2013年02月13日

コンテクストのフレームとコンテンツのフレーム

NLPでは『プログラム』という考え方をします。
人の振る舞いは、プログラムされている、と。

感情的な反応も、行動も、思考も、プログラムされているという考え方。

プログラムというからには、プログラムが作動する条件があります。
いつでもずっと動きっぱなしではないんです。

特定の『状況』によって、決まったプログラムが作動すると考えます。

飛行機恐怖症は、飛行機に乗ろうとするまで作動しません。
怒鳴られると、委縮するというプログラムも、怒鳴られるまで作動しません。

何かのキッカケがあって、プログラムが作動するわけです。


で、NLPにおいて、このプログラムが作動する条件が
かなり曖昧なままで解説されています。

特に日本語に翻訳された時点で、
重要な情報が抜け落ちることがあります。

「プログラムが作動する条件」ということに関していえば
『状況』という言葉がクセモノでしょう。

「 situation 」も「 context 」も、どちらも「状況」と訳される場合があります。
「 context 」を「文脈」と訳すと、ピンとこないこともあるからでしょうか。

本来、プログラムが作動する条件としては
コンテンツ(内容)とコンテクスト(場面)の2つがあると考えられます。
「シチュエーション」は「コンテンツ」と「コンテクスト」に分けられる。

これを区別する理由は、1つの場面において
「前景」と「背景」の両方が関係するところにあります。

プログラムによっては、「前景」と「背景」が両方揃って
初めて作動することもあるんです。

例えば、
「外出先で奥さんに話しかけられると真剣に話を聴く」
のに
「自宅で奥さんに話しかけられると、ボーっとして気が抜けた聞き方になる」
といった感じ。

どちらも『状況』における「前景」(内容)は、「奥さんに話しかけられる」ですが
「背景」(コンテクスト・場面)は「外出先」と「自宅」で異なります。

この違いが、プログラムが作動するかどうかを決めているといえます。

また、「犬が恐い」といったプログラムであれば
「犬が出てきそうな街角」という「背景」において、作動しやすくなります。
実際には犬じゃなくても、ゴミ捨て場の「犬の置き物」ぐらいでも
「犬」だという風に認知されてしまえば、恐怖のプログラムが作動する。

逆に、全く「背景」(コンテクスト)に依存しないプログラムもありますが、
こちらは比較的、稀だと考えられます。(例:自分の名前を認識するフレーム)

原則的には、プログラムが作動しやすくなるための「背景」(コンテクスト)がある、
と考えると良いはずです。


これは「認知のフレーム」として分類したときには、
「”背景”を捉えるフレーム」と
「”内容”を捉えるフレーム」と
2種類に大別すると分かりやすいと思います。

厳密には「フレーム」という意味で同じものですが、
フレームに当てはまった結果として起こる作用が異なっているので区別できます。

「”内容”を捉えるフレーム」が働くと、『状況』の中から
「そこに何があるか」という内容(前景)が判断されることになります。

例えば、「犬」とか「奥さんに話しかけられる」とかです。

「犬」の置き物であっても「犬」のフレームに当てはまってしまえば
「犬を見ると恐怖がわく」というプログラムは作動してしまいます。

「ヘビ」が恐い人であれば、本当はロープであったとしても
「ヘビ」のフレームに当てはまってしまって、
ロープを見たときにヘビを見たときと同じような反応をすることになるわけです。

あとから考えれば「勘違い」といわれますが、
フレームに当てはまってしまえば、プログラムは引き出されるんです。

これが「”内容”を捉えるフレーム」の機能です。

一方、
 「”内容”を捉えるフレーム」の中から、どれを使いやすい状態にしておくか
が、
「”背景”(コンテクスト)を捉えるフレーム」によって決められます。

「ヘビ」のフレームは、渋谷の交差点では使われにくいでしょうが、
森の中では使われやすいと想像できます。

同じロープが地面に落ちていたとしても、
渋谷の交差点であれば「ロープ」のフレームに当てはまって恐怖は沸かず、
森の中だと「ヘビ」のフレームに当てはまって恐怖が沸く、ということです。

また、「犬」のフレームも、会議室の中では使われにくいでしょうが、
住宅地の中だったら使われやすいかもしれません。


こうした「背景」(コンテクスト)のフレームは、
映像的に見て、文字通り背景になっている部分で、それは
 「視野の周辺部分にあって、時間がたっても変わりにくい」
という特徴で捉えられているはずです。

そして、この
 「視野の周辺部分にあって、時間がたっても変わりにくい」
という特徴は、
会話においても維持されます。

つまり、話の内容を視覚的にイメージしたときに
映像の周辺部分にあって、時間経過に関わらず変化しないで保たれている
ところがあるわけです。

例えば、昨日の夕飯の話をしていたとしたら、
その話題の中で登場してくる人物や、会話の内容は
昨日の夕飯の場面の中に描かれるでしょう。

同じ背景をイメージしながら話を続けて不自然ではない状態が
「話が飛んでいない」という風にも言えると思います。

さっきまで昨日の夕飯の話をしていたのに、
急に「後ろから来た車が、すごいスピードで追い抜いていった」と言われたら
意味が分かりません。

むしろ、「あれ?急に、話題が高速道路での出来事に変わったのか?」
と疑問を持つかもしれません。

こうしたことが起こるのが、会話の最中であっても
話題の中から「背景」を捉えていて、それを「変化しにくいもの」として
頭の中のイメージに維持しているからだということです。

そして、こういう話題における「背景」を、
「話の流れ」とか「文脈」と呼ぶんです。

それを英語でいったのが「 context (コンテクスト)」。

つまり、コンテクストの認識は、
実世界における「背景」としても、
会話における「背景(話の流れ=文脈)」としても、
どちらでも使われている、ということになります。

英語の場合は、おそらく「コンテクスト」の一言で、
そういう理解がしやすいんでしょう。

日本語ですと、「背景」と「文脈」では印象が少し違うかもしれません。
「背景」のほうが映像っぽい実体験のことになって、
「文脈」のほうが、会話や文章の流れといったものになる気がします。

ただし、どちらもサブモダリティとして整理したときには
 「周辺部分にあって、時間がたっても変化しにくいもの」
として認識されているんです。

ということで、
「背景(コンテクスト)を捉えるフレーム」があって、
それは実体験として外的世界の「背景」を認識するのにも
話の内容を内的世界として処理するときに「文脈」として認識するのにも
どちらにも使われているわけです。

そして、繰り返しますが、
その「背景(コンテクスト)を捉えるフレーム」が、
 「”内容”を捉えるフレーム」の中から、どれを使いやすくしておくか
をコントロールしているんです。

上位のプログラム設定とでもいうか、モード設定とでもいうか、そんな感じ。

同じように右クリックしても、ワードとエクセルでは反応が違う。
その”ワード”か”エクセル”かを判断するフレームもある。
パソコンに喩えるなら、そういうことです。


なお、この「”背景”(コンテクスト)を捉えるフレーム」は
いわゆる『リフレーミング』のターゲットにはなりにくい傾向があります。

通常、『リフレーミング』は「”内容”をと耐えるフレーム」を変えることで
それに引き続いて起こる反応を変えるところに意味があるからです。

「背景を捉えるフレーム」を変えたとしても、
「内容を捉えるフレーム」の使われやすさが変わるだけで、
問題となる反応を直接的に変えるのは難しいでしょう。

逆に、「”背景”(コンテクスト)を捉えるフレーム」は、
会話の文脈という意味合いにおいて重要な役割をしていますから、
ここで技術的な扱われ方がなされるんです。

それが、ビジネス系のコミュニケーションなどで紹介される
「プリフレーム」や「フレーミング」というテクニックになります。

これらは、話の文脈(=コンテクスト)をコントロールする技術です。

話題の中に、コンテクストを限定するような言い回しを入れていくわけです。
その結果、相手が使う「”内容”を捉えるフレーム」をコントロールして
自分にとって望ましい反応を相手から引き出そう、ということです。

その言い回しによって、イメージの中に望ましい背景を作ってしまうわけです。

例えば、
「この先、会社で活躍していくことを考えたとき、
 このチャンレンジに取り組むことは、たとえどんな結果になったとしても
 きっと重要な経験になるはずだ」
というように伝えると、
まず「会社での自分のキャリア」という長期的な道筋がイメージされます。

その「長期的な道筋」が”背景”となって、その上に
直近の一点として「チャレンジ」が描かれて、その先の結果が描かれます。

最初から、「長期的な道筋」という長い時間のラインを設定し、
かつ、その行き先の部分に「活躍」という望ましいものを乗せたイメージを作っている。
そこに「チャレンジ」や「チャレンジの結果」を追加する。

そういうイメージを作るように語りかけることで、
「チャレンジ」も「チャレンジの結果」も、長いスパンの一点となって
大袈裟なものではないように捉えられるようになります。

そして、その「結果」が、「活躍」という未来に繋がるものとして描かれますから、
「チャレンジして結果が出る」→「将来に活躍する」
という『因果』が作られるわけです。

そうすると、実際にチャレンジして、上手くいっても、いかなくても、
その結果を
 「チャレンジした結果を経験すると、将来の活躍を予感できる」
というプログラムに当てはめて解釈できるようになると考えられます。

「この先、会社で活躍していくことを考えたとき」という『プリフレーム』が、
どんな結果に対しても「チャレンジした結果」というフレームを使うように
誘導していると言えるでしょう。

ですから、『プリフレーム』という技術は、
 会話において「”背景”(コンテクスト)を捉えるフレーム」を設定することで、
 望ましい反応が引き出されるようなプログラムを使われやすくするもの
と説明できるんです。


『プリフレーム』が扱っている「フレーム」は
「”背景”(コンテクスト)を捉えるフレーム」のほうであって、
「”内容”(コンテンツ)を捉えるフレーム」ではない。

逆に、『リフレーミング』が扱っている「フレーム」は
「”内容”(コンテンツ)を捉えるフレーム」のほう。

プログラムの機能の仕方として見ると、
同じ「フレーム」という単語が含まれていて紛らわしいですが、
やっている内容は別物だということです。

「認知の枠組み」なんていう都合のいい単語も、
きちんとプログラムの中身として見ていけば
別の作用として区別できるようになります。

そして、「背景」に注目して『プリフレーム』を使うのか、
「内容」に注目して『リフレーミング』を使うのか、
…その区別ができるようになれば、
明確な意図を持って効果を予測できるようになるはずです。

『状況』という言葉も、「内容」と「背景」に分ける。
『フレーム』という言葉も、「内容のフレーム」と「背景のフレーム」とで区別する。

その前提で説明を読んでいくと、今までとは違った理解ができるかもしれません。

cozyharada at 23:16│Comments(0)TrackBack(0)clip!NLP | 心理学

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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