2013年07月22日

変化と安定

「コンフォート・ゾーン」という考え方があります。

その人にとって「心地良い( comfortabale )」領域がある、と。

コンフォート・ゾーンの中にいると”現状維持”になっていて
そこから出ることで成長する
…といったような説明も聞いたことがあります。

また、
コンフォート・ゾーンから外れたときには、”心地良くない”ので
”心地良い”状態に戻ろうとして、自然にアクションを起こすことになります。

なので、コンフォート・ゾーンに留まろうとして
”現状維持”しようとする力が働く、とも言えるでしょうし、
「自分なら、これぐらいできる」と想定している”心地良さ”のゾーンより
下回った結果を体験すれば、なんとかしてコンフォート・ゾーンまで戻ろうと
いつのまにか必死で頑張ることになる、ともいえるでしょう。

テストで70点を取るのが”当たり前”のコンフォート・ゾーンになっていれば、
たまたま90点を取れたとしても、手を抜いたりケアレスミスをしたりして
自然と70点ぐらいを取るようになり、
うっかり50点を取ってしまえば、次の時には頑張って挽回する。

そんな感じの動きをするのが一般的だという話です。

セルフイメージのホメオスタシスとも言い換えられそうですし、
身体レベルよりも抽象度の高いホメオスタシスとも言えそうです。

そういうことは実際にあると思います。
システムの中でバランスを取ることを考慮しても、
状態を安定させようとする機能は重要でしょう。
(長期的には、少しずつ移ろいでいくものだと考えられますが)

細かいレベルで見れば、いつも同じプログラム(学習されたパターン)で
対応を続けることで、”現状維持”が続いていくとも説明できます。


ここで「変化」ということを考えると、
「今までのコンフォート・ゾーンから離れていく」
あるいは
「コンフォート・ゾーンが変わる」
ことが「変化」に相当するはずです。

短期的に”変わる”場合も、もちろんありますが
それは「変動」と呼んだほうが良いんじゃないかと思います。
一時的なシフトであって、”通常”のラインに戻ってくるというのが
コンフォート・ゾーンの考え方ですから。

プログラムが1つ変われば、今までとは少し違った日常が
コンフォート・ゾーンに変わるといえますし、
セルフイメージが変わってコンフォート・ゾーンが大きく変われば、
色々な行動パターンのプログラムが変わるといえます。

いずれにせよ、「変化」とは
「だいたいいつも、こんな感じ」という状態が
違う設定に変わるようなものと考えられます。


そのように「変化」を想定したとき、
変化の方法は大きく2通りになります。

1つは、プログラム(いつものパターン)を変える。

1つの行動のプログラムを変えるだけでも
結果として引き起こされる日常は「変化」することになります。

セルフイメージが変われば、
そのまま大きくコンフォート・ゾーンがズレることになり、
それに合わせた行動を自然と取るようになって
日常で体験するものが大きく変わっていく。

ただ、セルフイメージを変えてコンフォート・ゾーンを直接的にズラすと
現状の日常との間に大きなギャップを体験することになります。
「こんなはずじゃない!」と。

70点がコンフォート・ゾーンだった子供が
一気に90点をコンフォート・ゾーンに設定すると、
(※そうした設定変更には特殊な技法を必要としますが)
前回の70点に対して「ヤバイ!こんなはずでは…」と感じて
急に勉強しだすようになるわけです。

別に何もしなくても90点のテストが”引き寄せられる”のではありません。

90点が”当たり前”として設定されるので、
「今のままではダメだ」と認識して、焦りながら頑張るんです。
自然と行動が変わるんです。
90点を取るための行動に変わるんです。

だから結果が変わる。

当然、この変化は”心地良く”ありません。

今までコンフォート・ゾーンだと思っていた現状が、
急にコンフォート・ゾーン外の不快な範囲になってしまうからです。

コンフォート・ゾーンを一気に変えれば
何もしなくても自然と結果がやってくるのではないんです。

”心地良い”気分のままで、楽に結果が得られる方法ではありません。

むしろ、その設定変更の幅が大きいほど
強烈な不快感と焦りが生じて、苦しさを感じるほうが自然です。

逆にいえば、コンフォート・ゾーンを変えた(つもり)なのに
現状への焦りや不快感を体験しないとしたら、
それは実際には変わっていないと判断しても良いでしょう。

コンフォート・ゾーンの発想からすれば、そういうことになります。

もう1つの「変化」の方法は、
コンフォート・ゾーン外の行動を意図的にする
というものです。

「いつもと違う」行動によって、コンフォート・ゾーンの外に出ますから
そのときに体験されるものは不快感です。
緊張であったり、恐怖であったり、楽な気分ではないでしょう。

一時的にやってみるわけですから、この時点では「変動」です。
やめれば元に戻る。

でも、その「いつもと違う行動」を頑張って、不快感に耐えながらやり続けると
徐々にその状態に慣れていきます。
そっちが「いつも通り」になっていく。

結果としてコンフォート・ゾーンがズレるわけです。

この場合、コンフォート・ゾーン外の行動を色々と増やしていくことで
少しずつコンフォート・ゾーンをズラして「変化」していく方法だといえます。


ところが、ここには1つ上の視点も関わってきます。
いわば、メタレベルのコンフォート・ゾーンです。

テストの点数の喩えは、その意味で誤解を招きやすいんです。

もし、そのテストが常に大体同じレベルの内容で行われるもの、
例えば、資格試験のテストのようなものだったら、
いつも70点前後というのは”現状維持”だといえるかもしれません。

ですが、このテストが中学校の期末テストだとしたら、
いつも70点を取るためには、新しい内容も勉強し続けて
それでも70点ぐらいになるような勉強量だということです。

ですから、新しいことを学んでいるんです。
成長しているんです。

ただ、その成長の程度が一定だから、いつも70点になる。

同様に、会社に入って新しく仕事を身につけるとか、
営業をやって少しずつ成績を伸ばしていくとか、
会社を経営して毎年売上を伸ばしていくとか、
”現状維持”では達成できない行動レベルの変化を続ける場合もあります。

常に工夫して、常に行動を変えて、今までの自分のやり方
つまりコンフォート・ゾーンの中にあった行動を変えて、自ら変化していく。

これは、資格試験のようなタイプのテストであれば
徐々に点数が上がっていっているともいえますし、
中学校の期末テストだったら、いつも同じ点数を取るとも表現できます。

つまり、同じ対応を常に続けているという意味で
コンフォート・ゾーンの中にいる場合もあれば、
同じ程度の成長(変化)を常に続けているという意味で
変化のスピードのコンフォート・ゾーンの中にいる場合もあるわけです。

言い換えると、
「常に変化を追い求める人」は、それはそれで
「速い変化の中にいること」がコンフォート・ゾーンになっている、
ということになります。

すると、
「新しいことに挑戦しましょう!
 自分のコンフォート・ゾーンから出て成長しましょう!」
などと駆り立てる人にとっては
「新しいことをやり続ける」のが”心地良い”状態になっていて、
同じことを続けるのが”心地良くない”だけかもしれない
…とも考えられます。

どれぐらい「変化」するか、という程度(変化の速度)にも
コンフォート・ゾーンがある、という話です。


こうして「変化速度」のコンフォート・ゾーンを考慮すると
そこには「変化の加速度(=変化加速度)」があって、
その加速度がゼロだからコンフォート・”ゾーン”になっているといえます。

「止まっているのが好き」というコンフォート・ゾーンもあれば、
「速い動きが好きか、遅い動きが好きか」というコンフォート・ゾーンもある。
その上には、「動きの速さが、どのぐらい激しく移り変わるのが好きか」
というコンフォート・ゾーンもある、と。

高いところから落ちた鉄球は
その高さが変わり、落下速度も加速していく。
そこには重力加速度があるから、加速されていくわけです。

そうすると、変化のスピード自体も、もっと速くなっていく可能性が出てきます。
「これぐらいだったら、この変化のスピードに対応できる努力の量」
っていう想定を上回るほど変化が起きる場合です。

「もっと頑張る、さらにもっと頑張る…」という具合に
努力の幅を上げ続けないといけない。
時間の制約を克服するために、努力の質を向上させていく必要があるでしょう。

それでも、変化加速度は一定なんです。
地球上の重力加速度が一定なのと同様。
その意味では、コンフォート・ゾーンとして慣れてしまえるのかもしれません。

その加速度まで一定じゃないとしたら…。

もう、しっちゃかめっちゃかでしょう。

そうなったとき、人にできるのは
 「全ては常に移ろいでいて、何1つ安定なものなどない」
 という徹底的な不安定やカオスこそ”当たり前”だ
と認識することぐらいではないでしょうか。

不安定で混乱していることがコンフォート・ゾーンになったとき
逆に、あらゆる結果から左右されない安定感が得られるような気がします。

cozyharada at 23:31│Comments(0)TrackBack(0)clip!NLP | 心理学

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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