2014年01月28日

強さを求めて

仮に、自分がタイガーマスクだったとしてみましょう。

「虎の穴」と呼ばれる秘密組織で修業を積んで強さを手に入れた。
マンガのタイガーマスクは苦戦が多いそうですが、
どんなに強くても常に他者を圧倒するわけではないでしょうから、
まぁ、「頑張って真の強さを手にした」ということに注目するとします。

そしてここでは、とりあえずその強さの秘密を
「恐怖を味方にすること」
とでもしておきます。(あまり詳しくないので)


で、
そのタイガーマスクである自分が、ちびっ子から
「どうしたらタイガーマスクみたいに強くなれるの?」
と質問された場面を想像してみます。

多分、
「そうか、強くなりたいか。
 強くなりたかったら、好き嫌いせずに何でも食べるんだ。
 それでお母さんのいうことを聞いて、ちゃんと勉強もするんだ。
 そうしたら必ず強くなれるぞ。」
とか答えるでしょう。

その内容は、タイガーマスクとして身につけた強さの秘密とは無関係です。
至って一般的な”しつけ”のレベル。
でも、子供に伝えることを考えたら、様々な未来の可能性を視野に入れて、
無難な答えをするのではないでしょうか。
なぜならそのときの子供にとって重要なのは、真の答えではなく
タイガーマスクから教えてもらったという関係性のほうだと考えられますから。


またあるとき、中学生から相談されたとします。
「あの…、僕は運動が苦手で…、皆から馬鹿にされるんです。
 どうしたら、その…タイガーマスクさんみたいに…、強くなれますか?」

今度は、その中学生の個性を考慮するかもしれません。
(自信はなさそうだけれど意志の強さと一歩を踏み出す勇気は持っているらしい。
 とりあえず自信を持てるものを1つ見つけられたら…。)

そこで
「強くなるのに一番大切なのは、毎日体を動かすことなんだ。
 まずは毎日ランニングをしなさい。
 苦しくなって、もうダメだと思ってから、さらに1分。
 毎日それを続けていると段々と長い間走れるようになるはずだ。
 そうやって自分の限界を超えていくんだ、いいね?

 それから、もう1つ。
 色々なことをやってみて、
 なんとなく自分が続けられそうなものを探すこと。
 何でもいい。何か続けられること。なぜか嫌じゃないこと。
 それをやってごらん。
 その中に、君だけの強さが見つかるはずだ。」
なんて答える。


さらに、ある日、高校生から
「僕もタイガーマスクになりたいんです!
 真の強さを身につけたいんです。
 タイガーマスクさんは、虎の穴というところで修業したと聞きました。
 どこにあるんですか?
 どうすれば入れますか?
 教えてください!」
と質問を受ける。

確かに自分は虎の穴での経験を通じて、強さの秘密を見出した。
そして、それがあるから今こうしてタイガーマスクをやっている。
が、それは誰にでも勧められるものではない…。
この秘密を知った後も人生は続いていくものだ。

何より、修行の過程は決して楽なものでもない。
あの秘密にたどり着く直前には、必ず通らなくてはいけない絶望がある。
はたして、それを多くの人が通る必要があるのだろうか?

なんてことを考えて
「今の君の能力では、虎の穴の審査には通らないだろう。
 仮に入ったとしても、相当な柔軟性を発揮しないと生き抜けない。
 まずは、強さとは何かを自分で考えなさい。
 
 トレーニングの方法は沢山ある。
 それも自分で考えるんだ。
 自分で、自分の考える強さに進んでいくこと。
 真の強さとは、ケンカの強さだけではないのは分かるだろう。
 自分で工夫をして1つの答えを見つけるんだ。

 その答えが分かったとき、もう一度やってきなさい。
 虎の穴へ行く方法は、そのときに教えよう。」
などと答えるかもしれません。

その高校生が、どこまで進むことになるのかを見定めるために。


そして、新人プロレスラーや雑誌記者から
「タイガーマスクさん、真の強さとは何でしょうか?」
と質問を受けたりもするでしょう。

ここでも考えるわけです。
(この質問者は何を求めているのか?)と。

ただ自分の考えを聞きたいだけなのか。
自分が至った結論と同じものを、ただ知りたいのか。
その結論を、その人自身も体得したいのか。

それによって答えは変わってくるはずです。

もし、自分と同じようにそこへ辿り着くことになりそうな相手を見つけたのなら
その人に対してだけは、答えへと導く何かを伝えるかもしれません。

自分がしたほどの必要以上の試練を通ることなく、
最短ルートで辿り着けるような指導をするかもしれません。

過去の自分を振り返りながら。

以前の自分が誰かからのヒントを必要としたように
自分からのヒントが必要な可能性を視野に入れて。

しかし、それは万人に向けたものではないわけです。
自分と同じような道を辿る人に向けてのことではないでしょうか。


まとめるなら、自分が真の強さの秘密を身につけているとしても、
質問されたときにそれを伝えるかどうかは分からない
ということです。

誰かが質問をして聞き出した返答は
「応え」ではあるけれども
「答え」を言っていないかもしれません。

にもかかわらず、返ってきた「応え」は
偉大な教えとして後世に語り継がれていく。
あたかもそれが真の強さへの「答え」であるかのように。

もはや、そこにタイガーマスク本人の意図は介在しません。

場合によってはタイガーマスクが、多くの人に向けて
健康に生活するためのエクササイズを指導する可能性だってあるでしょう。

「『真の強さ』なんてものは、多くの人が生きていくにあたって
 必ずしも重要なものではない。

 真の強さを身につけたとしても、その人の生き方はやっぱり、その人のものだ。
 ごく一部の生き方の人だけが、どうしても『真の強さ』に辿り着こうとする。

 そういう人にはヒントやトレーニングの方法を指導するとしても
 多くの人のことを考えたら、やっぱり健康のほうが大切なはずだ。」

…なんていう考えに至って、健康のためのエクササイズを広め始めたとしたら。

後世の人の中には、
「これが伝説のタイガーマスク・エクササイズだ!」
「これであなたもタイガーマスクのように最強になれる!」
といった形で広めようとする人も出てくるかもしれません。

そのエクササイズは有効なんです。
健康のために良い。
多くの人の役に立つんです。

ただ、それが『真の強さ』の秘密かといえば…。
そうではないわけです。

「タイガーマスクが真の強さの秘密を会得した」ということと
「タイガーマスクの教えが真の強さについてのものだ」ということとは
必ずしも一致しません。

教える、伝える、などのプロセスには、つきものじゃないでしょうか。


同様のことは、辿り着いた結論が「真理」とされるものに近いほど
起きやすいのではないかと思います。

真理について直接語るのかどうかも
真理に辿り着く方法を教えるのかどうかも
定かではないでしょう。

歴史上、聖者や偉人とされた人たちは様々な「教え」を残しています。

ただ、それらの教えが一度、本人の手元を離れた瞬間、
「誰に向けた、何を目的としたものだったのか」
が見失われがちなように感じられます。

教えを学ぶ側に注意が必要な部分かもしれません。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
の登録商標となっています)
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