2014年04月29日

葛藤の統合

葛藤( conflict, コンフリクト)は、様々な文脈で使われる単語のようです。

NLPで葛藤といえば、心理的な葛藤のことを意味しますから、
「内面的に2つの相反する気持ちがあって、どうにもならない感じ」
が葛藤と呼ばれます。

一方、世の中には、コミュニティや民族、国家同士の対立とか、
組織間の揉め事といったものを葛藤と呼ぶこともあるようです。

いってみれば、心理的葛藤と、社会的・人間関係的葛藤とがある、と。

個人の内側で起きる(イントラパーソナル)な葛藤も、
人と人との関係性で起きる(インターパーソナル)な葛藤も、
システムとして捉えれば、どちらも似たようなものです。

対立の構造も、対立への対処法も、非常によく似ている。
というよりも、社会の縮図が個人の内面になっているというか、
個人の内面で起きることと社会で起きることは相似しているというか、
それぐらいシステムとしては同じ構造で理解できます。


社会的な葛藤に対するアプローチは「コンフリクト・マネジメント」と呼ばれ
1つの研究対称として取り扱われているようです。

その社会的葛藤へのアプローチの1つが「統合」。

他にも、一方が他方を「支配」するパターンもあれば
お互いに「妥協点」を見出していくスタイルもあるとされます。

「統合」の場合は、対立している2つの集団や個人から
ニーズと利益を把握して、抽象度の高い合意点を見出す方針。

「なーんだ、よくよく話し合ってみたら、
 お互い最終的に目指すところは同じなんですね。
 表面的に重視する部分が違っているだけで。」
といった”まとまり”といえるでしょう。


この「統合」のアプローチは、心理的な葛藤に対しても使われます。

NLPでは「葛藤の統合」とか「インテグレーション」とか
「ビジュアル・スカッシュ」などと呼ばれる技法があって、
これはまさに「統合」の方針に見えます。

つまり、一人の心の中で対立している2つの気持ち(パート、プログラム)から
双方の肯定的意図(≒ニーズや利益)を聞き出して、
2つが一致するレベルまで抽象化することで折り合いをつけるわけです。

例えば、
「つい色々と食べ過ぎてしまう」のと
「食生活をコントロールしたい」のとが
葛藤している、なんていうことがあります。

このケースでは「食べ”過ぎしてしまう”」と、否定的な印象が表現されますから
自己認識としては「食生活をコントロールする」側に重みが置かれていて、
「色々と食べ過ぎる」ほうを問題視していると考えられます。

お腹がすいてくると、つい何かを食べたくなる。
そこで「いやいや、コントロールしなきゃ」と思うんだけれど
「まぁ、お腹がすいていると集中できないから、チョットぐらいなら良いか!」
なんて、つい食べてしまって、後から嫌な気持ちになる…といった具合。

実際には、普段の食事の中でも「好きなだけ食べたい」気持ちが沸いてきて
存分に食べる喜びを味わいたい時間に、
「イヤ、ダメだ。コントロールしなきゃ」という別の気持ちが沸いてきて、
食べる喜びを素直に感じられない不満も感じているはずです。

その意味では、「食べたい」ほうも「コントロールしたい」ほうも
どちらもお互いに邪魔し合っているといえます。

だから対立なんです。
葛藤なんです。

ただ、多くの場合、人は自分の普段の意識に近いほうの気持ちを重視して
「〜したいのに、つい…してしまう」といった印象を持つようです。
「〜したい」側に肩入れしている感じでしょうか。

しょっちゅう負けてしまう側に肩入れしているから、残念な気持ちを味わい、
それを問題だと感じるようになるわけです。

こうした葛藤に対しては、その双方の気持ちの奥を探る手法が使われます。
「色々と食べたい」ほうの気持ちの奥には、どんな意図があるか?
「食生活をコントロールしたい」気持ちの奥には、どんな意図があるか?と。

探った気持ちとして、仮に
 「色々と食べたい」の奥には
 「満たされない想いを埋めたい」という意図があって、
一方、
 「食生活をコントロールしたい」の奥には
 「より良い自分になって欠けている自信を満たしたい」という意図がある、
としましょう。

もう少し一般化した表現にすると、どちらも
「日頃の満たされない自分、欠けている自分を何かで満たしたい」
という意味では共通している。

直近で気軽に満たすために食べることを選ぶか、
長い目でみて自信の形で満たすためにコントロールを選ぶか、
そういった違いであって、どちらも「欠けた感じを満たす」点では同じだ、と。

そういう風に共通点に辿り着くと、
「じゃあ、状況を見てバランス良く選べば良いじゃないか」
といった結論に落ち着きます。

共通のニーズや利益が見出されることで折り合いがつくわけです。

社会的、人間関係的な葛藤に対するコンフリクト・マネジメントで捉える
「統合」のアプローチと同じ取り組み方だといえます。

もしかすると、NLPが個人の内面の葛藤に対しても
社会的な葛藤へのアプローチと同じ方法を取り入れたから、
『葛藤の統合』という名称の手法になったのかもしれませんが。


ということで、NLPで扱う『葛藤の統合』における「統合」の意味は
社会や組織のコンフリクト・マネジメントにおける「統合」と同様だろう
…と解釈できるという話です。

ところが、心理的な葛藤に対して
NLPの『葛藤の統合』の手法(ビジュアル・スカッシュ)を使った場合、
結果的には別の意味合いの”統合”も起きるんです。

こちらの”統合”の意味は、もっと日常的なニュアンスに近い。
部分が全体と一体化していく感じです。

今まで”自分”にとって思い通りになっていなかった部分があった。
葛藤を解消するプロセスとして、その奥にある肯定的意図を把握した。
すると、「あぁ、そういう意図があったのかぁ…」としみじみ納得できます。

その部分が嫌じゃなくなるんです。
受け入れられるようになる。

その部分も「自分の一部として受け入れられる」ようになる。
これが別の意味での「統合」の瞬間だといえます。

それまでは”自分”にとって望ましくないものとして拒絶していたわけです。
そんなのは”自分”らしくない、と捉えていた。

それが肯定的意図を知ることで、
「まぁ、そういうのも自分か」
と納得できるようになるんです。

それまでは”自分”に含めていなかった部分が
”自分”という全体に「統合」されたということです。

2つの対立する部分を「統合」するための手法ですが、実際には
それまで「自分らしくない」と拒絶していた部分を”自分”に統合している
とも考えられるわけです。

そして効果としても、自分という全体への統合のほうが大きいように見えます。

内面的な葛藤を統合するときには、
”自分”という存在の見直しも起きているのでしょう。

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この記事へのコメント

1. Posted by たかやまえり   2015年12月03日 23:58
5 すごいわかりやすい!アドラーを学んでカウンセリングしてましたが自分が分析志向のタイプなんで葛藤の原因さぐりと解消ばかりに目が行ってました。目的論を知識ではわかっていたのに、つまり統合へは全く意識が向けられていなかったんです。理系ではないですけど(笑)分析と調査が得意だからこそ長年、それが仇になってました。
2. Posted by 原田   2015年12月05日 08:11
たかやまさん

何かお役に立てたのであれば嬉しいです。分析と統合など両面が大事なのかもしれませんね。ありがとうございます。

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プロフィール
原田 幸治
理系人材育成コンサルタント。
技術力には定評のあるバイオ系化学・製薬企業にて研究職として基礎研究から開発研究までを担当。理系特有とも言える人間関係の問題に直面して心理とコミュニケーションを学び始め、それを伝えていくことを決意して独立。
コールドリーディング®、NLP(TM)、心理療法、脳科学、サブリミナルテクニック、催眠、コーチング、コミュニケーションへ円環的にアプローチ。
根底にある信念は「追求」。

・米国NLP(TM)協会認定
 NLP(TM)トレーナー。

・コールドリーディングマスター
 講座石井道場 黒帯。
(コールドリーディング®は
有限会社オーピーアソシエイツ
http://www.sublimination.net/
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