2013年11月25日

解説:極化の技法について

自分の中にある「ああしたい、でも、こうなってしまう…」
といった行動や感情の反応傾向は、
心理療法やNLPなど、変化の技法の対象として扱われるものです。

例えば、
「部屋を片付けておきたい、でも、片づけを先延ばしにしてしまう」
といった感じ。

正確に説明すると複雑になるので簡略化すると、
「片付けに取りかかる」プログラムと
「”まだいいか”と判断する」プログラムが
同時に働いて拮抗しているような状態です。

片付けに取りかかれば、その作業を進めるプログラムはある。
だから、やり始めれば綺麗になる。
それは分かっているんだけど、でも、やり始めない。

それが問題として捉えられます。


NLPでは、こういう状態を「葛藤」と呼びます。
そして、その解決手法として「葛藤の統合」が用いられます。

2つのプログラムの折り合いがついていないということで、
その両者で折り合いをつける方法です。

NLPでは1つのプログラムを「その作業の担当者」のようなニュアンスで
「パート」と呼び、ここでは2つのパートに折り合いをつけてもらうわけです。

そして、その解決のプロセスで「パートを統合する」段階があります。
2つのパート同士を1つにまとめるんです。

例に戻るなら、
「片付けに取りかかる」パートと「”まだいいか”と判断する」パート、
この両者を統合して1つにまとめる作業といえます。

そして新たに1つとして生まれ変わったパートが
「上手くやってくれる」というように考えるんです。

ですから、
「2つの相反するプログラムを1つにまとめて葛藤を解消する」
といった説明の仕方が多くなされるようです。

しかし、実際には説明が不十分なことが多く、場合によっては
「葛藤が解消されれば、望ましい行動ができるようになる」
といった結論が語られることさえあります。

そうなる場合もあります。
が、そうじゃないこともある。
むしろ大抵の場合は、完全に「望ましい」ほうにはなりません。

適当にバランスが取られるようになるケースが多いんです。

場合によっては
「やりたくないのに、やってしまう…」
という気持ちのレベルでの”葛藤”が
「まぁ、いいか」という気持ちに変化して
もはや”葛藤”ではなくなる、
という結果になることもあります。

確かに、葛藤は解消される。
実際に問題と捉えていた反応パターンがどうなるかとは無関係ながら。
そういう可能性もあるんです。

ただ、一般的に期待できる結果としては、
2つのプログラムの間でバランスが取られることが多い。

つまり、望ましい反応になるときもあるし、
望ましくない反応になるときもある、と。
(実際には、もう”望ましくない”とは捉えなくなりますが)

ですから、別に前にあった2つのプログラム(パート)がなくなって
新たな1つのプログラム(パート)ができるわけではないんです。

そうではなくて、
新しいパートは2つのプログラムをバランスよく使うための
コントロール役のようなものとして働くんです。

だから必要に応じて適度なバランスになる。

先ほどの例であれば、
すぐに片付けに取りかかろうと思えるときもあるし、
今日はまだいいか、と取りかからないときもある、
といった感じです。

平均的には「取りかかる」機会が増えますから
結果としては片付いている時間が長くなるかもしれませんが、
理想的に片付けられるようになる手法ではないといえます。


同様に、望ましくない行動や感情の反応パターンを変える技法として
心理療法の一派が使う「極化(極化と誇張)」があります。

これは望ましくない反応パターンに対して
 もっと大袈裟に強化した振る舞い
と、
 真逆な方向に大袈裟にした振る舞い

2つを設定して両方の練習(もしくは仮想体験)をするというものです。

「片付けたいのに片付けられない」の例であれば、
 「神経質と言われるほど几帳面に、常に部屋を綺麗にしておく」

 「散らかっている上から更に物を放り投げて、足の踏み場さえ無くす」

2通りをやってみるわけです。

とにかく両極を大袈裟なほどやってみる。
そして2つを繰り返すうちに、バランスの良いところで落ち着いてくる。
そういう方法です。

こちらの場合、「葛藤の統合」と違って
 やったことのないほど大袈裟な両極を体験する
という特徴があります。

「葛藤の統合」は、自分が持っている2つの相反するプログラムの間で
バランスを取れるようになる手法だといえますが、
「極化」の場合は、プログラムとして持っていない両極の振る舞いを
仮想体験しながら、バランスの取り方を学ぶ手法といえるでしょう。

違いは
 既にある2つのプログラムでバランスを取る
か、
 やったこのない両極の振る舞いの間でバランスを取る
か、です。

やったことがない両極は、体験したことがなくても
誰かのやり方を見たりして、想像はできるようになっているものです。
ですから、やったことがなくても、やり方は知っています。
そのため仮想体験はできるんです。

一方、「葛藤の統合」と「極化」の共通点としては、
 両方とも「バランスを取る」役割をもった新しいプログラムが作られる
部分が挙げられます。

どちらもバランスをとれるような調整機能が作られる、と。

ただし、極化のほうがバランスを取る両極がハッキリしているので
より柔軟性の高いバランスの取り方が期待されます。
「望ましいものと望ましくないものの2つのどちらか」ではなく、
「両極の間のどこか」というアナログ的なバランスが取りやすくなるんです。

これが大きな違いでしょう。


また、何が起きているかという観点からすると、
「葛藤の統合」、「極化」ともに、”望ましくない”という判断が弱まります。
”どちらでもいい”というか、気にならなくなるんです。

葛藤の統合の場合は、「望ましくない反応」の奥にある肯定的意図を探り、
今まで”望ましくない”と捉えてていた振る舞いにも
ちゃんと大事な意味合いがあったんだと思えるようになる。
その結果、”望ましくない”と捉えなくなる、という流れです。

それに対して極化の場合では、
「望ましくない反応」に付随する嫌悪感や自責感が、楽な気分で消し去られ
結果として”どちらでもいい”という感じに変わっていきます。

片付けの例であれば、
「片付けを先送りにした」という振る舞い、もしくは
「片付いていない部屋」に対してアンカーが存在しています。
「片づけを先送りにすると自責感が沸く」とか
「片付いていない部屋を見ると嫌悪感が沸く」とかです。

この「片づけをしない」状態を認識するフレームは
対象が誰であっても作動します。
片づけをしない他人を見たときにも「嫌悪感」や「叱責したい気持ち」が沸く。

誰が片づけをしていないかの違いであって、同じフレームなんです。
片づけをしない人に対して「責める気持ち」や「嫌悪感」が沸くプログラム。
それが自分の場合、「自己嫌悪」や「自責感」になる、というわけです。

で、このアンカーは「片づけをしていない」ことに対して働きますが、
そのアンカーが発火した直後に、別の楽な状態を引き出すと
両方の状態(”嫌悪感”と”楽な感じ”)とが混ざり合って、かき消されます。

NLPの技法でいうと、コラプシング・アンカーです。

極化の手法では、大袈裟な両極の振る舞いを交互に体験します。
すると、もっとも強く嫌悪感がわく振る舞いの直後に、
楽な気分になれる振る舞いを体験することになるわけです。

あり得ないぐらいグチャグチャに散らかった部屋を体験して
嫌悪感を味わった直後に、
今度は、几帳面な場面を体験してスッキリした気分を味わう。

すると、この2つの状態が打ち消し合うんです。

その結果、グチャグチャに散らかった部屋に対して発火していた
嫌悪感のアンカーがなくなっていく。
グチャグチャな部屋を見ても、嫌悪感は沸かなくなるわけです。

同時に、NLPでいうスウィッシュの効果も含まれます。

グチャグチャな部屋を体験すると、次には
几帳面に整理された部屋のスッキリした感じが体験される。
この流れを繰り返していますから
 グチャグチャな部屋を見る⇒綺麗な部屋のスッキリした感じを味わう
という新しいアンカーが作られていきます。

望ましい状態のイメージが動機づけとなって、
自然と望ましい振る舞いを取りやすくなると考えられます。

これらの効果で、自責感や嫌悪感のアンカーが消えて
問題だという捉え方をあまりしなくなり、
自然と望ましい側の振る舞いに動機づけられやすくなる。


「葛藤の統合」も「極化」も、どちらも
 「バランスを取る」プログラムが作られ、
 ”問題だ”という捉え方が弱まり、気にならなくなる
という点で似ていますが、
『何が起きているか』のレベルでは違いがある、という話です。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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