2014年01月11日

「私のために」

「あらゆる人の振る舞いには『意図』がある」
という考え方があります。

NLPでは特に、その意図は全て「肯定的」なものと想定します。
それで「肯定的意図」と呼ばれる。


この肯定的意図は、その反応(プログラム)を担当する部分に注意を向け
探っていくことで調べることができます。

どんな反応を生み出すプログラムであっても、
「良かれと思って」やっているところがあると考えるわけです。

必ずしもその意図が満たされているわけではなく、
あくまでそれを「満たそうとして」やっている、ということがポイント。

「良かれと思って」といったのは、そういう意味です。
結果的に裏目に出ていることもあるけれど、
意図を満たそうとしてやっている、と。


手法として、この肯定的意図を調べるやり方にはバリエーションがありますが、
反応を担当する部分(=パート)に注意を向け、
そのパートを擬人化して会話を試みるやり方が主流のようです。

パートに質問するんです。
「そういう反応をすることで、何をしてくれようとしていたんですか?」
といった感じ。

で、この質問のフレーズにも色々な種類があるみたいなんです。

元々は英語で行われていたものを輸入していますから
英語から日本語に翻訳する上でのニュアンスの違いと、
翻訳者が必ずしも元の狙いを理解していない事情が重なり合って、
有効な質問のフレーズが曖昧になっているのが現状のように思えます。

場合によっては、アメリカで流派が広がっていく過程においても
重要なポイントを見逃しながらアレンジが加わった可能性もあります。

「そうすることで何が得られますか?」とか
「それによって何を教えてくれているんですか?」とかいった質問は
『意図』を把握するという観点からすると、不具合を起こしやすいはずです。

これらの質問だと、二次利得や合理化した考えが浮かぶ可能性があります。

もちろん、問題のない人もいるんです。
ただ、ポイントは「普段、意識にあがっていない意図を意識に上げる」ことなので
知的な作業をしやすくなるフレーズは避けたほうが無難だと思われます。
多くの人が「頭では分かっているけれど…」という部分で悩むわけですから。


その点、最もシンプルで的を得ていると考えられるフレーズが
「 What do you want for me? 」というもの。
(※ you はパートに対しての語りかけ)

これはコア・トランスフォーメーションを開発したコニリー・アンドレアスが
肯定的意図を聞き出すときに使うフレーズです。

ちなみに、コア・トランスフォーメーションというのは
肯定的意図を深掘りしていって心の底で追い求めているものを探り当て、
その”コア”とも呼べる状態に浸ることをメインの目的とした手法です。

肯定的意図を的確に探れる聞き方になっていないと
手法として上手くいかなくなる可能性もありますから、
さすがにこの辺のニュアンスには狙いが読みとれます。

「 want 」で質問しているのも、
「何かを求めてやっている」という『意図』の雰囲気に忠実です。
追い求めている何かがあるけれど、空回りしている感じ
…というのがイメージしやすい気がします。

そしてもっと重要なのが「 for me 」の部分。
「 me 」は言うまでもなく、パートの意図を探っている本人です。
部分ではなく、全体としての自分・私ということ。

つまり、
「私の一部分であるあなたは、全体としての私のために
 (普段から)何を追い求めているんですか?」
といった聞き方になっている、と。

「(普段から)」と書いたのは、英語の現在形が、その瞬間の現在ではなく
一般的に繰り返される傾向を述べるものだからです。

もちろん「 want 」であれば、その瞬間に欲しいものに焦点も当たりますが、
肯定的意図の観点からすると、「常日頃から追い求めている」という
ニュアンスがほのめかされるのが望ましいと考えられます。


それで、この「 What do you want for me?」という言い回し、
日本語に訳すのが難しいようです。

パートの肯定的意図について実感のない人が訳した場合、
「あなたは私のために何が欲しいのですか?」
とかいった良く分からない表現になりかねません。

「誰か他の存在のために、何かが欲しい」…
この感じがイメージできるかどうか。

喩えていうと、組織のために良かれと思って
「こうしたいんだ!」、「これが必要なんだ!」
と個人が主張するイメージでしょうか。

パートは常に、本人である全体としての自分のために
良かれと思ってやっている、
というのが「肯定的意図」の考え方のポイントなんです。

「 for me 」には、そこが反映されている。

この「 for me 」が抜けてしまうと、
「(パートである)あなたは、何が欲しいんですか?」
といった表現になってしまいます。

これだと、欲しがっているのはパートだけということになる。
パートがそれを良いと思っていても、
意識としての全体の私にとっては望ましくない可能性も出てしまいます。

「そのパートが何を欲しいのか知らないけれど、
 私はやっぱり嫌なんです!」
などの対立が続きやすい。

パートの意図を聞く目的は、全体としての統合にあります。
受け入れたい。
だからこそ「このパートは私のために頑張ってくれていたんだ」
という実感が求められるんです。

そのためには質問の仕方としても
「全体としての私のために良かれと思って」
というニュアンスを込めたいわけです。

それが「 for me 」の部分。

ですが残念ながら、このニュアンスが含まれた訳が少ないようなんです。
「あなたは何を望んでいますか?」なども目にします。

前述のコア・トランスフォーメーションが日本語訳として紹介されるときにも、
肯定的意図を深掘りしていくときの質問
「 If you could have that and if you have it now fully and completely,
 what do you, this part of me, want for me through having that,
 that is even more important? 」

「あなたが、望みどおりに、完全にそれに満たされたなら、
 そのことを通してあなたが欲している、もっと重要なことはなんですか?」
といった形に翻訳されているようです。

「そのことを通してあなたが欲している」の部分に
「私のために」が含まれていない。

あくまで、「全体としての私のために」というのが「肯定的意図」なんです。


この狙いをもっと分かりやすくしてしまうなら、
「そうすることで、私のために何をしてくれようとしていたんですか?」
とか、
「そうすることで、私のために大切な何を求めていたんですか?」
とか
「そうすることで、私全体がどんな感じになれると思っていたんですか?」
とかいった表現でしょうか。

細かい言い回しよりも、クライアントである本人が
狙いを分かって内側に問いかけられることが重要だと思います。

「空回りもあっただろうけれど、全体としての私のために良かれと思って」
というニュアンスが『パートの肯定的意図』のポイント。

そのニュアンスが伝わりにくい可能性がある表現には注意が必要でしょう。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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