2014年01月19日

統計とエビデンス

統計を入門から勉強し直してみました。

試しに買ったこの本。
とても分かりやすいです。


中学校までの数学で説明されている上に、
独自の工夫があって内容も掴みやすい。

とはいえ、
「統計で何をするのか、何が分かるのか(できるのか)?、どうやるのか?」
を説明した入門書ですから、
「なぜ、そうなるのか?」
といった理論は書かれていません。

「なぜ」の部分を説明すると、微分・積分だらけの数式が並ぶでしょうから。

かといって、単なる読み物でもありません。
読み物の場合は「どうやるのか?」の説明がなく
「何をするものなのか?」の説明に注力するのが一般的です。

この辺りは、例えば心理系の分野などでも同様です。
心理読み物では概要説明で「何をするものなのか?」が中心となり、
「なぜ?」や「どうやるのか?」は含まれません。

入門書の場合には、「どうやるのか?」という方法論が含まれますが、
やはり、その背後にあるメカニズム(=「なぜ?」)は説明されない。

この統計の本でも、少しは「なぜ?」の部分がありますが
難しい数学を使わずに説明しようとしているため、
どうしても数学的な正確さはなくなってしまうようです。

ですから、正確で詳しいわけではありませんが、
中心となる部分だけを簡略化して説明してくれているという点で
入門書として使い勝手が良いと思います。


何より、世間一般(特に医療・心理分野)で良くいわれる
「エビデンス」というものの正体が掴めるはずです。

この本では直接的にエビデンスという単語は出てきませんが、
いわゆるエビデンスは、この統計を用いた数値的な説明になります。

中でも、心理系でよく使われるのは「検定」というもので、
この本でも中心として解説されています。

検定では、まず棄却したい仮説を立てます。
言い換えると、示したいことの逆を仮説とするわけです。

例えば、「心理療法Aには効果がある」と示したければ、
仮説として「心理療法Aをやるのと、やらないのでは同じ結果になる」
という具合に設定します。

それで実際にとったデータを統計の手法を使って調べてみる。

仮に効果があるとしても、たまたま選んだ被験者には
偶然で効果が認められなかったという可能性があります。
選ぶときの運が悪かった、と。

逆に、本当は効果が無いのに、たまたま選んだ被験者だけ
何か別の要因で効果が観察されてしまうという可能性もあります。

そういう風に、偶然で結果に違いが出てしまう場合が想定されるわけです。

だから統計的に「偶然違っちゃった」のか
「偶然では考えにくい」のかを調べるんです。

さっきの例に戻ると、
「心理療法Aをやるのと、やらないのでは同じ結果になる」
の仮説からではデータに差がないと想定されますが、
実際に得られたデータでは全く同じではない…ということが良くあります。

この”全く同じではない”データの”同じでない度合い(=差)”が
統計的に考えて、「偶然起きてしまった差なのか」それとも
「偶然では考えにくい差なのか」を調べるわけです。

で、「偶然でこういう差がデータとして得られる確率は5%以下です」
と統計処理が示したとき、
「この差は偶然では考えにくいですね」
となって、
最初の「心理療法Aをやるのと、やらないのでは同じ結果になる」
という仮説が棄却されることになります。

つまり、
「『心理療法Aをやるのと、やらないのでは同じ結果になる』とは考えにくい」
と結論づけられる。

このとき、「その差は統計的に有意である」と表現されます。

ここで心理療法Aを使ったほうが”改善”の結果が大きいのであれば、
「その差は有意」なのですから、「効果はあったと考えられる」となるんです。

これが1つのエビデンスになります。


かいつまんで言うと…。

2つの条件を比べてみた。
,両魴錣鉢△両魴錣任蓮結果に違いがあった。
でも、この違いは偶然かもしれない。
統計的に調べてみよう。
統計的には偶然とは言えないようだ。
じゃあ、「違いがあった」と結論づけても問題なさそうだ。

…といった感じ。

例えば、体重60kgの人が一週間ダイエットをやって
一週間後の体重が59.5kgだったとしたら、その差0.5kgは
「ダイエットに効果があった」と結論づけるのに充分かどうか、ということです。

「0.5kgなんて、ちょっとした生活習慣の違いでカンタンに変わるでしょう」
という可能性もあるし、
「いやいや、この人は一年間毎日体重を測り続けていて
 いつも決まった時間に体重を測ると59.8kgから60.2kgの間にしか
 収まらないんだから、この差は59.5kgは大きな違いだ」
という可能性もある。

そのあたりの差の評価の仕方が統計のポイントになるようです。

ですから、囲碁を例にとると
先手の勝率51.86%は、15000局の対戦結果からすると
統計的に有意な差だと結論づけられています。
つまり、先手が有利だ、と。

元々、先手が有利の考えのもとで後手に5目半のハンデがあったそうですが、
それでも先手の勝率が51.86%だったということで
ハンデを6目半に上げたんだとか。

ものすごく小さな差ですが、統計的には有意な違いと言える例です。


そうすると、エビデンスに対しても注意が必要になってきます。

1つは効果の『度合い』を議論できないエビデンスが沢山あるということ。

上で説明したような検定の考え方では
「2つの違いが偶然ではない」ことまでしか結論づけられません。

「心理療法Aをやったら、やらなかったときと比べて
 (良い方向に)結果で違いがありました」
という話なんです。

「どれぐらい」の議論ではないんです。

仮に、ガンの治療薬の効果を調べるとして、
腫瘍の大きさの変化でデータをとったとします。

治験薬を投与したグループでは腫瘍のサイズが平均1.8mm小さくなりました。
プラセボのグループでは腫瘍サイズは平均1.0mm小さくなりました。
統計的には、この差が有意だと示されました。

そういうデータがあったとき、この治験薬がどれぐらい効果的なのかまでは
この調査からだけでは分かりません。

ましてや、腫瘍を小さくできることと、
飲み続けたらガンが完全に無くなることとは別の話題です。

また、うつ病に対する効果測定ではHRSDなど、有名な評価尺度があって、
この評価で症状の改善度合いを調べるような実験は多々あります。

ただ、ある方法のうつ病に対する効果を、この評価尺度を元に調べて
「改善した」というデータが統計的に示されたとしても、
その方法によって社会へどのように関われるようになるかは分かりません。

「良くなる」という表現は簡単です。
「HRSDでスコア22だった人が16になりました」は、
「良くなった」といえる結果でしょうが、
その人の生活がどうなのか?、今後の生き方はどうなるのか?
…といった観点には一切触れていないわけです。


エビデンスといっても、その統計が示している内容までは
ハッキリと語られないことが多いようです。

「この方法にはエビデンスがあります」とか。

そこで示されるのは、
「どのぐらいの違いかどうかまでは言えないが、効果に差があった」
ということが大半。

そして、その効果を測定するための基準が、
どれだけ現実の生活を反映しているかも不明瞭なんです。

「改善」と「解決」が別物になることだって沢山あるはずです。

統計的エビデンスは、そこを隠してしまう恐れがあります。

にもかかわらず、統計以外の方法で示せないことも多い。

ここにジレンマを感じながら統計を利用しているのか、
それとも
統計でエビデンスを取れば科学的に根拠が証明できたと信じ込むのか、
…この違いは大きいと思います。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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