メンマにいたっては焦げていて、黒くなっている部分までありました。
多分、醤油か何かの入れ過ぎで焦げていて、苦いし塩辛いし…。

そこのメンマは香り成分を複雑にするために粗引きの黒コショウを使っていますが
その日は、黒コショウの粒さえ見えないぐらいでした。

麺のゆで加減は誤差が出ても仕方ないとして、
メンマは明らかに作り間違えているとしか思えなかったんです。

まぁ、全くの別物でした。


ピークを過ぎているとはいえ、店内は8割ぐらい埋まっていましたし、
僕と同じ(はず)のラーメンを食べている人も何人かいました。

なので、その人たちの前で、露骨に「失敗作だ」とは言えませんから
「最近、意図的に味を変えたんですか?」と聞きました。

すると
「いえ、そんなことはありません。同じですよ。」
というので、
「これで同じなんですか?」
と聞きました。

「はい、いつも通りです。」
とのことでしたから、
「そうですか。」
といって、大部分を残して帰ってきました。

気づかないなら、無駄だと思いますので。
別に不愉快ですらありませんでした。

もう一回、店長らしき人がいるのを確認して来てみよう。
それでダメなら、もう来なければいい。
そういう結論です。

ちなみに、こういうとき、僕の食べていたドンブリの上には
2本の箸がXの形に交差して置かれています。
「バツ!」というメッセージを、ささやかに提示しているんです。
せめてもの反発。

ちゃんと美味しいときは、西洋マナーと同じく、
お箸とレンゲがドンブリの右側に綺麗に並んでいますが。


どういうわけか、僕は小さいころから味の違いを細かく感じ分けていたようです。

善し悪しではなくて、違うかどうかを意識していたんです。

細かいのは味覚に始まったことではありませんが
自分が細かいことを気にしていると自覚したのは、味が最初でした。
同級生と味への感想が違ったからです。

今は、自分がどういう感覚への意識の向け方をしているから
そのような感じ方になっているかが言語的に説明できますが、
僕には基本的に細かい違いを気にする傾向があります。

幼少期から、ウチのおばあちゃんがいつも「美味しい、美味しい」と言っていたのを聞いて
「今日のは、この間のと味が全然違うのに、同じ感想なんだ…」と思っていたものです。

今、コミュニケーション技術の一環として観察力を磨くように努力をしてきて
以前よりも、きっと多くの違いを捉えるようになってきているはずです。

なお、同じような情報の中で、どれぐらいの違いが出たときに「違う」と感じるかを、
「JND」( just noticeable difference )と心理学では呼びます。

その意味では、僕はJNDを小さくするように努力してきていて、
ラーメンに対してもJNDが小さいために、「いつもと違う」と判断していたのでしょう。


思えば、僕はこのJNDの小ささとコダワリの強さのせいで
なかなか他の人から理解してもらえない習慣を持っていました。

僕は、好きなものは、とても大事にしたいんです。
想い入れが強いからこそ、我慢できないことが多くなるんです。

で、僕は「蕎麦」が好きです。
想い入れが強い。

ですから、蕎麦屋には行きません。
まず行きません。

よほど「美味しい」と思える蕎麦屋でないと、ガッカリするからです。

セミナーの昼休み、他のトレーナーや受講生の方と一緒に昼食へ行くことがありました。
外に昼ご飯を食べに行く機会が多かったんです。

それで当時、なぜか一緒にいた人の多くが蕎麦を食べたがっていたんです。
しょっちゅう「蕎麦に行きましょうよ!」と。

僕は協調性を優先するので、仕方なく蕎麦屋について行っていました。
ですが、内心は本当にガッカリしていて…。

結局、僕はその蕎麦屋で一度も蕎麦を注文しませんでした。
見た目で味が想像できますから。

いつもご飯物か、うどん。

「原田さんは、蕎麦よりも、うどんが好きなんですか?」なんて聞かれたりして。

本当は、蕎麦が大好きなんです。
でも、好き過ぎて、ほとんどの蕎麦は食べたくないんです。
ワガママの度が過ぎてしまっているんです。

うどんは、それほど好きな食べ物ではないので
あまりコダワリなく食べられます。
許容範囲が広いんです。

でも蕎麦は厳しいみたいです。


そう考えると、はたして自分は損をしているんじゃないか、という気がしたりもします。

細かいことが気にならなければ、もっと楽しめることがあるんじゃないか、と。

ワインのソムリエは、細かく味の違いを感じ取れるようです。
その人にとっては100万円のワインなんて、感動も尋常じゃないんでしょう。

ワインが好きじゃない人は、1000円のワインも、100万円のワインも
同じように楽しめるのかもしれません。

どっちがワインを楽しめると言えるんでしょうか?
どっちに喜びが大きいのでしょうか?



ちなみに、そのラーメン屋にはそれ以降、店長らしき人がいるのを確認してしか
店に入らないようにしています。

そのせいもあってか、比較的安定した品質で料理を堪能できています。

なるべく高品質を維持してもらいたいものです。
僕のワガママを満たしてくれるのは、ありがたいですから。

cozyharada at 23:04│Comments(0)TrackBack(0)clip!心理学 | NLP

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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