2013年01月14日

本音のコミュニケーション

世の中には、コミュニケーション・スキルと称されるものが様々ありますが、
どうしても一面的になりやすい印象を受けます。

本質的には、
『本音を理解して、本音を伝える』
ということに集約されるでしょう。

お互いの本音を話し合って、
結果として折り合いがつくかどうかはコントロールできませんから。
できるのは、本音を伝え合うところまで。


ところが、ここまでシンプルにしてしまうと方法論として説明しにくい上に
名前のついた技術として紹介しにくくなります。
本質的過ぎるものは、当たり前に感じられてしまって、ウケが悪いんでしょう。

にもかかわらず、徹底的に『本音を伝え合う』ことを教育していたのが
家族療法家のヴァージニア・サティアです。

彼女は家族療法という心理療法の体裁を取っていましたが
セラピーの大部分は教育的だったような印象を受けます。

”おせっかい”とも言えますが、まぁ、信念に基づいてやっていたのだと思います。
何より、僕もその発想には同意しますし、
「最終的には、それしかないよなぁ」と感じます。

一人ひとりが自分の本音を伝えられるように練習する。
これを全ての人が身につければ、世の中の人間関係は激変する気がします。

全ての人が、自分の本音を伝えられれば、
聞き方の技術なんて不要になりますし、『本音を理解する』技術も要りません。

まぁ、現実的には一筋縄ではいかないと想像できますから、一部の人が
相手に分かりやすく本音を伝える練習をして、
相手の分かりにくいメッセージから本音を読みとる練習をすることになるわけです。


ここで注意する必要があるのは、
 『本音を伝え合う』というのは
 「本音で語り合う」とか「本音でぶつかりあう」などとは違う、
ということです。

本当に本音を伝えることができれば、その本音は互いにぶつかりません。
それは全てを”さらけ出す”ということでもありません。
しっかりとビジネスライクな関係を保ったままでも本音は伝えられます。

多くの場合、「本音で語り合う」とか「本音でぶつかり合う」などといったときには
「自分の考えや想いを遠慮なく言語化する」という意味だろうと思われます。

とにかく好き勝手に、全てをぶちまける。
不快な感情が沸いてきたら、当然それも表現する。
溜めこまない。
思っていることは全部言う。
分かってもらえるかどうかとは無関係に全部を伝える。
隠し事はしない。

…そんな感じでしょうか。

ここにあるのは
 気づかいや遠慮から生まれる誤解をなくし
 できるだけ多くの情報を共有する
といった発想かもしれません。

しかし、こうした「本音でぶつかり合う」コミュニケーションには
 「どのように伝えるか」
という工夫が欠けていることが多いようです。

何よりも、
 『自分の本音が何なのか?』
を理解せずに話していることが多い。

これが、ほとんどのミスコミュニケーションの原因と言っても良いんじゃないでしょうか。

自分の本当の気持ちに気づいていない。
その気持ちを正確に、丁寧に伝える練習をしてきていない。
だから間接的な表現になってしまう。

その”ねじ曲がった”発言内容が、言葉通りの意味に受け取られてしまったら
「分かってもらえない」という気分になります。

だからこそ、コミュニケーションの技術としてトレーニングすることの大部分が
受け取る側の技術になっているんです。

相手が本当の気持ちを正確に言葉にしてくれていないから、
その本音を理解するために、様々な技術を駆使する必要が出てくるわけです。

例えば、上司が
「どうしてお前は、いつも遅刻ばかりするんだ!?」
と言ったとしたら、
その本音は、理由を知りたいわけでも、不満をぶつけたいわけでもありません。

ところが、この言葉をそのまま受け取れば
「別に、いつも遅刻しているわけじゃない。昨日は時間通りだったじゃないか」
「こっちだって遅刻したくて遅刻しているんじゃない。悪いと思っているのに」
といった気持ちが生まれることでしょう。

おそらく、上司の本当に伝えたい気持ち(=本音)は…。

「君は他の人よりも遅刻の回数が多いので、それを無くしてもらいたい。
 君がいつも申し訳ない気持ちで出社してきているのは見ていれば想像がつくし、
 仕事の負担が多くて疲れているんじゃないかとも思っている。
 その一方で、何度も遅刻をされると私も戸惑ってしまう。
 もちろん、ルールだからと頭ごなしに押し付けるつもりもなければ、
 遅刻が大きな問題だと言うつもりもない。
 ただ、グループ全体の規律を保つのも、組織の運営に大切な要素なんだ。
 だから頑張って遅刻をやめるように努力してもらいたいと思っている。
 もし、今までのやり方で上手くいかなくて困っているようであれば、
 力になれることがあるかもしれないから、少し話してみてくれないか?」

…といった感じじゃないでしょうか。

他よりも遅刻の回数が多い、という結果。
「遅刻=ダメ」ではない、という考え方。
組織運営として規律は維持したい、という意図。
遅刻を反省しているのは見て取れる、という理解。
何度も遅刻されるのは困る、という個人的な心情。
遅刻をなくしてもらいたい、という依頼。
もし難しければ解決に協力する、という意志。

これらのことが奥底にあって、その全てがゴチャゴチャになったまま、
1つ1つのメッセージとして自覚できていないのが一般的なんだと思われます。

ゴチャゴチャなまま、戸惑いの生理状態に従って
単なる”状況に対する反応”として言葉を出してしまうと
「どうしてお前は、いつも遅刻ばかりするんだ!?」になる。

これは気持ちを吟味した上での言葉じゃないんです。
自分が学習してきた反応パターンに過ぎません。
誰かから怒られるときのパターンだったのか、誰かのを見て学んだのか。
いずれにせよ、自分で工夫して作ったものではありません。

多くの人は、コミュニケーションの大部分を
学習した反応パターンに従って無自覚なままで行っているものです。

その奥にある自分の本当の気持ちを吟味しないんです。
むしろ、本当の気持ちを自覚しようという発想が
世の中一般では浸透していない、といったほうが良いかもしれません。

しっかりと自分の中にある本当の気持ちと意図を理解して、
メッセージとして整理して全てを伝えられれば、
相手に伝わる意味合いが変わってくるのは当然のことでしょう。

それが『本音を伝える』という言い回しで表現したかったことです。


自分が『本音を伝える』練習をするだけでも
相手に与える影響は変わってきます。

それでも相手はまだ、本音を”ねじ曲げた”メッセージで返答することがある。

だから、相手の『本音を理解する』技術も必要になる。


世の中には、自分の気持ちを伝える必要のないコミュニケーションもあります。
プロとして相手のニーズを引き出して、適切なサービス提供をするだけであれば
自分の気持ちを伝える必要性はあまり高くないはずです。

なので、カウンセリングなど、受け取る技術を向上させれば
プロとしてのコミュニケーションでは望ましい結果を得やすくなるわけです。

カウンセリングに限らず、多くのコミュニケーション技法は
『相手が主体の関係性』を前提にしています。

そのため、『自分の本音を自覚して、適切に伝える』方法に関しては
ほとんど注目されていないようです。

そういうコミュニケーション技法だけでは、
個人的な気持ちが関わり合う関係性に対処するのが難しい可能性もある。

受け取る側の技術、相手を主体とする関わり方の技術では
『自分の本音を上手く伝える』方法が重視されないために、
パーソナルな関係になるほど難しくなりやすい、と。

実際、有名な心理療法家だって、家庭の問題を抱えていたりしたそうですし。

自分が発信するメッセージに対して注意を払ってみるのも
コミュニケーションを考える上では重要だという話です。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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