2013年01月31日

オススメは何ですか

ラーメン屋に入る。

初めて来店したと思われるお客さんが
店主に話しかける。
「オススメは何ですか?」

店主は答えます。
「全部オススメです!」


…言語的には問題のない会話でしょうが、
コミュニケーションとして意図されていたものとなると
多少の疑問が残ります。

もしかすると、そのお客さんには不快感が残ったかもしれません。

それは店主に対して、別の期待をしていたからだと想像できます。
つまり「オススメが何か」という答えを知ることが目的ではなかった、と。

もし、「ただオススメを知りたいだけ」だったら
どんな答えが返ってきても、その後の振る舞いには違いが出ないはずです。
「へぇ、そうですか。」
「ここは、○○がオススメの店なんですね。」

そして、注文するものは、店主のオススメとは全く無関係に
自分が食べたいものを頼むことになるでしょう。

こんな感じ。
「オススメは何ですか?」
 ―「チャーシューメンですね」
「へぇ、チャーシューメンがオススメなんですね。
 じゃあ、タンメンを野菜多めで。」

この場合なら、店主が
 ―「特製つけめんです」
といっても
 ―「味噌ラーメンです」
といっても
 ―「全部オススメです」
といっても、
「じゃあ、タンメンを野菜多めで。」
と答えることになります。


しかし、現実の多くはそうではないようです。
「オススメは何ですか?」
 ―「チャーシューメンです」
「じゃあ、チャーシューメンで」
 
こういう流れのほうが一般的じゃないかと思われます。

つまり、初めてのお客さんの側からすると
『何を頼んだらいいか』の参考情報が欲しいわけです。

自分が頼むべき一品を選ぶにあたって
役に立つ情報が返ってくることを期待している。

その期待が外れると、「アレッ?」となって
場合によっては、意図が伝わらなかった不満が出ることもあるはずです。
「”全部”って言われたら、答えていないのと同じじゃないか!」と。

そうすると、本来、期待しているコミュニケーションは
 「初めてで、どれがどんな味かも分からなくて
  何を頼んだらいいか迷っているから、
  メニューのことを良く知っている店主の側から
  注文に関するアドバイスが欲しい」
という意図が伝わることだといえます。

だから返答として期待している内容は
 ―「初めての方でしたら、まず、チャーシューメンを食べて頂きたいです」
といったことになります。


さて、そうなると、このコミュニケーション、
お互いが「上手くいった」と思えるようになるには
どうしたら良いのでしょうか?

いわゆるコミュニケーション技術として扱われることが多いのは
カウンセリングにせよコーチングにせよ、聞き役の立場のようです。

ここでの聞き役は店主です。

ですから、店主の側がお客さんの意図を汲んで応対するわけです。

 お客さんの顔も見たことが無い。
 キョロキョロしている様子からも初めての来店を伺わせる。
 案の定、「オススメは何ですか?」と聞いてきた。

 ということは、何を注文した良いか、迷っているんだろう。
 本当は全部オススメだけど、初めてのお客さんに分かりやすいのは
 やっぱりチャーシューメンかな。
 よし。

―「そうですね、オススメはチャーシューメンです!」

…これなら、お客さんの意図に沿っていますから
 そのお客さんに不満が出ない可能性があります。

もっと全ての品物にコダワリがあるなら、
―「そうですね、初めての方にはチャーシューメンをオススメしています」
といえば、「とりあえず、最初は」というニュアンスが伝わるでしょう。

もちろん、もっと丁寧に話を聴いて
お客さんのニーズに合った一品をオススメする方法もあります。
ただ、それはラーメン屋には時間がかかり過ぎるでしょう。


そして、もう一方、お客さんの側にもコミュニケーションを工夫する余地があります。

そもそもの意図を伝えずに、「何がオススメですか?」と質問をしてしまっています。
これは、「この質問をすれば、何か1つ、参考にできる意見が得られるだろう」
という推測のもとで生まれている質問です。

相手がどう受け取る可能性があるかを考慮せずに、
「こう聞けば、こういう応対が返ってくるはず」という自分の推測で
言葉を発していることになります。

であれば、そもそもの意図をストレートに言ってしまったほうが確実です。
 「初めてで、どれがどんな味かも分からなくて
  何を頼んだらいいか迷っているから、
  メニューのことを良く知っている店主の側から
  注文に関するアドバイスが欲しいんです。」

これだと、店主がお客さんの好みを気にしたりするかもしれませんので
より確実にするなら…

 「初めてで、どれがどんな味かも分からなくて
  何を頼んだらいいか迷っています。
  メニューのことを良く知っている店主の側から
  注文に関するアドバイスが欲しいんです。
  私の好みは気にしないで下さい。
  今日は、私の好き嫌いよりも、初めて入ったこの店について
  味わってみたい気持ちを優先しています。
  お店の側から、”初めての人には、これを食べてもらいたい”とか
  ”このお店の味は、この一品を食べてもらえれば判断できる”とか
  ”店主として、これに最も力を入れている”とか
  ”これに一番思い入れがる”とか、
  そういう一品があれば教えて下さい。
  私は今日、初めてのお店なので、そういう一品を食べたいんです。」

という具合。

ここまでシッカリと自分の意図を伝えていれば、
期待外れの答えが返ってくることは滅多にないでしょう。

あとは、どこまで正確に自分の意図を伝えれば十分か、
それを判断しながら言葉にしていくことになります。


メッセージを発信する側(お客さん)が自分の意図を伝えながら発話して、
受信する側(店主)が、お客さんの意図を汲み取ろうとして受け答えすれば
お互いに誤解が少なく、言葉の量も少ないままで
円滑に目的とする会話が進んでいくでしょう。

しかし、どちらかに『意図を明確に伝え合う』という気持ちがないと
もう一方が、意図を明確にする作業を大幅に負担することになります。

伝える側、受け取る側、どちらにもできることがあるわけです。

コミュニケーションの技術という観点からしたら
両方とも重要な技術だと思います。

日本人は、ホンネとタテマエを使い分けるなんて言われますが、
ホンネを言えないのは、日本人に限ったことではありません。

誰もが、自分のホンネを上手く伝える練習をしていない気がします。

それが人間社会の伝統なのかもしれません。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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