2013年04月12日

不協和

社会心理学に「認知的不協和理論」というのがあります。

手短にいうと
「自分の中に矛盾するところがあると気持ち悪いから
 考えの一部を変えて正当化する」
という傾向のようなものでしょう。

たとえば、
「2時間並んで食べたラーメンが、あまり美味しくなかった」
とします。

すると「2時間並んででも食べたい」という考え、「2時間並んだ」という行動と、
「美味しくなかった」という結果(考え)とが、自分の中で対立します。

この状態が「認知的不協和」。

そして、それを解消するために何かを変えるわけです。

この場合、「あー、損した!もう二度とあんな店いかない」という形で
自分の間違いを認める方向性も考えられます。

ですが、「2時間並んだ」という部分が影響を及ぼしてくるんです。

人によっては、この「2時間並ぶ」という行動には
「2時間並んだのだから価値があるはずだ」という考えが伴います。

そして、「無駄にした」ということが「自分の愚かさ」を反映していると捉え
その愚かさを受け入れたくない人もいるはずです。

そうなると、「無駄にした愚かさ」を感じないために
考えを変えることで正当化して、自分を守るケースが出てきます。

例えば、
・「いや、よく思い返してみると、独特で新しい味だったな」
・「確かに、奥底に何とも言えない絶妙な風味があったなぁ」
というように自分の味の感想を変えることもあるでしょう。

あるいは、
・「あんなラーメンでも、上手く宣伝すれば行列を作れるのか。勉強になった」
・「並んでいる人の顔ぶれを見れば、ミーハーなラーメンだって分かっていた。
 やっぱり並ぶ店は選ばないといけないな。良い勉強になった」
と「並んだ」ことを「無駄」と判断しない形で正当化するパターン。

どこかの考えを正当化するということです。


そう考えると、高額なセミナーに参加する時点で
「高いお金を払って、長い時間を費やしたのに無駄になった」
ということを認めるケースは少ないと想像できます。

ですから、何十万円も払うセミナーの場合、
あまり満足度が低いということは起きにくいわけです。

あとは、セミナーの中で、普段の自分なら絶対にやらないような
不快な体験があった場合も同様です。
奇声を発するとか、変な踊りをするとか、街中でモノマネをするとか。

その行動が自分にとってハードルの高いものだったのであれば、
「あそこまでやったのだから、得られるものがあった」と
正当化されることが多いでしょう。

例えば、会社や地域の伝統行事の中にも、
最初は皆やりたくないと思っていたはずなのに
一度やらされてしまうと、その苦痛を正当化して
「あの行事は意味がある」なんて考えるようになったりする場合もあります。

そうすると、自分も過去に体験した行事なのに考えを正当化してしまって
今度は運営側として「これは意味があるんだよ」なんて言いながら
新人たちに行事への参加を強制する側に回るわけです。

当然、外から見たら意味の分からないような行事であっても
その集団の中では維持されていくことになるでしょう。

まぁ、中には心理療法的な観点から意義のある儀式も沢山ありますから
一概になんでも特殊な体験に問題があるとはいえませんが。

少なくとも、自分にとって嫌なことをやってしまった後には
その体験に対する評価が肯定的なほうに変わるケースが多々あるという話です。


そして、一度そういう好みが生まれると、そのような捉え方が自然になってきます。
常に、その正当化が維持される方向で物事を認識するようになる。

仮に、大学で心理学を専攻して、大学院にいって博士号まで取得したとしたら
そこまで自分が費やしてきた労力を否定するのは大きな不協和を生みます。

であれば、外の世界から見たら矛盾したところや変なところがあっても、
正当化して認めなかったり、そもそも気づかなかったりするかもしれません。

ですから、一般論として
 専門家は自分の専門分野へ費やしてきたコストがあるため
 その分野の中にある問題点を認めにくい
という危険性があるといえます。

もちろん、「危険性」ですから、その危険性そのものを自覚したうえで
自分の専門分野を客観的に捉えている人もいます。

ただし、残念ながら、そういう人たちは異端扱いされる傾向が見受けられます。
裏を返すと、それだけ偏りが生まれやすいということなのかもしれません。

例えば、ロジャース派のカウンセラーとして何十年もやってきた人であれば
教わって、実践してきた技法が何よりの拠り所になっていることでしょう。

当然、その技法が「効果を発揮する状況と、裏目に出る状況の違い」
といった分析は、なかなかやりたいものではないと思われます。

上手くいかなかったケースを体験すれば、
その理論そのものを疑うのではなく、
自分の技量の未熟さを想定することでしょう。
あくまで、その理論の範囲で。


逆に、気軽に「良いとこ取りです!」なんて言えるということは
それほど1つのことに集中して取り組んできていない、
というメッセージにも受け取れるかもしれません。

深く取り組めば、その内容に対して思い入れが生まれますし、
それを否定するような他の方法論も同等に扱うのは苦痛になるでしょうから。

色々なものを客観的に分析して、全ての長所・短所、状況別の対応など
底にある原理に目を向けて捉えていても「統合的」にはなると思いますが、
その場合、あまり「良いとこ取り」という表現にはならない気がします。

何より、自分が費やしてきたコストの無駄を認めながら
全てのことを外から眺めて分析するのは大変でもあるでしょうし。

それは、拠り所を持たないということなので。
正当化する人たちから離れる、心理的なコストもあるわけです。
好き好んで孤独な道に進む人は多くないと思います。

現実的に、専門家は役に立っています。
専門家に見えない落とし穴があったとしても、
それを修正しろと要求するのは酷なことでもあります。

世の中の大部分は、そうした専門家の支えで成り立っています。
上手く噛み合わないところや不満を生むところがあっても
それで成り立っているんです。

ホンの少数、その矛盾に耐えられない人がいる。
専門家から嫌われる人たちです。

でも、その人たちを好きな人たちもいます。
これまた少数派ですが。

大変なほうは少数派なんです。

そういうバランスです。

cozyharada at 23:33│Comments(0)TrackBack(0)clip!心理学 | NLP

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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