2014年01月24日

空回り

コーヒーを飲みながら本を読んでいたときに
隣の席へやってきたカップルの話です。

二人とも20歳前後といった見た目。
大学生かなんかでしょう。

席についてしばらくしたら、二人ともスマートフォンをいじりだしました。

彼氏のほうはメールを打っているような感じ。
彼女はその様子をチラチラ見ながら、スマホで暇つぶし。


しばらくして、その女性は占いか何かのサイトを見つけたようです。
声に出して文章を読みながら恋愛占いらしきものを次々にやっています。

男性の側からすると、それがウルサイんでしょうか。
こんどはスマホでゲームを始めました。

そして女性は男性に話しかけます。
占いに必要な項目を質問する。
男性は仕方なさそうに答える。

答えを入力した女性は、占いの結果も音読します。

しかしながら、活舌と発声が悪く、早口で抑揚なく読むため
男性の真横のにいる僕にも内容が分からないような感じ。
その男性は慣れていたのかもしれないとはいえ
一生懸命聞こうとさえせずに、適当に相槌を打ってゲームを続けていました。


続いて、その女性は心理テストのサイトへ移動したようです。
やはり男性に質問して、彼の心理テストをやりたがります。

男性はメンドクサそうに質問に答えながらゲームを続ける。

この間、その男性は椅子の背もたれに寄りかかり後傾姿勢で座り
右手のスマホはテーブルよりも低い位置で持っていました。
その画面を見る顔の向きは正面よりも少し右側を向き、
当然、首の角度も下を向いている状態。

向かいの席にいる女性のほうを見ることさえ滅多にありませんでした。

よほど女性からの質問が聞こえず答えられないとき
「え?何て言った?」とか言いながら顔を上げるぐらい。

時には、スマホの画面を見ながら
「あ、ゴメン、最初のほう聞いてなかった」
なんていうことも。

遊び目的で作られた心理テストの質問項目ですから、
一文が長いうえに出てくる内容が複雑だったりして
一度だけ聞いて答えるにはハードルの高い内容だった気もします。

それを適当に聞き流しているんですから、ちゃんと答えられるはずもない。

男性の声のトーンは段々と投げやりな感じになり、
メンドクサそうな雰囲気も強まっていっていました。

女性はその男性の質問の答えに応じて心理テストを進め、
出てきた回答を例の聞きとれない発話で音読して
「えー、全然当たってないじゃん」
「あぁ…」
といった会話を繰り返す。

女性は身を乗り出して座り、テーブルに肘をつきながら
目の前の男性に向かって声を出し続けますが、
相変わらず男性は下を向いてスマホをいじったままです。


ついに女性は簡単な心理テストをもう見つけられなくなり、
エゴグラムを元にした心理テストらしきものを始めます。

もちろん、男性の答えに沿ってテストを実行したい。

エゴグラムの質問はインターネットに出てくるような簡単なものでも50問ぐらい。
量が多いんです。

それを全部質問して男性に答えさせようとしていました。

男性は途中で、量の多さに苛立ちを強めてきたのか
声のトーンがさらに投げやりな感じになり、
「まだ終わらないの?」
と何度か聞いた後、
「長ぇーよ、もう適当にやって」
と答えるのをやめました。

女性は自分で質問を音読しては、その男性の傾向を思い出しながら
「うーん、これはYesかな」
などと全てを声に出して質問に答え、
やっと最後までテストを完了しました。

その間、男性のほうはスマホでゲームをしたままですから
何のリアクションもないまま、女性は一人で心理テストを読み上げては答え、
長い”一人語り”をようやく終了したんです。

すると
「えー!!チョット、『ページが存在しません』だって!
 せっかく○○が(自分の名前、一人称として)頑張って答えたのに!」
と叫びました。

スマホに対応していないウェブページだったようです。

男性のほうは、仕方なく付き合って答えていたのに
不毛な結果となったことへ怒りを示していましたが、
女性の側が
「もー、ちょームカつくー。
 あーあ、もういいや。」
と、乗り出していた姿勢を変え、背もたれに寄りかかったところで
一連の流れはストップ。

しばらく静かになりました。

そして「お腹がすいた」とか「何か買ってこようかな?」とか
質問とも独り言ともつかない言葉を発した後、
その女性は席を離れて何かを買いに行ったようでした。


この間、ずっと同じコミュニケーションが繰り返されていたようです。

話をしたい女性と、それに疲れている男性。

最初は暇つぶしで始めた占いや心理テストも、
男性に質問を始めた時点で目的が変わっていたと思われます。

多分、関心を引きたかったんでしょう。

心理テストをやらせれば答えに興味を持ってくれると想像したのか、
とにかく会話としての応答をやりたかったのか、その辺は分かりません。

しかし、コミュニケーションの意図としては
「私はあなたの心理テストをやる程、あなたに関心を向けています。
 あなたも私に同じぐらい関心を持ってください」
といったところだと想像されます。

多分、その意図には自覚しないままで
”心理テストに巻き込もうとする”という行動を続けていたはずです。

しかしながら、男性の側は、それがメンドクサイ。
心理テストになんか興味が無い。
非言語メッセージは
「俺はそういうの嫌いだから、もうやめてくれよ」
と”乗り気じゃない”素振りを示し続けていました。

だから余計に、どうでもいいはずのスマホのゲームをやり続ける。
まともに答えない。

心理テストという形態が常に質問形式をとるため、
男性のほうからすると答えることを強制されている印象もあったと思われます。
質問されれば考えてしまうし、考えたからには答えてしまう、と。

それでもやっぱり内面には反発が起きていて
真面目に答えない形で、その不満が表現される。

同時に、相手の女性がやっている心理テストをやめさせるのは後ろめたい。
そこには「自分は自分のしたいようにするから、相手もしたいようにすればいい」
といった無自覚な想いがあったのかもしれません。

不満の対象は、少しずつ
「心理テストをやること」から
「答えを強制される状況を我慢し続けなくてはいけないこと」へと
移ってきていたと推測されます。

その後ろめたさと苛立ちの間で、中断させることもできないまま
”メンドクサそうな態度で適当に答える”という最大限の抵抗を示していたようです。


女性は「関心を向けてもらいたい」から、心理テストで次々に質問する。
男性はそれが嫌だから「やめてほしい」ことをメンドクサそうな態度で示す。

女性は、男性のその態度が自分への無関心と感じられて
もっと関わりを増やすために心理テストの質問を続ける。
男性はその強制された状況を我慢する不満に苛立ちを高める。

女性は苛立ちに気を配りながらも、自分への関心を持ってもらいたいから
一人で声に出しながら相手男性の心理テストを続ける。
男性は、やめたくてもやめられない交流のジレンマから
コミュニケーションを終えようとする。

女性は、コミュニケーションを続けることで
少しでも自分への関心を持ってもらおうとする。

…こんな循環が起きていたと考えられます。

どちらも自分の意図を自覚しないまま、
その意図を相手に伝わりにくい形で表現する。

そしてどちらも、相手のメッセージの裏にある意図を読みとろうとしないまま
自分の意図を通そうとするためのコミュニケーションを強化する。

両方とも、相手のメッセージの奥にある意図を察しようともしなければ、
自分のメッセージの奥にある意図にも気づいていないわけです。

だから空回りが続く。


女性としては
「もっと私に気持ちを向けて欲しいから、こっちを見てよ」
と一番の要求を伝えるところから始めても良いでしょう。

それを汲み取るのであれば、男性としては
「へー、なんか当たってない気がする。
 そっちはどう?自分でやると合っていると思う?本当はどうなの?」
などと、相手の話題に振ることもできるかもしれません。

男性側の意図を素直に表現することだって、
女性側が不満を読みとって対応を変えることだってできるわけです。

多くの人は自分の意図に気づかないままメッセージを発信します。

心理テストで質問攻めにした女性は、心理テストをしたかったわけではなく、
多分、自分に興味を持ってもらいたかった。

そういう気持ちが沸いてきたときに、直接「私に興味を向けて」と
言葉にして伝える人は滅多にいません。

そうやって学習してきていないからです。

たまたま自分に関心を向けてもらえたやり方を”効果的”と勘違いして
ずっと続けているだけのことです。

場合によっては、周りの人が意図を汲み取ってくれる可能性もあります。
そういう人が周りに多ければ、意図を自覚しないまま同じことを続けます。

ですが、大部分は意図と違うところでコミュニケーションをするんです。

自分の意図を伝わりやすく表現することもせず、
相手の意図を汲み取ろうともしない。

それが普通。
程度の差はあっても、両方を頑張る人は滅多にいません。

自分の意図を自覚しながら伝わりやすい表現をして、
相手の意図を汲み取った対応をしていけば、
コミュニケーションの結果は、確実に円滑なものとなるはずです。

それは言えます。

あとは、自分だけがその頑張りをするかどうか。

そこが最も悩ましいところかもしれません。

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この記事へのコメント

1. Posted by 渡辺 由紀子   2014年01月25日 23:12
フォーマルな場。看護、介護でいえば他機関との調整あたりでは、かなり意識されている事のように思います。
伝える側も教えられる側も意識している事を意識できず苦しんだ所でもあります。

2. Posted by よしお   2014年01月28日 22:08
なんだか切ないお話ですね…。

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原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
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