2014年04月21日

『自分を好きになる』か『好きな自分になる』か

世の中には、イイ話とか、大事なメッセージというのがあります。
それを聞くと「あぁ、そうだよなぁ」と感じられるような言葉。

そうした言葉の中でも特に、人生全般に関したものに注目すると
大きく分けて2つの方向性が見て取れます。



1つは、努力の大切さを強調したものです。

自ら頑張って、課題を乗り越え、目標を達成し、自己成長する。
「理想の自分」、「なりたい自分」を目指して頑張っていくスタンスです。

コーチングとか成功法則とかビジネス系とか自己啓発とか
そういった分野で耳にしやすいようです。


もう一方は、あるがままを受け入れる大切さを強調したもの。

頑張らなくていい、今のままでいい、人はそのままで素晴らしい、
足りないところではなくて足りているところに目を向けよう、
ありのままの自分を大切にしよう、あなたは何もしなくても完全なんです…
といった感じのメッセージです。

セラピー、ヒーリング、スピリチュアルなどの分野で見られやすいようで、
心理読み物やカウンセラーの言葉なんかにも見受けられます。



1つ目のほう(努力するスタンス)は
『未来』や『自己成長』を重視していて、
『できる』ようになることで自分の存在価値を高めていく方針。

『できない』ことで揺らぐ自信を高めるために、
頑張って『できる』ようになりましょう、というわけです。

できない自分が好きじゃないなら、できるようになれば自分を好きになれる。
ダメな自分は変えればいい、と。

いわば『好きな自分になる』方針でしょう。


それに対して、2つ目のほう(あるがままのスタンス)は
『今ここ』や『自己受容』を重視していて、
『できない』自分を肯定し、現状の自分を受け入れることで
そのままの状態で自分の存在価値を高いものと認めていく方針です。

『できない』ことで自信が揺らぐのに対して、
そもそも「できなくたって大丈夫なんだ」と思えるようにしましょう、
というわけです。

「そんなことで揺らぐ必要はないんだ。できなくたって気にしない。
 できたって、できなくたって、常に素晴らしいんだから。」といったスタンス。

できない自分が好きじゃないなら、好きになればいいじゃないか。
できないとダメだなんてのは、社会に与えられた思い込みに過ぎない。
ありのままで素晴らしいんだから、できなくたって良いんだ。
…そんな感じ。

ダメな自分を好きになればいい。
そもそもダメな自分なんて存在しないんだから、今のままの自分で充分だ、と。

こちらは『今の自分を好きになる』方針といえます。


つまり、
・好きな自分になる
・自分を好きになる
の2つの方向性がある、ということです。

世の中には、両方のメッセージが溢れています。
沢山の人がこうしたことを言います。

そして、ほぼ必ず、どちらか一方が強調されます。

それはメッセージを発している本人が大事だと思うほうが表現されるから。
その人に合うスタンスで取り組み、その大事さを再確認し、
「これが大事なんだ!」と主張する。

場合によっては、反対側の意見を否定しながらでも表現されるみたいです。

「ダメな自分が嫌だと感じる、その悔しさこそ本当の自分なんだ。
 今の自分が嫌だから悩んでいるんだろう。
 そのダメな自分を受け入れてしまったら成長なんてありやしない。
 生き物は成長するのが自然なものだろう。
 一歩ずつ進むんだ!もがけ!頑張れ!」

「できないとダメだとか、自分には価値がないとか、誰が決めたの?
 頑張ってばかりじゃ疲れちゃうでしょ。
 あなたは生きているだけで素晴らしいんだよ。
 最初からあなたは全て持っているから。
 わざわざ何かを欲しがる必要も、何かを頑張る必要もないんだ。
 何もしなくて良いんだよ。
 ありのままで良いんだよ。
 それでもあなたは愛される。」

こんな感じ。

なんだか、どちらも大事なことを言っているような印象を受けそうです。



こうしたメッセージを声高に発する背景にも色々あると考えられますが、
1つの傾向としては、「上手くいかなくなって真逆に転じた」パターンがあるようです。

自分はこう信じてやってきた。
でも結局ダメだった。
そしてついに、諦めるときがやってきた。
諦めたら、反対側のメッセージの意味が実感できた。
…という感じ。

例えば、
 頑張って、頑張って、頑張って…、でも上手くいかなくて
 どんなに頑張って理想の自分に近づいても自分を好きになれなくて
 「もうどうでもいいや」って頑張るのをやめたら、
 それでも全く問題がないことが分かって、
 何もしなくたって自分は受け入れられているんだと実感できた
みたいなケースです。

当然、逆の例もあります。
 あるがままの自分でいい、今の自分で素晴らしいって言うから
 自分を受け入れるように考え方を変えて、
 ○○先生の言っていた言霊を繰り返して…、
 「確かに気持ちは楽になってきたところもあるけど
 現実は全く変わっていないじゃないか!」と、ある日に痛感して、
 もうこんな自分はまっぴらだ!って、できることから努力するようにしたら
 成長する喜びを感じられて自分が好きになってきた
など。

こういう転機を体験すると、
「こっちのほうが大事!」というメッセージ性が高まるのかもしれません。

まるで昔の自分に教えてあげようとするかのように
大事なことを発信しようとする。


ただ、こうしたメッセージを受け取る側からすると
自分の好みに合ったものしか耳に入らないものでしょう。

頑張るのが好きな人は「頑張れ!」というスタンスのメッセージを見たときに
「うん、そうだよな!やっぱり成長するから素晴らしいんだ!」
と自分の考えを強化する。

あるがままを受け入れるのが好きな人は
「頑張らなくていいんだよ」、「何もしなくても、あなたは素晴らしい」
などのメッセージを見たときに感動して癒された気持ちになって
「ああ、やっぱりそうだよね。うん、今のままで良いんだ。生きていて幸せ。」
と自分の考えに納得感を高める。

反対側の意見を見たときには、
「うーん、そうじゃないだろう。止まってどうするんだ?
 頑張って成長して人の役に立つのが人生じゃないか。」
とか、
「あーあ、そうやって頑張っているから逆効果なのに。
 足りないところを見て、もっともっとって欲しがっていたら
 満たされることなんてあり得ないでしょう。
 今で満たされていることに気づけないなんて、可哀想に。」
とか、
異論が沸いてくることもあるみたいです。

聞く耳を持たない。
むしろ反発や拒絶反応さえ起こりえます。

ですから、声高に主張された大切なメッセージは、
どれだけ熱心に、どれだけ心をこめて発信されても
最初からそれを大事だと思っている人のところにしか届かないんです。

聞いた人が「分かりました!」「気づきました!」なんて報告したとしても、
 それは最初から何となく経験的に感じていたことで、
 ただ上手く言語化できていなかったのを意識に上げられただけ
ということが良くあるものです。

そのメッセージに共鳴したということは、内面のどこかには
それと一致するものが含まれているはずなんです。

同じ価値観を持っているから、イイ話に聞こえるんです。

でも、その価値観が真逆だとしたら、それは耳に入らない。
耳に入ることがあっても、心に響くことがないでしょう。

ここが皮肉ですね。


発信する目的が、「やっぱりそうですよね!さすが、良いこと言いますね!」
と称賛されることにあるのなら、イイ話をするのは効果的でしょう。
同じ意見を持った人たちからの賛同を集められます。

しかし、本当に自分が大事だと思っていることを伝えたいのは、
過去の自分と同じような傾向の人たちじゃないでしょうか。

つまり、自分が大事だと思っている側のスタンスには見向きもせず、
反対側のスタンスを信じ続けている人たち。

「そっちじゃダメなんだ、こっちが大事なんだよ」って伝えたいのでしょう。

以前の自分がそっちで長い間苦しんだから、
少しでも早く抜けられるように、と。

「ダメな自分を好きになろうとしたってダメなんだよ。
 ダメな自分を好きになる努力をするぐらいだったら、
 好きな自分になる努力をしようよ。」
とか、
「どんなに頑張ったって完全に満たされることはないって。
 満たされている自分を追い求めるんだったら、
 今この瞬間に満たされている自分を見てごらんよ。」
とか。

残念ながら、こうしたメッセージの多くは空回りするようです。

そうしたメッセージが好きな人に響き、
その人たちの考えを強め、よりその傾向を増長する。

そして世の中には両側のメッセージが溢れているわけですから、
反対側の主張を見ると残念な気持ちになることも少なくないでしょう。

「ほら、そうやって”何もしなくていい”とか言う人がいるから
 ダメな自分を受け入れられなくて苦しみ続ける人が出てくるんじゃないか。」
とか、
「あーあ、いつまで”頑張れ、頑張れ、成長だ”とか言っているんだ。
 頑張るのをやめたときに、幸せの意味に気づけるっていうのに…。」
とか。

自分が大事だと思っている方向性のメッセージは
本当に伝えたい人のところには届かず、
むしろ反対側のメッセージが溢れるばかりに
いつまでも”間違った”考えが無くならない
…なんて感じることさえあるかもしれません。


しかし。
そんなに悲観的になることもないようです。

どうせ同じ価値観の意見、賛同できる方向性のメッセージしか聞かれないんです。

そして、昔の自分と同じように、方向性の”間違い”に気づくタイミングは
「トコトン信じ続けて、それでも上手くいかずに諦めた」ときです。

昔の自分と同じような方向性の人には届かなくても、
真逆の人たちのメッセージが、昔の自分と似たような人たちを後押ししている。
トコトンやって諦めがつく転機までの時間を早めてくれているわけです。

つまり…。

 「頑張る」スタンスの人だとしたら、「あるがまま」スタンスの人たちにこそ
 「ダメな自分を変える」努力の重要性を伝えたい。

 その重要性に「あるがまま」派が気づくには、
 「あるがまま」を続けて行き詰って、諦めがつくタイミングが必要。

 その転機となる行き詰まりに早く辿り着くには、
 トコトン「あるがまま」のスタンスを貫いてもらったほうが良い。

 実際、自分は「あるがまま」を長いこと続けて転機を迎えた。
 「あるがまま」のスタンスの時には、「頑張る」派のメッセージなんて聞かなかった。

 どうせ「あるがまま」のメッセージしか耳に入らないなら、
 むしろそっちをトコトン浴びせたほうが、一日でも早く
 諦めの境地に辿り着くのに役に立つんじゃないか。

 今の自分としては「頑張る」スタンスが大事だと思うが、
 その重要性に気づいてもらうには「あるがまま」のメッセージこそ必要だ。

といった感じです。

もちろん、逆もまた然り。

「あるがまま」のスタンスの人であれば、
「頑張る」派が「あるがまま」の重要性に気づく転機を迎えるためには
むしろ積極的に「頑張れ」のメッセージを聞いてもらったほうが良い、
ということです。

持ちつ持たれつ、でしょうか。


だからといって、
 本当は「頑張る」のが大事だと思っているんだけど、
 だからこそ表面上は「あるがまま」のメッセージを発信しよう
みたいな人は滅多にいないと思いますが。

少なくとも、こういった視点に立つと
反対側の意見に対しても寛容でいられるような気がします。



最後に、
「ほぼ必ず、どちらか一方が強調される」
と書いた理由です。

「両方のバランスが大事」という意見は出にくいと考えられます。

それは、どちらのスタンスで進んでいっても
到達点は同じものになるから。

2つが矛盾しない観点です。
バランスの問題ではありません。

「あるがまま」を受け入れ、今の自分で満たされていて
それでも自然とやることが沸いてくるから頑張るし、成長も続いていく。

「あるがまま」を受け入れるのが大事だと感じているということは、
「もっと受け入れたら、もっと好きになれる」と捉えている部分があって、
まだ全ての「あるがまま」を受け入れてはいない、という意味でしょう。

「あるがまま」の大切さを訴えているとしたら、
その大切さを受け入れていない人たちがいる現状の「まま」では不満なんです。
その「あるがまま」だと嫌なんです。

本当に「あるがまま」を受け入れたら、
もうそれ以上「あるがまま」を大切にしようとはしないはずです。

頑張って「自己成長」を目指すスタンスだとしても同様です。
「成長が大事だ」と言っているということは、
「まだ自分には成長の余地がある」という意味でしょう。

つまり「成長が大事だ」と言っている限り、成長に終わりはないんです。

本当に「成長」が終わったときには、もう成長しようとしない。
「成長が大事だ」とそれ以上感じることはないはずです。

大切だとは、もう感じなくなるわけです。

そして、
「もう成長しようとしない」のですから
「あるがままを受け入れた」ともいえます。

どっちももう、わざわざ大切にすることではなくなる。

だから、どちらかを強調したりもしないのでしょう。

言葉のメッセージに頼らないとも言えそうです。


ま、別に「あるがまま」を全て受け入れるところに辿り着こうが、
「自己成長」が終わりを迎えようが、
一人の生き様には、どうでもいんですけどね。

大切にしたければすればいい。
好きにしたら良いんじゃないでしょうか。

どうせそれしかないんですから。

cozyharada at 23:21│Comments(1)TrackBack(0)clip!心理学 | NLP

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この記事へのコメント

1. Posted by 渡辺 由紀子   2014年04月23日 18:51
「本来の自分に帰っていく」というのが、好きというか実感のあるスタンス。望む自分はすでに自分の中にある、それを探っていく・・・
どこまでが、どのセミナーで学んだ事なのか、今となってはわかりませんが、腑に落ちている感じです。

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原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
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