2014年01月26日

「いまここ」の夢

夢の中で「決断を迷った」ことのある人って、どれぐらいいるんでしょうか?

言い換えると、夢の中で「自分が意思決定をした」という体験です。


感情は沸きます。
焦ったり、驚いたり、苦しんだり、気持ち悪かったり…。
「怖い夢」とか「悪夢」とかいうのが知られているぐらいですから。

五感レベルの体験も当然、感じられるはずです。

人によって、どの五感が鮮明なのかは違うようですが、
可能性としては五感すべてがクリアに感じられることはあるといえます。

実際、僕は味や匂いを感じるものの、
風を切る感覚とか疲労感などは感じていないと思います(覚えていない)。
カラーの夢の人も、白黒の夢の人もいるようですし。


しかしながら、です。

そうした感覚体験や感情の変化を体験しながら、
ハッキリと自分で意思決定したかと言われると
どうでしょうか?

僕にとっては少なくとも、夢の中ではストーリーが流れるだけです。

勝手にそれをやっています。

例えば、誰かに追いかけられて、階段を急いで降りている夢で
僕は”なぜか”階段から下まで飛び降りたことがあります。

まるで映画のような感じ。

追いかけられて焦っている感じはありました。
落っこちていく場面も迫力がありました。

でも、飛び降りる決断をする前に
迷ったり恐怖を感じたりというのはありませんでした。

まるで映画の脚本通りに、
「この場所に来たら飛び降りる」
と決まっていたかのよう。


夢の面白いのは、あり得ないストーリー展開があったり
奇妙な場面展開があったり、なぜか無関係な登場人物がいたり…
と脈絡の無さではないかと感じます。

そして、一般に「夢をコントロールできない」といったとき
(世界には、夢をコントロールできる部族がいるとか聞きますが)、
日常生活と同じような想像の仕方で
「自分以外の場面や他人の行動を思い通りにしたい」
という発想があると思います。

でも、良く思い出してみると、
 夢の中では自分の行動さえコントロールできていない
のではないでしょうか。

僕は今でも研究職時代と関連した変な夢を見ることがありますが、
普通に出勤して実験をして毎日を過ごしているのに
なぜか一か月ぐらいオフィスに出向かず、パソコンも開かず、
会議にも出ないで過ごしてしまって、
「うわ、ヤバイ!怒られる!」
みたいな感じを味わったことがあります。

その一か月の展開は夢の中で進んでいるんです。
にもかかわらず、「オフィスに行くか行かないか」という
自分で簡単にコントロールできそうなところが
なぜか勝手に進行してしまっていたわけです。

夢って、そういうものじゃないでしょうか。


ここで重要になるのが、こうした
 『脈絡の無さ、あり得ない感じ』
が、どこから来るのか?ということです。

ポイントは、
 夢を見ている最中には違和感がない
ということ。

朝起きて、夢を思い出したときに
「あー、変な夢だった…」
と感じるはずです。

夢の最中に『脈絡の無さ』が気にならないのは
 夢が『今』の積み重ね
だからだと考えられます。

夢の中の自分は、前のシーンを覚えていないんです。
だから、突然、まったく変な場面に展開しても自然に流れてしまう。
起きてから思い返すと奇妙なことなのに。

ただ反応しているだけなんです。
夢の中では、何かが起きたら、それに対して自動的に自分が反応している。
その様子がまるで映画を見るように展開していくだけだ、と。

裏を返すと、普段の我々は
前に体験した場面の記憶を意識に上げながら
同時に、その瞬間の体験も意識に上げている
ということです。

意思決定をするには、過去の体験を参照にして
未来に予測を立てて、反応の仕方を選択する必要があります。

夢の中の自分は、前のシーンを覚えていないのですから
意思決定する体験は起きないと考えられます。

もしかすると、起きているときに体験した
印象的な意思決定の場面や未来の予測に感情を乱される場面などが
夢の中の一部分で改変されて出てくることはあるかもしれません。

しかし、日常生活で普段感じているほど
「どうしようかな…」と考えてから何かの行動に移ることは
夢の中では多くないはずです。
ほとんどの場面では、自動的に行動が決められていると思います。


夢の中の自分には、前のシーンの記憶が意識されていないんです。

記憶を元にした複雑な内的表象が作られないんです。

ああだこうだと考えたり、先のことを想像して困ったり、
さっきの自分の行動に対して評価を下したりしない。

夢の中の場面に応じて、なぜか行動や感情が起きますが、
それをメタレベルで捉えて判断するような二次的な作用が起きていない。

「今ここ」で起きている状況と、それに対する自然な反応の仕方を
ただ体験しては忘れていく。
その繰り返しです。

忘れていくのがポイントでしょう。

覚えているのは過去のことです。
それが夢の中の自分には体験されていないんです。
過去のものとして流れ去ってしまっている。

「今ここ」の繰り返しが夢だということです。


もし日常生活で「今ここ」をやるとしたら、
過去に体験した場面が意識に上がらないことになります。
未来の予測も起きない。
行動や感情は、学習されたプログラムに従って自動的に起こるだけ。
自分の行動や感情を「良し悪し」で判断することもありません。

いわゆる「思考」も起きないかもしれません。

そういう「今ここ」が望ましいのかと言われると、僕には分かりませんが。

そして、この観点からすると、
『無』だとか『観照者』だとかいうのは
「今ここ」ではあり得ないことになります。

『無』を捉えている主体の感じ、『観照者』という視点は
メタレベルのものだからです。
見ている自分に意識があります。

夢の中の自分には、「自分が」という意識がないはずです。
ただ起きているだけ。

夢から覚めて思い出したときに初めて
 「自分が」こういう体験の夢を見ていた
と意識できるんです。

つまり、もし座禅だとかで『無』を体験したとしても、
それは『無』ではない普段の状態に戻ったときに
やっと「自分は『無』を体験していた」という過去の記憶を意識できる、と。

ずっと『無』だったら、思い出さないんです。
ずっと寝ているのと一緒です。
「今ここ」のまま『無』を体験していたら、『無』は自覚されないはずです。

逆に『観照者』としての視点、つまり体験を眺めている自分の感じは
そこに自分としての意識があります。
脈絡を捉えているんです。
それは夢の中のような「今ここ」ではありません。

とはいえ、僕は座禅や瞑想、観照者としての体験を
否定しているのではありません。

それらは有効だと思います。
「今ここ」にとってではなく、
過去と未来に左右される普段の自分にとって有効です。

自分の行動や感情に対する二次的な評価で苦しんだり、
特定の過去の出来事に強くとらわれていたり、
未来を想像して不安で仕方なくなっていたりするのであれば、
静かで安定した感じを体験するのは非常に大きな効果があると思います。

実際に僕も勧めることがあります。


ただ、ここでの話題としては
 「今ここ」っていうのは別物じゃないか
というだけのことです。

本当に「今ここ」で生きると
夢の中の自分みたいな感じかもしれませんよ、と。

「今ここ」でいる限り、
その夢からは覚めないという意味です。

夢が夢だったと分かるのは、起きてからです。

夢の中で「自分が夢を見ていると分かる」明晰夢というのは
「今ここ」ではない体験なんです。

よく聞く言葉であっても、吟味してみる価値があるんじゃないかと思います。

cozyharada at 23:55│Comments(0)TrackBack(0)clip!心理学 | NLP

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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